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もしかしてこれ、もっと前に聞いてたらその時教えてくれてたかも、と思いながら、まぁ仕方ないかと思い直す。
一緒に仕事してた時ならともかく、今は独立してるし、あまり司の仕事を詮索するような真似はよくないよな、と思うから。
司は家に帰り、しばらくするとすぐに電話が架かってきた。
「はーい?何?忘れ物でもあった?」
『瑤子が飯、今から用意するっつってるからどっかに食いに行かねーかと思って』
願ってもない申し出に乗り、俺は前から気になっていた駅前の飲み屋に誘う。冷え込んできたし、勝手におでん食べたいなぁなんて思って。
俺は一人で気兼ねなく入る店でも、おそらく司にはハードルが高い感じの古びた店。
司はその見た目からか、とにかく人の目を引いてしまう。ニューヨークにいた頃はそこまででもなかったが、こっちでは結構不躾な視線を寄越される事は多い。だからか、悪目立ちしてしまいそうな店にはあまり入りたがらないが、瑤子ちゃんもいるしいいか、とその店に向かった。
ホカホカのおでんをつまみに、3人で取り留めもない話をする。
明日仕事が入ってない俺は、ついつい熱燗に手を伸ばし、一人でそれを呑んでいた。
まあ、明日に持ち越すような量を飲むわけじゃないしいっか、なんて思いながら。でも明日はさっちゃんの為にシチュー作って、送り迎えして、とぼんやり考える。
ちびちびと酒を口に含んでいると、目の前では俺の事なんか目に入っていない美男美女カップルがイチャイチャし始めた。
ほんと、司のこんな姿見る日が来るなんて、夢にも思わなかったよ……
今まで司が関係持った相手と一緒にいるところは見てきたけど、いつも相手の気持ちだけ一方的で、司が目の前のその人を見てる事なんてなかった。
それが今じゃどう?
目に入れても痛くないって、こう言うのを言うんだってくらいにずっと彼女を見つめている。
正直羨ましくて、俺は2人に冷たーく視線を寄越しながら茶々を入れると、何故か話題が俺の事になった。
さっき家にあったベア達の事を話したものだから、そこを司に突っ込まれる。
「だいたいお前、彼女いねーっつって、この前女とねずみのいる海に行ったんじゃねーのかよ」
「彼女じゃないって。海の方には行った事ないから案内してって誘っただけだし。それに彼女、俺の事なんてきっとお父さんくらいにしか思ってなさそうだし」
俺は視線を落としてそう答える。
自分で言ってて虚しいけど、さっちゃんから見たら、きっとそんな感じなんだろうなぁと思った。
2人とも顔見知りというか、明日一緒に仕事する相手なんだけど……。でも、まだ言えないなぁ
そんな事を思いながら、すっかり温燗になってしまったお酒を口に運んだ。
瑤子ちゃんからは「お父さんって……相手はまさか未成年とか⁈」なんて突っ込まれ、俺は吹き出しそうになりながら、「瑤子ちゃん!さすがにそれはないよ。俺も犯罪者にはなりたくないしさ」と返す。
俺の歳でお父さんなら、もしかして相手は高校生くらいに思ったのだろうか?確かにさっちゃん、間違われそうだけど。
「それに……」
そう言って、この前のファミレスでのさっちゃんを思い出す。
『睦月さん、甘いもの結構食べるんですね。うちの父も洋菓子に目が無くて。この前も買って帰ったお土産を弟と取り合ってたんです』
なんて楽しそうに話してくれたさっちゃんの笑顔。
「たぶん、お父さんみたいだと思ってるから相手してくれるんだと思うし」
俺は、呟くようにそう言って御猪口に残る酒を飲み干した。すると、司の笑う声が聞こえて来た。
「お前、結構その子の事気になってんだろ。久しぶりに見たぞ?その顔」
その顔って何だよ?と顔を上げて司を見ると、「なんだ、お前自覚ないのかよ」と、司はより楽しげに、ニヤニヤしながら俺を見ていた。
確かに、さっちゃんの事ばっかり考えてたのは分かってるけど、そこまで顔に出してたつもりはなかった。
「え?俺、そんな顔してた?」
「してたよ」
司にそんな風に言われるって事は、相当顔に出してたって事だ。
そうだよなぁ。
俺は誰かの事、こんなにずっと考えた事何て今までなかったかも。
たぶん司の言うそんな顔は、独立しろって言われてどうするか悩んでた時の事なんだと思う。それくらいしか心当たりないし。
俺はさっちゃんの事を、その時と同じくらい考えてるって事か、ってようやく自覚した。
これ以上俺の話になるのは堪らないと無理矢理話題を変えると、今度は雲行きの怪しくなってきた司の方がそそくさと店をあとにして行き、俺はそれに続く。
司が瑤子ちゃんと出会って結構すぐに、全く興味など無いテーマパークに、瑤子ちゃんが行きたいって言ったら行ってた、何て瑤子ちゃんは言われて泣き出した。
その彼女を優しく抱きしめながら、愛おしそうに司は見ていた。
そうだよね。人が恋に落ちるのに時間なんて関係ないよね。
2人と別れ、一人帰路に着きながらそんな事を思う。
俺だってそうだ。
はぁ、と息を吐き出すと、息が白く立ち上る。
俺だって……
最初に会った時から、さっちゃんの事を好きになってたんだな
なんて、今更自覚した。
一緒に仕事してた時ならともかく、今は独立してるし、あまり司の仕事を詮索するような真似はよくないよな、と思うから。
司は家に帰り、しばらくするとすぐに電話が架かってきた。
「はーい?何?忘れ物でもあった?」
『瑤子が飯、今から用意するっつってるからどっかに食いに行かねーかと思って』
願ってもない申し出に乗り、俺は前から気になっていた駅前の飲み屋に誘う。冷え込んできたし、勝手におでん食べたいなぁなんて思って。
俺は一人で気兼ねなく入る店でも、おそらく司にはハードルが高い感じの古びた店。
司はその見た目からか、とにかく人の目を引いてしまう。ニューヨークにいた頃はそこまででもなかったが、こっちでは結構不躾な視線を寄越される事は多い。だからか、悪目立ちしてしまいそうな店にはあまり入りたがらないが、瑤子ちゃんもいるしいいか、とその店に向かった。
ホカホカのおでんをつまみに、3人で取り留めもない話をする。
明日仕事が入ってない俺は、ついつい熱燗に手を伸ばし、一人でそれを呑んでいた。
まあ、明日に持ち越すような量を飲むわけじゃないしいっか、なんて思いながら。でも明日はさっちゃんの為にシチュー作って、送り迎えして、とぼんやり考える。
ちびちびと酒を口に含んでいると、目の前では俺の事なんか目に入っていない美男美女カップルがイチャイチャし始めた。
ほんと、司のこんな姿見る日が来るなんて、夢にも思わなかったよ……
今まで司が関係持った相手と一緒にいるところは見てきたけど、いつも相手の気持ちだけ一方的で、司が目の前のその人を見てる事なんてなかった。
それが今じゃどう?
目に入れても痛くないって、こう言うのを言うんだってくらいにずっと彼女を見つめている。
正直羨ましくて、俺は2人に冷たーく視線を寄越しながら茶々を入れると、何故か話題が俺の事になった。
さっき家にあったベア達の事を話したものだから、そこを司に突っ込まれる。
「だいたいお前、彼女いねーっつって、この前女とねずみのいる海に行ったんじゃねーのかよ」
「彼女じゃないって。海の方には行った事ないから案内してって誘っただけだし。それに彼女、俺の事なんてきっとお父さんくらいにしか思ってなさそうだし」
俺は視線を落としてそう答える。
自分で言ってて虚しいけど、さっちゃんから見たら、きっとそんな感じなんだろうなぁと思った。
2人とも顔見知りというか、明日一緒に仕事する相手なんだけど……。でも、まだ言えないなぁ
そんな事を思いながら、すっかり温燗になってしまったお酒を口に運んだ。
瑤子ちゃんからは「お父さんって……相手はまさか未成年とか⁈」なんて突っ込まれ、俺は吹き出しそうになりながら、「瑤子ちゃん!さすがにそれはないよ。俺も犯罪者にはなりたくないしさ」と返す。
俺の歳でお父さんなら、もしかして相手は高校生くらいに思ったのだろうか?確かにさっちゃん、間違われそうだけど。
「それに……」
そう言って、この前のファミレスでのさっちゃんを思い出す。
『睦月さん、甘いもの結構食べるんですね。うちの父も洋菓子に目が無くて。この前も買って帰ったお土産を弟と取り合ってたんです』
なんて楽しそうに話してくれたさっちゃんの笑顔。
「たぶん、お父さんみたいだと思ってるから相手してくれるんだと思うし」
俺は、呟くようにそう言って御猪口に残る酒を飲み干した。すると、司の笑う声が聞こえて来た。
「お前、結構その子の事気になってんだろ。久しぶりに見たぞ?その顔」
その顔って何だよ?と顔を上げて司を見ると、「なんだ、お前自覚ないのかよ」と、司はより楽しげに、ニヤニヤしながら俺を見ていた。
確かに、さっちゃんの事ばっかり考えてたのは分かってるけど、そこまで顔に出してたつもりはなかった。
「え?俺、そんな顔してた?」
「してたよ」
司にそんな風に言われるって事は、相当顔に出してたって事だ。
そうだよなぁ。
俺は誰かの事、こんなにずっと考えた事何て今までなかったかも。
たぶん司の言うそんな顔は、独立しろって言われてどうするか悩んでた時の事なんだと思う。それくらいしか心当たりないし。
俺はさっちゃんの事を、その時と同じくらい考えてるって事か、ってようやく自覚した。
これ以上俺の話になるのは堪らないと無理矢理話題を変えると、今度は雲行きの怪しくなってきた司の方がそそくさと店をあとにして行き、俺はそれに続く。
司が瑤子ちゃんと出会って結構すぐに、全く興味など無いテーマパークに、瑤子ちゃんが行きたいって言ったら行ってた、何て瑤子ちゃんは言われて泣き出した。
その彼女を優しく抱きしめながら、愛おしそうに司は見ていた。
そうだよね。人が恋に落ちるのに時間なんて関係ないよね。
2人と別れ、一人帰路に着きながらそんな事を思う。
俺だってそうだ。
はぁ、と息を吐き出すと、息が白く立ち上る。
俺だって……
最初に会った時から、さっちゃんの事を好きになってたんだな
なんて、今更自覚した。
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