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思わずさっちゃんと顔を見合わせる。武琉君は、何も聞いてないって言ってたけど、香緒が聞いてないとは限らない。でも、さっちゃんが断りもなく先に話す事はないんじゃないかと俺は思った。
「さっちゃん、香緒に話した?」
「いえ。まだ何も」
「だよね」
とりあえず小さな声で確認だけすると振り返る。そこには、何かを期待したような香緒と、戸惑っている武琉君がいた。
「とりあえず……場所変える?」
人が行き交う雑踏で立ち話って言うのはさすがに気が引けて、俺は香緒に尋ねてみる。
「そうだね。お腹空いたしランチでもどう?あ、もちろん睦月君の奢りね!」
明るくそう言われて、「はいはい。もちろんそうさせていただきますよ~」と俺は軽い調子でそれに答える。
場所は香緒に任せて、俺はその後ろを歩き出す。もちろんさっちゃんと手を繋いで。目の前で、武琉君の腕にべったりと引っ付いて歩く香緒に比べたら、これくらい可愛いものだ。
連れて来られたのは、高級ホテルの高層階にあるレストラン。香緒も遠慮ないなぁと顔は引き攣るが、さっちゃんの為に色々動いてくれたのだろうから仕方ない。
「ここ、来てみたかったんだよね」
案内された白いクロスのかかるテーブルにつきながら、香緒はニコニコしてそう言った。すぐ側にある大きな窓からはビルの群れが遠くまで見えた。
「睦月さんは窓際じゃない方がいいですよね?」
前に俺が高所恐怖症だと言ったのを覚えてくれていたのか、さっちゃんは俺にそう尋ねた。
「ありがとう。さっちゃんさえよければ窓際に座ってよ」
俺がそう言うとさっちゃん頷いてから席についた。
同じようにテーブルの向かいに座る香緒は、身を乗り出す様にして両手で頬杖をついて俺達を見ている。
「じゃ、聞こうかな?」
香緒が興味津々でそう言うと、隣でさっちゃんが意を決したように顔を上げた。
「あのね、香緒ちゃん」
そこまで言うと、さっちゃんは一旦俺の顔を見上げてから、また香緒に向き直る。
「私、睦月さんと結婚するから」
さっちゃんはハッキリとそう告げる。
もちろん目の前で香緒は、支えていた手から顔を上げて、「結婚⁈」と驚いている。
そりゃそうだ。俺だって驚いた。だって俺は『結婚を前提に付き合って欲しい』って言っただけなのに。
「えっ?本当に?いつの間に?」
見たことないくらい驚いたまま、香緒はそう口にする。俺の方が言葉が出てこずあたふたしていると、さっちゃんは俺の方を向いた。
「私、きっと睦月さん以上に好きになれる人も、結婚したいって思える人も現れないと思うんです。……ダメでしたか?」
他でもない、公私共に仲良くしている香緒にここまではっきりと告げるなんて思ってなかった。言ったとしても『付き合い始めた』くらいかなって勝手に思ってた。
でもさっちゃんは、俺と『結婚する』って言ってくれた。
ダメだなんて、天地がひっくり返ろうが有り得ない。さっちゃんが俺のことを嫌になる事があっても、俺がさっちゃんを手離せるなんて到底思えないから。
「え!む、睦月さん?」
俺を見上げたまま、さっちゃんは慌てたようにそう言う。
あぁ、何か頰に熱いものが伝ってるし、目の前のさっちゃんもボヤけてよく見えないや、なんて思う。
「ごめんね……。驚かせちゃったね」
ようやく小さく笑うと、さっちゃんがバッグから取り出したハンカチで俺の頰をそっと撫でてくれた。
「嬉しくて。本当に。ずっと一緒にいてくれるんだなって思ったら、何かこう……」
鼻を啜りながらそう言うと、向こう側から香緒の声がした。
「うん。わかるよ?睦月君。幸せだと涙が出るよね」
俺の知る限り香緒は結構泣き上戸で、もしかして香緒も?と思いながらそちらを見ると、笑い上戸の俺と入れ替わったかのように、優しい顔をして微笑んだまま口を開いた。
「よかった。さっちゃんに好きだと思える人が現れて。本当はずっと心配だったんだ。僕にとってさっちゃんは大事な人だから、誰かと幸せになって欲しいって思ってた」
武琉君に見せるような柔らかい笑顔を浮かべて、香緒はさっちゃんにそう言う。
「香緒ちゃん……」
今度はさっちゃんの方が泣き出しそうな顔をして香緒を見ている。
「まさかそれが睦月君になるとは思ってもなかったけど、睦月君になら安心してさっちゃんを渡せるかな?」
俺を見てふふっと笑う香緒に、俺もまだ涙の跡が残っているだろう顔で笑顔を作る。
「そこは安心してよ。俺はさっちゃんを幸せにしたいし、一緒に幸せになりたいと思ってるからさ。香緒と武琉君に負けないくらいにね?」
俺の台詞を聞いて、目の前の2人は顔を見合わせて笑っている。
「僕達も負けないよ?ね、武琉?」
「そうだな。今も幸せだけど、もっと幸せになろう」
その武琉君の顔に、幼い頃の面影を見て懐かしくなる。2人がこうやって並んでいるのが奇跡なら、俺がさっちゃんに出会えたのも奇跡なのかも知れない。
「さっちゃん」
俺は、隣で2人を微笑ましく眺めているさっちゃんに呼びかける。
「俺達も負けないくらい幸せになろ?」
