145 / 183
37
1
しおりを挟む
長門さんと瑤子さんの結婚式は梅雨の合間の本当に良いお天気の日だったけど、そのあとしばらく雨続き。ようやく梅雨も明け本格的に夏がやってくると、私達は少しずつ自分たちの結婚式の準備で忙しくなっていた。
夏真っ盛りのお盆には私の家族が上京して、睦月さんの弟の朔さん家族とも顔合わせをした。
暁さんはすっかり向こうに腰を据えてしまい、こっちにはなかなか帰ってこないらしい。久しぶりに会ったお祖父ちゃんに、朔さんのところの2人の子ども達がべったり引っ付いていたのは印象的だった。
そんな夏もすぎ、段々秋の気配は深まる。
──そして。
「いよいよ明日だねぇ」
10月の3連休の真ん中。
さっきまで、昨日からこっちに来ている私の家族と夕食を取り帰って来たところだ。
婚姻届の証人欄も記入してもらい、持って来てもらった戸籍謄本も受け取った。
ソファに座りながらそれを眺めて、睦月さんはしみじみとそう口にしていた。
「本当に……。なんか、長かったような短かったような。去年の今頃はまだ睦月さんと知り合ってなかったなんて信じられない」
ミルクティーの入ったティーカップを持ち上げてそう言うと、睦月さんは穏やかに笑みを浮かべて私を見ていた。
「そうだね。独身最後の夜が俺に来るなんて、1年前は想像できなかったなぁ」
睦月さんも同じティーカップを手にそう言って笑う。
一緒に暮らし始めて半年近く経つけど、夜はこんな風にお茶を楽しみながら会話することが多い。その日あったことや仕事の話、それからどうでもいいようなちょっとした話まで、睦月さんはなんでも聞いてくれるし話してくれる。それが心地よくて、なんて聞き上手で話上手なんだろうと尊敬してしまう。
「明日には俺の奥さんになってくれるんだね。嬉しいなぁ。日付変わったと同時に届け出しに行きたいくらい」
婚姻届は、結婚式である明日午前中に出しに行く予定になっている。式は午後3時からだから、午前中はそれなりにゆっくりできるはずだ。
「……出しに行く?」
空になったカップをソーサーに戻して私は睦月さんを見上げる。
今時間は9時を回ったところ。今からお風呂に入って早めにベッドに入ろうと思っていたけど、それもいいかなと口にする。
「……もう、本当に可愛いなぁ。俺の奥さんは」
そう言いながら睦月さんは私の背中を引き寄せて、私の唇に自分のそれで軽く触れる。
「でも……やっぱり独身最後の夜を、さっちゃんとゆっくり楽しみたいかなぁ」
そう言うと、睦月さんはちょっとだけ悪い顔して笑っていた。
夏真っ盛りのお盆には私の家族が上京して、睦月さんの弟の朔さん家族とも顔合わせをした。
暁さんはすっかり向こうに腰を据えてしまい、こっちにはなかなか帰ってこないらしい。久しぶりに会ったお祖父ちゃんに、朔さんのところの2人の子ども達がべったり引っ付いていたのは印象的だった。
そんな夏もすぎ、段々秋の気配は深まる。
──そして。
「いよいよ明日だねぇ」
10月の3連休の真ん中。
さっきまで、昨日からこっちに来ている私の家族と夕食を取り帰って来たところだ。
婚姻届の証人欄も記入してもらい、持って来てもらった戸籍謄本も受け取った。
ソファに座りながらそれを眺めて、睦月さんはしみじみとそう口にしていた。
「本当に……。なんか、長かったような短かったような。去年の今頃はまだ睦月さんと知り合ってなかったなんて信じられない」
ミルクティーの入ったティーカップを持ち上げてそう言うと、睦月さんは穏やかに笑みを浮かべて私を見ていた。
「そうだね。独身最後の夜が俺に来るなんて、1年前は想像できなかったなぁ」
睦月さんも同じティーカップを手にそう言って笑う。
一緒に暮らし始めて半年近く経つけど、夜はこんな風にお茶を楽しみながら会話することが多い。その日あったことや仕事の話、それからどうでもいいようなちょっとした話まで、睦月さんはなんでも聞いてくれるし話してくれる。それが心地よくて、なんて聞き上手で話上手なんだろうと尊敬してしまう。
「明日には俺の奥さんになってくれるんだね。嬉しいなぁ。日付変わったと同時に届け出しに行きたいくらい」
婚姻届は、結婚式である明日午前中に出しに行く予定になっている。式は午後3時からだから、午前中はそれなりにゆっくりできるはずだ。
「……出しに行く?」
空になったカップをソーサーに戻して私は睦月さんを見上げる。
今時間は9時を回ったところ。今からお風呂に入って早めにベッドに入ろうと思っていたけど、それもいいかなと口にする。
「……もう、本当に可愛いなぁ。俺の奥さんは」
そう言いながら睦月さんは私の背中を引き寄せて、私の唇に自分のそれで軽く触れる。
「でも……やっぱり独身最後の夜を、さっちゃんとゆっくり楽しみたいかなぁ」
そう言うと、睦月さんはちょっとだけ悪い顔して笑っていた。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。
どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。
婚約破棄ならぬ許嫁解消。
外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。
※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。
R18はマーク付きのみ。
腹黒御曹司との交際前交渉からはじまるエトセトラ
真波トウカ
恋愛
デパートで働く27歳の麻由は、美人で仕事もできる「同期の星」。けれど本当は恋愛経験もなく、自信を持っていた企画書はボツになったりと、うまくいかない事ばかり。
ある日素敵な相手を探そうと婚活パーティーに参加し、悪酔いしてお持ち帰りされそうになってしまう。それを助けてくれたのは、31歳の美貌の男・隼人だった。
紳士な隼人にコンプレックスが爆発し、麻由は「抱いてください」と迫ってしまう。二人は甘い一夜を過ごすが、実は隼人は麻由の天敵である空閑(くが)と同一人物で――?
こじらせアラサー女子が恋も仕事も手に入れるお話です。
※表紙画像は湯弐(pixiv ID:3989101)様の作品をお借りしています。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる