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「可愛くないのは本当だって分かってます。でも、また誰かに傷つけられるんじゃないかって思ったら……怖いんです……」
怖いって気持ちは良く分かる。人間なんだから怖い事はたくさんあって、それは年齢を重ねようと変わらない。いや、年齢を重ねるほど、大切にしたいものが増えるほど、それは増えていくのかも知れない。けれど俺は、このさっちゃんの怖いを取り除いてあげたい。俺だってさっちゃんを絶対傷つけないって言う自信はないけど、これだけは言えるから。
「さっちゃん」
そう言って、膝に乗せ握っていた彼女の手にそっと触れると、さっちゃんは驚いたようにこちらを振り向いた。
今度は泣くのを我慢していたのか、その瞳の縁が赤くなっていて、その顔を見るだけで切なくなった。
「俺は……さっちゃんの事、ずっと可愛いと思ってるよ?見た目だけじゃなくて内面も。それに尊敬してる。仕事に対する姿勢も、腕も、さっちゃんは自分が思ってる何倍も凄いんだよ?」
ゆっくりと、笑いかけながらさっちゃんにそう伝えると、その大きな瞳からみるみるうちに涙の粒が溢れ出した。
「……本当に?」
堪えきれない様子の震えた声でさっちゃんは尋ねる。
泣かせるつもりじゃなかったけど、そんな顔すら可愛くて、どうにかなりそうだ。
俺はそんなさっちゃんを背中から引き寄せて、自分の腕の中に収めると、宥めるように髪を撫でた。
「本当だよ?初めて会った時からずっとそう思ってた。そんなさっちゃんだから、俺はあっという間に好きになったんだよ?」
そう言いながら、さっちゃんのサラサラとした髪を撫で続けると、さっちゃんは俺の胸に顔を押しつけて、ぎゅっと服を掴んだ。
「さっき……勢い余ってあんな事言っちゃったけど、初めてだからね?誰かにそんな事言うの。さっちゃんだけだよ?ずっと一緒にいる未来を思い描いたのは」
伝える事なんて出来ないと思っていた自分の気持ち。こんなにも年が離れてるし、きっと伝える事なんて出来ないまま、さっちゃんが他の誰かのものになるのを見るしかないんだって諦めてた。でも、諦めなくていいんだって思ったら、今度は離したくなくなった。
ずっと永遠に、さっちゃんといたいって、そう思ったから。
「……睦月さん」
ゆっくりと顔を上げて、さっちゃんは俺を見上げる。
「私も……睦月さんが初めてです。もっと触れて欲しいって、触れたいって思う人は」
「……さっちゃん。あのさ……。俺、心臓止まりそうなんだけど」
そう言って笑いながら、俺はさっちゃんの頰に触れる。
「私も……です」
そう言って顔を緩めたさっちゃんに、俺はそっと顔を近づけた。
そこに唇で触れて、ふっと離れてからさっちゃんの顔を見ると、そこには恥ずかしそうだけど驚いた顔。
「えっ?あの……」
「ん?なぁに?」
笑いながら、今度はまだ涙の乾いていない頰に唇を寄せた。
さっきは額で、今度は頰。
さっちゃんは擽ったそうに少し首をすくめながらも、俺の行動を受け止めてくれていた。
けれど、やっぱり驚いたように俺を見上げいた。
「睦月さんて……意外と……意地悪なんですね」
頰を染めたまま、さっちゃんはそんな事を言う。
「別に意地悪してるつもりはないんだけど……何で?」
何を言いたいのか分かっていながら、俺はそれこそ意地悪く返す。
そんな俺から視線を外したかと思うと、さっちゃんは余計に紅くなりながら小さく呟いた。
「だって……キス……されると思ったのにされなかったから……」
ちょっと拗ねたようにも見えるさっちゃんに、本当は今すぐ押し倒して無茶苦茶にキスしたい気持ちを抑えてる、何て言えない。
だってきっと、さっちゃんにとっては初めてだろうから。
「して……いいの?」
さっちゃんを抱き寄せてから、その小さな耳に唇で触れて囁く。
一瞬ビクッと体を揺らすけど、それでも拒否している訳じゃないのは、俺の着ている物を掴む仕草で分かる。
「して……くれないんですか?」
消え入りそうなさっちゃんの声。
けれど、理性を吹き飛ばすのには充分だ。俺の方がまるでファーストキスみたいに緊張しながら体を離してさっちゃんの顔を覗き込んだ。
黒目がちの大きな二重の瞳。その瞳が俺を見てユラユラ揺れていて、それに吸い寄せられるようにゆっくりと近づく。そして、その瞼が伏せられた頃、俺は温かな唇に触れていた。
どうしたらいいんだろうってくらいに緊張したまま、少しずつその唇を啄む。柔らかな感触を味わっていると、さっちゃんは指に力を入れた。
ごめん。止まんないや
心の中で謝りながら、段々と唇を深くしていく。
時折さっちゃんから「んっ……」とか「ふっ……」と息が漏れるたび、いい年して、我を忘れて煽られる。
頭の中では、これが初めてだろうって思ってるのに、ずっと欲しかったさっちゃんの唇の甘さを、貪るように求めてしまう。
息苦しそうに肩で息をするから、唇を離すとさっちゃんは大きく息を吸う。でもまだ離してあげられなくて、俺はまたその唇を塞いでは舌でなぞった。
「んっ……」
また痺れるような吐息が漏れて、それに誘われるように唇を割るとそこに入る。
よりギュッと手を握りしめるさっちゃんの背中を一層抱き寄せて、俺はその舌を愛撫し始めた。
怖いって気持ちは良く分かる。人間なんだから怖い事はたくさんあって、それは年齢を重ねようと変わらない。いや、年齢を重ねるほど、大切にしたいものが増えるほど、それは増えていくのかも知れない。けれど俺は、このさっちゃんの怖いを取り除いてあげたい。俺だってさっちゃんを絶対傷つけないって言う自信はないけど、これだけは言えるから。
「さっちゃん」
そう言って、膝に乗せ握っていた彼女の手にそっと触れると、さっちゃんは驚いたようにこちらを振り向いた。
今度は泣くのを我慢していたのか、その瞳の縁が赤くなっていて、その顔を見るだけで切なくなった。
「俺は……さっちゃんの事、ずっと可愛いと思ってるよ?見た目だけじゃなくて内面も。それに尊敬してる。仕事に対する姿勢も、腕も、さっちゃんは自分が思ってる何倍も凄いんだよ?」
ゆっくりと、笑いかけながらさっちゃんにそう伝えると、その大きな瞳からみるみるうちに涙の粒が溢れ出した。
「……本当に?」
堪えきれない様子の震えた声でさっちゃんは尋ねる。
泣かせるつもりじゃなかったけど、そんな顔すら可愛くて、どうにかなりそうだ。
俺はそんなさっちゃんを背中から引き寄せて、自分の腕の中に収めると、宥めるように髪を撫でた。
「本当だよ?初めて会った時からずっとそう思ってた。そんなさっちゃんだから、俺はあっという間に好きになったんだよ?」
そう言いながら、さっちゃんのサラサラとした髪を撫で続けると、さっちゃんは俺の胸に顔を押しつけて、ぎゅっと服を掴んだ。
「さっき……勢い余ってあんな事言っちゃったけど、初めてだからね?誰かにそんな事言うの。さっちゃんだけだよ?ずっと一緒にいる未来を思い描いたのは」
伝える事なんて出来ないと思っていた自分の気持ち。こんなにも年が離れてるし、きっと伝える事なんて出来ないまま、さっちゃんが他の誰かのものになるのを見るしかないんだって諦めてた。でも、諦めなくていいんだって思ったら、今度は離したくなくなった。
ずっと永遠に、さっちゃんといたいって、そう思ったから。
「……睦月さん」
ゆっくりと顔を上げて、さっちゃんは俺を見上げる。
「私も……睦月さんが初めてです。もっと触れて欲しいって、触れたいって思う人は」
「……さっちゃん。あのさ……。俺、心臓止まりそうなんだけど」
そう言って笑いながら、俺はさっちゃんの頰に触れる。
「私も……です」
そう言って顔を緩めたさっちゃんに、俺はそっと顔を近づけた。
そこに唇で触れて、ふっと離れてからさっちゃんの顔を見ると、そこには恥ずかしそうだけど驚いた顔。
「えっ?あの……」
「ん?なぁに?」
笑いながら、今度はまだ涙の乾いていない頰に唇を寄せた。
さっきは額で、今度は頰。
さっちゃんは擽ったそうに少し首をすくめながらも、俺の行動を受け止めてくれていた。
けれど、やっぱり驚いたように俺を見上げいた。
「睦月さんて……意外と……意地悪なんですね」
頰を染めたまま、さっちゃんはそんな事を言う。
「別に意地悪してるつもりはないんだけど……何で?」
何を言いたいのか分かっていながら、俺はそれこそ意地悪く返す。
そんな俺から視線を外したかと思うと、さっちゃんは余計に紅くなりながら小さく呟いた。
「だって……キス……されると思ったのにされなかったから……」
ちょっと拗ねたようにも見えるさっちゃんに、本当は今すぐ押し倒して無茶苦茶にキスしたい気持ちを抑えてる、何て言えない。
だってきっと、さっちゃんにとっては初めてだろうから。
「して……いいの?」
さっちゃんを抱き寄せてから、その小さな耳に唇で触れて囁く。
一瞬ビクッと体を揺らすけど、それでも拒否している訳じゃないのは、俺の着ている物を掴む仕草で分かる。
「して……くれないんですか?」
消え入りそうなさっちゃんの声。
けれど、理性を吹き飛ばすのには充分だ。俺の方がまるでファーストキスみたいに緊張しながら体を離してさっちゃんの顔を覗き込んだ。
黒目がちの大きな二重の瞳。その瞳が俺を見てユラユラ揺れていて、それに吸い寄せられるようにゆっくりと近づく。そして、その瞼が伏せられた頃、俺は温かな唇に触れていた。
どうしたらいいんだろうってくらいに緊張したまま、少しずつその唇を啄む。柔らかな感触を味わっていると、さっちゃんは指に力を入れた。
ごめん。止まんないや
心の中で謝りながら、段々と唇を深くしていく。
時折さっちゃんから「んっ……」とか「ふっ……」と息が漏れるたび、いい年して、我を忘れて煽られる。
頭の中では、これが初めてだろうって思ってるのに、ずっと欲しかったさっちゃんの唇の甘さを、貪るように求めてしまう。
息苦しそうに肩で息をするから、唇を離すとさっちゃんは大きく息を吸う。でもまだ離してあげられなくて、俺はまたその唇を塞いでは舌でなぞった。
「んっ……」
また痺れるような吐息が漏れて、それに誘われるように唇を割るとそこに入る。
よりギュッと手を握りしめるさっちゃんの背中を一層抱き寄せて、俺はその舌を愛撫し始めた。
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