さっちゃんは頰を赤らめながら「はい。お願いします」と飛びきりの美しい笑顔で微笑んだ。
「さっちゃん、香緒に話した?」
「いえ。まだ何も」
「だよね」
とりあえず小さな声で確認だけすると振り返る。そこには、何かを期待したような香緒と、戸惑っている武琉君がいた。
「とりあえず……場所変える?」
人が行き交う雑踏で立ち話って言うのはさすがに気が引けて、俺は香緒に尋ねてみる。
「そうだね。お腹空いたしランチでもどう?あ、もちろん睦月君の奢りね!」
明るくそう言われて、「はいはい。もちろんそうさせていただきますよ~」と俺は軽い調子でそれに答える。
場所は香緒に任せて、俺はその後ろを歩き出す。もちろんさっちゃんと手を繋いで。目の前で、武琉君の腕にべったりと引っ付いて歩く香緒に比べたら、これくらい可愛いものだ。
連れて来られたのは、高級ホテルの高層階にあるレストラン。香緒も遠慮ないなぁと顔は引き攣るが、さっちゃんの為に色々動いてくれたのだろうから仕方ない。
「ここ、来てみたかったんだよね」
案内された白いクロスのかかるテーブルにつきながら、香緒はニコニコしてそう言った。すぐ側にある大きな窓からはビルの群れが遠くまで見えた。
「睦月さんは窓際じゃない方がいいですよね?」
前に俺が高所恐怖症だと言ったのを覚えてくれていたのか、さっちゃんは俺にそう尋ねた。
「ありがとう。さっちゃんさえよければ窓際に座ってよ」
俺がそう言うとさっちゃん頷いてから席についた。
同じようにテーブルの向かいに座る香緒は、身を乗り出す様にして両手で頬杖をついて俺達を見ている。
「じゃ、聞こうかな?」
香緒が興味津々でそう言うと、隣でさっちゃんが意を決したように顔を上げた。
「あのね、香緒ちゃん」
そこまで言うと、さっちゃんは一旦俺の顔を見上げてから、また香緒に向き直る。
「私、睦月さんと結婚するから」
さっちゃんはハッキリとそう告げる。
もちろん目の前で香緒は、支えていた手から顔を上げて、「結婚⁈」と驚いている。
そりゃそうだ。俺だって驚いた。だって俺は『結婚を前提に付き合って欲しい』って言っただけなのに。
「えっ?本当に?いつの間に?」
見たことないくらい驚いたまま、香緒はそう口にする。俺の方が言葉が出てこずあたふたしていると、さっちゃんは俺の方を向いた。
「私、きっと睦月さん以上に好きになれる人も、結婚したいって思える人も現れないと思うんです。……ダメでしたか?」
他でもない、公私共に仲良くしている香緒にここまではっきりと告げるなんて思ってなかった。言ったとしても『付き合い始めた』くらいかなって勝手に思ってた。
でもさっちゃんは、俺と『結婚する』って言ってくれた。
ダメだなんて、天地がひっくり返ろうが有り得ない。さっちゃんが俺のことを嫌になる事があっても、俺がさっちゃんを手離せるなんて到底思えないから。
「え!む、睦月さん?」
俺を見上げたまま、さっちゃんは慌てたようにそう言う。
あぁ、何か頰に熱いものが伝ってるし、目の前のさっちゃんもボヤけてよく見えないや、なんて思う。
「ごめんね……。驚かせちゃったね」
ようやく小さく笑うと、さっちゃんがバッグから取り出したハンカチで俺の頰をそっと撫でてくれた。
「嬉しくて。本当に。ずっと一緒にいてくれるんだなって思ったら、何かこう……」
鼻を啜りながらそう言うと、向こう側から香緒の声がした。
「うん。わかるよ?睦月君。幸せだと涙が出るよね」
俺の知る限り香緒は結構泣き上戸で、もしかして香緒も?と思いながらそちらを見ると、笑い上戸の俺と入れ替わったかのように、優しい顔をして微笑んだまま口を開いた。
「よかった。さっちゃんに好きだと思える人が現れて。本当はずっと心配だったんだ。僕にとってさっちゃんは大事な人だから、誰かと幸せになって欲しいって思ってた」
武琉君に見せるような柔らかい笑顔を浮かべて、香緒はさっちゃんにそう言う。
「香緒ちゃん……」
今度はさっちゃんの方が泣き出しそうな顔をして香緒を見ている。
「まさかそれが睦月君になるとは思ってもなかったけど、睦月君になら安心してさっちゃんを渡せるかな?」
俺を見てふふっと笑う香緒に、俺もまだ涙の跡が残っているだろう顔で笑顔を作る。
「そこは安心してよ。俺はさっちゃんを幸せにしたいし、一緒に幸せになりたいと思ってるからさ。香緒と武琉君に負けないくらいにね?」
俺の台詞を聞いて、目の前の2人は顔を見合わせて笑っている。
「僕達も負けないよ?ね、武琉?」
「そうだな。今も幸せだけど、もっと幸せになろう」
その武琉君の顔に、幼い頃の面影を見て懐かしくなる。2人がこうやって並んでいるのが奇跡なら、俺がさっちゃんに出会えたのも奇跡なのかも知れない。
「さっちゃん」
俺は、隣で2人を微笑ましく眺めているさっちゃんに呼びかける。
「俺達も負けないくらい幸せになろ?」
さっちゃんは頰を赤らめながら「はい。お願いします」と飛びきりの美しい笑顔で微笑んだ。
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