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知らない人が見ればとても男性には見えない香緒ちゃんは、春らしい華やかな色合いの着物が似合っていて、我ながらいい仕事をしたと自画自賛してしまう。
道具を片付けて2人でリビングへ戻ると、すでに男性陣も着物に着替えていた。
「お!香緒、スゲ~!むちゃくちゃ似合ってるじゃん!」
さっきはいなかった響君が、真っ先に香緒ちゃんにそう声を掛けた。
「ありがと。響もいい感じだね。さすが希海が選んだだけあるよね」
「サンキュー!希海、着付けもできるなんて凄いよな!」
響君は、涼しい顔をしてソファに座る希海さんにそう言って視線を送る。
そうなのだ。みんなが着ている着物は希海さんが実家から借りてきたもので、香緒ちゃんのは希海さんのお母さんのものらしい。
さすがに希海さんは女性の着物までは着付けできないからと私に声がかかったのだった。
「咲月さん、何か飲みますか?俺、淹れてきますよ?」
着物姿がサマになっている武琉君が私にそう声を掛けると、睦月さんが向こう側で立ち上がるのが見える。
「武琉君、着物じゃ動き辛いでしょ?俺淹れるよ?」
その睦月さんの言葉に、今度は香緒ちゃんが反応する。
「あ、僕久しぶりに睦月君の淹れた紅茶飲みたい!貰い物のいい茶葉あるんだよね」
「じゃあそうしようか。さっちゃんは座って待ってて」
立ちっぱなしだった私に睦月さんはそう言って香緒ちゃんとキッチンへ向かう。
「咲月さん、おせちどうしますか?持って帰ってもらおうと思って折詰にしてあるんですけど」
「そうなの?ありがとう。遠慮なくいただくね」
私がそう返すと「2人で食べて下さい」と武琉君は笑顔を見せた。
それから武琉君はキッチンへ向かい、私は希海さんと響君のいるソファに向かった。
「悪かったな。正月早々香緒が世話になって」
希海さんももちろん着物姿。元々が黒髪に涼しげな顔をした美形だけあって、オーソドックスな着物なのになんだか凄い迫力だ。
「いえ。楽しかったですよ?香緒ちゃんの着物なんて仕事じゃなかなか無いし」
「それならいいんだが、睦月さんとゆっくり正月を過ごしたかったんじゃないかと思って」
いつもの真顔でそう言われて、私は思わず勢いよく顔を上げる。
「えっ、と、香緒ちゃんから何か聞いてますか?」
もちろん希海さんにはまだ照れくさくって何も言えていない。でも、香緒ちゃんから伝わっている可能性は高い。
「……いや?何となくそう思っただけだ。賭けはどうも負けそうだな?」
そう言うと、希海さんは少しだけ口角を上げ微笑んだ。
◆◆
「凄い……」
睦月さんの家のダイニングテーブルの上で、さっそくおせちの入った箱を開けると、デパートで買ってきたの?って言うくらい本格的で見た目も美しい料理の数々が入っていた。
「ほんと、武琉君って器用だよね」
睦月さんは同じようにおせちを覗き込んでそう言った。
「ですね。ちゃんと料理を始めたのは香緒ちゃん達と暮らし始めてからみたいですよ?」
「へー。そうなんだ。お店出せそうなレベルだよね」
そんな事を言い合いながらお皿を用意して少し遅めの昼食にした。もちろんとても美味しくって、久しぶりにお正月らしさを味わいながら2人でそれをいただいた。
私達のお休みは結構長くて、2人とも仕事が始まるのは翌週の中頃からだ。
睦月さんには「一人でゆっくりしたい日もあるだろうから、無理しなくっていいからね」って言われたけど、仕事が始まれば会える日も少なくなるだろうから、私は睦月さんに無理させない程度に会いたいと答えた。
それからお休みの間、毎日睦月さんは私の家に迎えに来てくれて、少し出かけてみたり、睦月さんの家でゆっくり映画を見たりして過ごした。
「あー……とうとう明日から仕事だぁ……」
私の家の前に停めた車の中で、肩を落としながら睦月さんはそう言った。
時間は午後9時。今日も睦月さんの家でご飯を作って食べて帰って来た。
「ですね。ちょっと休みボケしそうです」
「ほんとにね。と言っても今月は容赦なく仕事入れられちゃったんだけど。ぼんやりしてたらあっという間に2月になってそう」
「それは困ります!睦月さんの誕生日が過ぎちゃう!」
私が真面目にそう言うと、睦月さんは嬉しそうに笑いながら私の頭を撫でた。
「わかってるよ。俺も楽しみにしてるから。できるだけ早く仕事終わらすよう頑張るよ」
「はい。絶対にお祝いさせて下さい」
睦月さんを見上げて私がそう答えると、睦月さんはニッコリと笑ってから私の頰に唇を落とした。
「俺は今からさっちゃんの誕生日をどう祝おうかなって、もっと楽しみにしてるけどね?」
睦月さんの誕生日を尋ねた後、話の流れで私の誕生日の話になった。
その時には「今から絶対予定入れないようにするよ」なんて笑顔で言われたのだった。
「私は……睦月さんに会えるだけ充分です……」
私の頰を優しく撫でる睦月さんに小さくそう答えると「んー。でも、俺がさっちゃんのためにしたいだけだから。今から心待ちにしてるよ?5月の……27日を」と言ってから私の唇にゆっくりと唇を重ねた。
