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4.五月闇に、忍び寄る
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急ごしらえの短い打ち合わせを終わらせて、細かいことは改めて、明日詰めることになった。
エレベーターホールで二人を見送ったあと、どっと疲れが押し寄せてくる。気心の知れた相手とはいえ、重要な取引先、ハワードの人間だ。それになんとなく、依澄さんとのことを知られたくない。
リアムは、ハワードのエネルギー開発事業を主とする企業に所属しているらしい。依澄さんがいた会社とはまた別で、それを考えると二人に接点などないように思える。けれどおそらく親戚にあたるリアムと、必ずしも友好関係にあるとは限らない。
溜め息を吐きながら、部屋に戻る。奥に見える通訳チームの席には羽瑠ちゃんがいるだけだった。
自分の左側、紗里ちゃんの机の上は綺麗になっている。そう言えば今日は早出だったと思い出した。
脱力するように自席に着くと、羽瑠ちゃんが心配そうにこちらを覗き込んだ。
「大丈夫?」
「うん……。けど、本当に疲れたよ……」
その場で突っ伏したいくらいだが、そんな暇はない。羽瑠ちゃんに体を寄せると、コソコソと話し始めた。もちろん、リアムとの関係を一番先に。
さすがの羽瑠ちゃんもかなり驚いていた。自分だって、こんな運命の悪戯のような出来事があるなんて、思いもしなかったのだから。
そのあとパソコンを開き、メールで送ってもらった視察の行程表を羽瑠ちゃんに転送した。
「今送ったメール、確認してもらっていい?」
自分も行程表を開き、チーム共有のスケジュール表と見比べて、やっぱり……と頭を抱えた。
「いくつかの案件は黒岩さんに振れそうだけど……」
羽瑠ちゃんも画面に向かったまま難しい顔をしている。
元々、エネルギー開発企業事案は黒岩さんの十八番で、今までほぼ行ってもらっていた。
リアムの滞在は約一ヵ月。視察は毎日ではなく飛び飛びだ。今回の日程で、いくつかは黒岩さんに対応してもらえそうだ。けれど宿泊のある再来週金曜日から、その翌週火曜日は、思い切り予定がバッティングしているのだ。他のメンバーとも。
「ここだけが気がかりだったんだけど、私が行くしかないよね」
「そう、なるね……。ごめん、恵舞。色々気を使わせて」
「羽瑠ちゃんが謝ることじゃないって。私が考えすぎてるだけかも知れないし。それに、仕事だから。恥をかかないように勉強しなきゃね!」
リアムが嫌なわけでも、疾しいことがあるわけでもない。宿泊先だって、違うところにすれば済む話だ。
けれどどうしても、ハワードと依澄さんの関係が、脳裏にチラついてしまっていた。
エレベーターホールで二人を見送ったあと、どっと疲れが押し寄せてくる。気心の知れた相手とはいえ、重要な取引先、ハワードの人間だ。それになんとなく、依澄さんとのことを知られたくない。
リアムは、ハワードのエネルギー開発事業を主とする企業に所属しているらしい。依澄さんがいた会社とはまた別で、それを考えると二人に接点などないように思える。けれどおそらく親戚にあたるリアムと、必ずしも友好関係にあるとは限らない。
溜め息を吐きながら、部屋に戻る。奥に見える通訳チームの席には羽瑠ちゃんがいるだけだった。
自分の左側、紗里ちゃんの机の上は綺麗になっている。そう言えば今日は早出だったと思い出した。
脱力するように自席に着くと、羽瑠ちゃんが心配そうにこちらを覗き込んだ。
「大丈夫?」
「うん……。けど、本当に疲れたよ……」
その場で突っ伏したいくらいだが、そんな暇はない。羽瑠ちゃんに体を寄せると、コソコソと話し始めた。もちろん、リアムとの関係を一番先に。
さすがの羽瑠ちゃんもかなり驚いていた。自分だって、こんな運命の悪戯のような出来事があるなんて、思いもしなかったのだから。
そのあとパソコンを開き、メールで送ってもらった視察の行程表を羽瑠ちゃんに転送した。
「今送ったメール、確認してもらっていい?」
自分も行程表を開き、チーム共有のスケジュール表と見比べて、やっぱり……と頭を抱えた。
「いくつかの案件は黒岩さんに振れそうだけど……」
羽瑠ちゃんも画面に向かったまま難しい顔をしている。
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「ここだけが気がかりだったんだけど、私が行くしかないよね」
「そう、なるね……。ごめん、恵舞。色々気を使わせて」
「羽瑠ちゃんが謝ることじゃないって。私が考えすぎてるだけかも知れないし。それに、仕事だから。恥をかかないように勉強しなきゃね!」
リアムが嫌なわけでも、疾しいことがあるわけでもない。宿泊先だって、違うところにすれば済む話だ。
けれどどうしても、ハワードと依澄さんの関係が、脳裏にチラついてしまっていた。
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