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連休が明け最初の仕事。今日は香緒ちゃんと希海さんとの撮影日だ。いつものように先にメイク室で用意していると香緒ちゃんが入ってきた。
「おはよう、香緒ちゃん。引っ越しのときは本当にありがとう。これ、田舎のお土産!」
そう言って香緒ちゃんに用意していたお土産を渡す。
「ありがと。にしても、無事に挨拶済んで良かったね」
香緒ちゃんは実家に挨拶に行くことを心配してくれていたから、無事にOKが出たことは知らせていた。
「意外と難航しなくて良かったよ。最初はどうなるかと思ったんだけど、友達が助けに来てくれたの。あれがなかったら出直しだったかも」
そんなことを言いながら香緒ちゃんと鏡の前に向かう。そこに香緒ちゃんが座ると、私はケープを掛け、ブラシを手にした。
「そっか。睦月君も安心してたでしょ?」
「うん。あっという間にお父さんと仲良くなっちゃって、毎日飲み明かしてたのよ?お父さんも手のひら返しすぎだよね」
そう言って笑いながら私は香緒ちゃんの髪を梳かした。
「まぁ、睦月君のこと嫌いな人なんて見たことないけどね。絶対お父さんも気に入ってるって」
「なんか娘そっちのけだったからそうかも。それよりね」
私が香緒の髪を軽くまとめながらそう言うと、香緒ちゃんは鏡越しに私を見た。
「実は結婚式の日取り決まったの」
最後に見た式場。私はやっぱり一番そこが気に入っていたし、百合さんと会った縁もあって、その場で睦月さんに「ここがいい」と伝えた。もちろん睦月さんも大賛成で、あとはいつにしようかということになったのだ。
田舎から家族を呼ぶし、仕事の都合もあって候補は土曜だったけど、やっぱり人気で、空きはかなり先。しかたなく日祝まで範囲を広げると、ある月の連休最終日が空いていたのだ。
どうしようか悩んだけど、お母さんにその場で連絡して話を伝えたら、お父さんも真琴も「仕事くらい休み取るから」と言ってくれ、無事その日を押さえることができたのだった。
香緒ちゃんにその日を伝えると、二つ返事で「行く行く!呼んでくれるんだよね!」と顔を綻ばしてくれた。
「もちろん!香緒ちゃんには絶対来てもらいたいよ!希海さんにも、武琉君にも」
「嬉しいな。ちょっと先だけど、今から楽しみできた!」
化粧水を手にした私が前に立つと、香緒ちゃんは私を見上げて笑顔で言った。
「ありがとう。正式にまた招待状は渡すね。そうそう。その式場で百合さんに会ったの」
私は手を動かしながらそう切り出し、その時あったことを話し始めた。
「えっ!本当に?」
私にメイクされたながら話を聞いていた香緒ちゃんはそう声を上げる。
「うん。瑤子さんの誕生日過ぎたら話してもいいって言われてたから、やっと話せるんだけど」
私は筆を拭きながら答えた。
話していたのは、瑤子さんと長門さんのウエディングフォトを撮ることになったって話だ。百合さんが衣装を用意して、私がヘアメイク、そして睦月さんが撮ると伝えると、香緒ちゃんは驚いていた。なんでそんなに驚くのかはわからないんだけど。
「2人とも写真撮られるの苦手だって言ってたのに、よく決心したなぁ」
しみじみと言う香緒ちゃんに「そうなの?」と私は返す。
「司はまぁ、昔から撮られるの嫌がってたけど、瑤子さんも苦手だって言ってた。でも、一生に一度だしね」
「だよね。睦月さん、スタジオ探してるんだけど、なかなかこれっていうところが見つからないって、今ちょっと焦ってるの」
私は香緒ちゃんの後ろに回り、髪の毛を梳かしながら答える。メイクは終わったから、あとは髪をアレンジすれば終わりだ。
「焦ってるってなんで?」
鏡に不思議そうに尋ねる香緒ちゃんが写っている。私はそれを見ながら口を開いた。
「香緒ちゃん。じっとして聞いてね。実は……。瑤子さん、赤ちゃんできたからあんまりお腹が大きくならないうちに撮りたいみたい」
髪を編む手を止めてそう言うと、鏡の中の香緒ちゃんは、じっとしたままそれはそれは驚いていた。
「えっ?えっ?赤ちゃん⁈」
「うん。引っ越しのとき長門さんうちに来たでしょ?その時瑤子さん悪阻で寝込んでたんだって」
また手を動かしながら鏡を見ると、香緒ちゃんはまだポカンとした表情をしていた。
「……赤ちゃんかぁ……」
そう言って呟くと、香緒ちゃんはいつもの穏やかな優しい笑みを浮かべた。
「そっか……。楽しみだなぁ……」
「そうだね……」
私は、きっと自分のことのように喜んでいるだろう香緒ちゃんにそう返した。
ようやく全ての支度が終わり2人でスタジオに向かう。撮影スタッフさんに混じり、もちろんそこには希海さんの姿もあった。そして香緒ちゃんはその姿を見つけるとすぐさま駆け寄った。
「希海!」
そう言うと希海さんの腕を引き、スタジオの後ろに一人立っていた私の元まで連れて来た。
「なんだ、いったい」
驚いた様子もなく、そう淡々と希海さんは口にする。そして香緒ちゃんは、周りに聞こえないよう気を使っているのか、小さな声で希海さんに尋ねた。
