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式場が決まって式を挙げるまでの間、小さな式だと思っていても、やはり拘りだすと大変だった。

まず衣装。
ドレスは仕事で何度も見たことあるのに、いざ自分となるとどれが良いのか全くわからない。ネットで調べたり、雑誌を見たり、わけがわからなくなって、結局香緒ちゃんに相談した。で、そこから何故か瑤子さんも交えてうちで女子?会。3人寄れば、で一番理想的なドレスを選べたと思う。ちなみに睦月さんにはまだ見せていない。

メイクは2人の後押しもあり自分ですることにして、ヘアだけは自分でできないから担当の人と打ち合わせを重ねた。

式場との打ち合わせは、もちろん睦月さんと一緒に行ったのだけど、そこで一つ問題が浮上したのだ。でも、それを解決してくれたのは、やっぱり頼れる瑤子さんだった。


「瑤子さん、ご面倒をおかけします」

長門さんの家の玄関先で私はそう言って頭を下げる。

「全然!気にしないで。しばらくお預かりするわね?」

そう言って瑤子さんが笑顔で答えていると、睦月さんが長門さんにかんちゃんのリードを渡していた。

「かんちゃん、良い子にしててね。またあとで会えるから」

睦月さんがそう言うと、かんちゃんは振り返り「ワンッ!」と元気よく返事をした。

実は今日の式、外はペット連れOKだったのだけど、建物の中は基本ゲージに入れておかないといけなかったのだ。私達と一緒に会場へ行くと、狭いゲージに長時間閉じ込めることになってしまうから、それが気がかりだった。
でもそれを、今ではすっかりご近所さんとして行き来する仲になり、たまに散歩にも着いて来てくれていた瑤子さんが「良かったら私、会場まで連れて行くわよ?」と言ってくれたのだ。

「大丈夫だろ。コイツ、結構賢いからな」

長門さんは見上げていたかんちゃんに、「sit」と綺麗な発音で命令すると、かんちゃんはそれに従って座った。

「だからさ、うちの子アッサリ手懐けないでよ」

肩を落とす睦月さんに、長門さんは「ふ。悪いな」と得意げな顔をして見せていた。
そんな2人に少し呆れたような顔をしつつ、「咲月ちゃん、もうそろそろ時間でしょ?ゲージ預かるわね?」と私が持っていたゲージに手をかける。

「はい。じゃあ、お2人とも、よろしくお願いします」
「楽しみにしてるわ。またあとでね」
「お前の鼻の下伸びきった顔、写真に山と収めてやるからな」
「そこは一番格好良く撮ってくれるかな?」

そんなことを言い合って、私達はマンションをあとにした。
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