道具を片付けて2人でリビングへ戻ると、すでに男性陣も着物に着替えていた。
「お!香緒、スゲ~!むちゃくちゃ似合ってるじゃん!」
さっきはいなかった響君が、真っ先に香緒ちゃんにそう声を掛けた。
「ありがと。響もいい感じだね。さすが希海が選んだだけあるよね」
「サンキュー!希海、着付けもできるなんて凄いよな!」
響君は、涼しい顔をしてソファに座る希海さんにそう言って視線を送る。
そうなのだ。みんなが着ている着物は希海さんが実家から借りてきたもので、香緒ちゃんのは希海さんのお母さんのものらしい。
さすがに希海さんは女性の着物までは着付けできないからと私に声がかかったのだった。
「咲月さん、何か飲みますか?俺、淹れてきますよ?」
着物姿がサマになっている武琉君が私にそう声を掛けると、睦月さんが向こう側で立ち上がるのが見える。
「武琉君、着物じゃ動き辛いでしょ?俺淹れるよ?」
その睦月さんの言葉に、今度は香緒ちゃんが反応する。
「あ、僕久しぶりに睦月君の淹れた紅茶飲みたい!貰い物のいい茶葉あるんだよね」
「じゃあそうしようか。さっちゃんは座って待ってて」
立ちっぱなしだった私に睦月さんはそう言って香緒ちゃんとキッチンへ向かう。
「咲月さん、おせちどうしますか?持って帰ってもらおうと思って折詰にしてあるんですけど」
「そうなの?ありがとう。遠慮なくいただくね」
私がそう返すと「2人で食べて下さい」と武琉君は笑顔を見せた。
それから武琉君はキッチンへ向かい、私は希海さんと響君のいるソファに向かった。
「悪かったな。正月早々香緒が世話になって」
希海さんももちろん着物姿。元々が黒髪に涼しげな顔をした美形だけあって、オーソドックスな着物なのになんだか凄い迫力だ。
「いえ。楽しかったですよ?香緒ちゃんの着物なんて仕事じゃなかなか無いし」
「それならいいんだが、睦月さんとゆっくり正月を過ごしたかったんじゃないかと思って」
いつもの真顔でそう言われて、私は思わず勢いよく顔を上げる。
「えっ、と、香緒ちゃんから何か聞いてますか?」
もちろん希海さんにはまだ照れくさくって何も言えていない。でも、香緒ちゃんから伝わっている可能性は高い。
「……いや?何となくそう思っただけだ。賭けはどうも負けそうだな?」
そう言うと、希海さんは少しだけ口角を上げ微笑んだ。
◆◆
「凄い……」
睦月さんの家のダイニングテーブルの上で、さっそくおせちの入った箱を開けると、デパートで買ってきたの?って言うくらい本格的で見た目も美しい料理の数々が入っていた。
「ほんと、武琉君って器用だよね」
睦月さんは同じようにおせちを覗き込んでそう言った。
「ですね。ちゃんと料理を始めたのは香緒ちゃん達と暮らし始めてからみたいですよ?」
「へー。そうなんだ。お店出せそうなレベルだよね」
そんな事を言い合いながらお皿を用意して少し遅めの昼食にした。もちろんとても美味しくって、久しぶりにお正月らしさを味わいながら2人でそれをいただいた。
私達のお休みは結構長くて、2人とも仕事が始まるのは翌週の中頃からだ。
睦月さんには「一人でゆっくりしたい日もあるだろうから、無理しなくっていいからね」って言われたけど、仕事が始まれば会える日も少なくなるだろうから、私は睦月さんに無理させない程度に会いたいと答えた。
それからお休みの間、毎日睦月さんは私の家に迎えに来てくれて、少し出かけてみたり、睦月さんの家でゆっくり映画を見たりして過ごした。
「あー……とうとう明日から仕事だぁ……」
私の家の前に停めた車の中で、肩を落としながら睦月さんはそう言った。
時間は午後9時。今日も睦月さんの家でご飯を作って食べて帰って来た。
「ですね。ちょっと休みボケしそうです」
「ほんとにね。と言っても今月は容赦なく仕事入れられちゃったんだけど。ぼんやりしてたらあっという間に2月になってそう」
「それは困ります!睦月さんの誕生日が過ぎちゃう!」
私が真面目にそう言うと、睦月さんは嬉しそうに笑いながら私の頭を撫でた。
「わかってるよ。俺も楽しみにしてるから。できるだけ早く仕事終わらすよう頑張るよ」
「はい。絶対にお祝いさせて下さい」
睦月さんを見上げて私がそう答えると、睦月さんはニッコリと笑ってから私の頰に唇を落とした。
「俺は今からさっちゃんの誕生日をどう祝おうかなって、もっと楽しみにしてるけどね?」
睦月さんの誕生日を尋ねた後、話の流れで私の誕生日の話になった。
その時には「今から絶対予定入れないようにするよ」なんて笑顔で言われたのだった。
「私は……睦月さんに会えるだけ充分です……」
私の頰を優しく撫でる睦月さんに小さくそう答えると「んー。でも、俺がさっちゃんのためにしたいだけだから。今から心待ちにしてるよ?5月の……27日を」と言ってから私の唇にゆっくりと唇を重ねた。
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