「司のところに赤ちゃんできたの、いつから知ってたの?」
「おはよう、香緒ちゃん。引っ越しのときは本当にありがとう。これ、田舎のお土産!」
そう言って香緒ちゃんに用意していたお土産を渡す。
「ありがと。にしても、無事に挨拶済んで良かったね」
香緒ちゃんは実家に挨拶に行くことを心配してくれていたから、無事にOKが出たことは知らせていた。
「意外と難航しなくて良かったよ。最初はどうなるかと思ったんだけど、友達が助けに来てくれたの。あれがなかったら出直しだったかも」
そんなことを言いながら香緒ちゃんと鏡の前に向かう。そこに香緒ちゃんが座ると、私はケープを掛け、ブラシを手にした。
「そっか。睦月君も安心してたでしょ?」
「うん。あっという間にお父さんと仲良くなっちゃって、毎日飲み明かしてたのよ?お父さんも手のひら返しすぎだよね」
そう言って笑いながら私は香緒ちゃんの髪を梳かした。
「まぁ、睦月君のこと嫌いな人なんて見たことないけどね。絶対お父さんも気に入ってるって」
「なんか娘そっちのけだったからそうかも。それよりね」
私が香緒の髪を軽くまとめながらそう言うと、香緒ちゃんは鏡越しに私を見た。
「実は結婚式の日取り決まったの」
最後に見た式場。私はやっぱり一番そこが気に入っていたし、百合さんと会った縁もあって、その場で睦月さんに「ここがいい」と伝えた。もちろん睦月さんも大賛成で、あとはいつにしようかということになったのだ。
田舎から家族を呼ぶし、仕事の都合もあって候補は土曜だったけど、やっぱり人気で、空きはかなり先。しかたなく日祝まで範囲を広げると、ある月の連休最終日が空いていたのだ。
どうしようか悩んだけど、お母さんにその場で連絡して話を伝えたら、お父さんも真琴も「仕事くらい休み取るから」と言ってくれ、無事その日を押さえることができたのだった。
香緒ちゃんにその日を伝えると、二つ返事で「行く行く!呼んでくれるんだよね!」と顔を綻ばしてくれた。
「もちろん!香緒ちゃんには絶対来てもらいたいよ!希海さんにも、武琉君にも」
「嬉しいな。ちょっと先だけど、今から楽しみできた!」
化粧水を手にした私が前に立つと、香緒ちゃんは私を見上げて笑顔で言った。
「ありがとう。正式にまた招待状は渡すね。そうそう。その式場で百合さんに会ったの」
私は手を動かしながらそう切り出し、その時あったことを話し始めた。
「えっ!本当に?」
私にメイクされたながら話を聞いていた香緒ちゃんはそう声を上げる。
「うん。瑤子さんの誕生日過ぎたら話してもいいって言われてたから、やっと話せるんだけど」
私は筆を拭きながら答えた。
話していたのは、瑤子さんと長門さんのウエディングフォトを撮ることになったって話だ。百合さんが衣装を用意して、私がヘアメイク、そして睦月さんが撮ると伝えると、香緒ちゃんは驚いていた。なんでそんなに驚くのかはわからないんだけど。
「2人とも写真撮られるの苦手だって言ってたのに、よく決心したなぁ」
しみじみと言う香緒ちゃんに「そうなの?」と私は返す。
「司はまぁ、昔から撮られるの嫌がってたけど、瑤子さんも苦手だって言ってた。でも、一生に一度だしね」
「だよね。睦月さん、スタジオ探してるんだけど、なかなかこれっていうところが見つからないって、今ちょっと焦ってるの」
私は香緒ちゃんの後ろに回り、髪の毛を梳かしながら答える。メイクは終わったから、あとは髪をアレンジすれば終わりだ。
「焦ってるってなんで?」
鏡に不思議そうに尋ねる香緒ちゃんが写っている。私はそれを見ながら口を開いた。
「香緒ちゃん。じっとして聞いてね。実は……。瑤子さん、赤ちゃんできたからあんまりお腹が大きくならないうちに撮りたいみたい」
髪を編む手を止めてそう言うと、鏡の中の香緒ちゃんは、じっとしたままそれはそれは驚いていた。
「えっ?えっ?赤ちゃん⁈」
「うん。引っ越しのとき長門さんうちに来たでしょ?その時瑤子さん悪阻で寝込んでたんだって」
また手を動かしながら鏡を見ると、香緒ちゃんはまだポカンとした表情をしていた。
「……赤ちゃんかぁ……」
そう言って呟くと、香緒ちゃんはいつもの穏やかな優しい笑みを浮かべた。
「そっか……。楽しみだなぁ……」
「そうだね……」
私は、きっと自分のことのように喜んでいるだろう香緒ちゃんにそう返した。
ようやく全ての支度が終わり2人でスタジオに向かう。撮影スタッフさんに混じり、もちろんそこには希海さんの姿もあった。そして香緒ちゃんはその姿を見つけるとすぐさま駆け寄った。
「希海!」
そう言うと希海さんの腕を引き、スタジオの後ろに一人立っていた私の元まで連れて来た。
「なんだ、いったい」
驚いた様子もなく、そう淡々と希海さんは口にする。そして香緒ちゃんは、周りに聞こえないよう気を使っているのか、小さな声で希海さんに尋ねた。
「司のところに赤ちゃんできたの、いつから知ってたの?」
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