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3. 夏の兆しとめぐる想い
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彼女の口から溢れた内容に、私も、たぶん依澄さんも、言葉を失っていた。喋ろうにも驚きのほうが勝り、うまく口が回らないでいた。
「結婚…………した……の?」
羽瑠ちゃんは、『結婚を考えている』でも、『するつもり』でもなく、紛れもなく『結婚した』と言ったのだ。
「そうなの。ここに来る前、婚姻届を提出してきたんだ」
「で、でも、付き合い始めたのって、最近なんだよね……?」
依澄さんたちが食事に行ったのは、今月の一日の話だ。あれからまだ、二週間ほどしか経っていない。いきなりすぎて、半ばパニックになりながら尋ねる。
「付き合うというか、お互いの気持ちに気づいたのは、一昨日」
「一昨日⁈」
思わず声を上げた私に、彼女は柔らかな笑みを浮かべる。
「うん。私ね、友だちでならずっと変わらない関係でいられるって、思い込もうとしてたみたい。でもはっきりわかったの。爽のこと、好きだったんだって」
そう告白する羽瑠ちゃんに、爽くんは優しい表情を向けている。いつもそうだったけれど、今日は一段と優しく見えた。そんな爽くんは、話しを続ける羽瑠ちゃんを、見守るように見つめていた。
「で……。私たち、友だちの期間が長かったから、付き合うだけじゃこれまでと変わらないと思って。じゃあ結婚しようかって」
見たこともないくらい幸せそうに語る彼女に、依澄さんは呆然としたまま問いかけた。
「……だからと言って、いきなり結婚だなんて……。父と母は知っているのか?」
「もちろん。昨日のうちにビデオ通話で伝えたし、爽も会わせたよ。二人とも喜んでくれてた」
それを聞いて、依澄さんは諦めたように溜め息を吐いた。
「そうか。わかった」
そう口では言っても、可愛い妹が突然結婚したのだ。内心穏やかではないだろう。彼は物凄く渋い表情だ。
兄妹の会話が終わったところで、爽くんが背筋を伸ばし真剣な眼差しを向けた。
「竹篠さん。いや、お義兄さん。さっきは生意気な態度を取って、すみませんでした。その……一緒にいたときの羽瑠があまりにも楽しそうだったから嫉妬したっつうか……。けど、生半可な気持ちで結婚したわけじゃないんで。彼女を、必ず幸せにします」
自分の両膝に手をついて、深々と頭を下げる爽くんに、依澄さんは毒気も抜かれたようだ。
「こちらこそ、大人気ない態度ですまなかった。……羽瑠を、よろしく頼む」
同じように頭を下げる二人の姿を見て、羽瑠ちゃんと顔を見合せて、笑い合っていた。
「結婚…………した……の?」
羽瑠ちゃんは、『結婚を考えている』でも、『するつもり』でもなく、紛れもなく『結婚した』と言ったのだ。
「そうなの。ここに来る前、婚姻届を提出してきたんだ」
「で、でも、付き合い始めたのって、最近なんだよね……?」
依澄さんたちが食事に行ったのは、今月の一日の話だ。あれからまだ、二週間ほどしか経っていない。いきなりすぎて、半ばパニックになりながら尋ねる。
「付き合うというか、お互いの気持ちに気づいたのは、一昨日」
「一昨日⁈」
思わず声を上げた私に、彼女は柔らかな笑みを浮かべる。
「うん。私ね、友だちでならずっと変わらない関係でいられるって、思い込もうとしてたみたい。でもはっきりわかったの。爽のこと、好きだったんだって」
そう告白する羽瑠ちゃんに、爽くんは優しい表情を向けている。いつもそうだったけれど、今日は一段と優しく見えた。そんな爽くんは、話しを続ける羽瑠ちゃんを、見守るように見つめていた。
「で……。私たち、友だちの期間が長かったから、付き合うだけじゃこれまでと変わらないと思って。じゃあ結婚しようかって」
見たこともないくらい幸せそうに語る彼女に、依澄さんは呆然としたまま問いかけた。
「……だからと言って、いきなり結婚だなんて……。父と母は知っているのか?」
「もちろん。昨日のうちにビデオ通話で伝えたし、爽も会わせたよ。二人とも喜んでくれてた」
それを聞いて、依澄さんは諦めたように溜め息を吐いた。
「そうか。わかった」
そう口では言っても、可愛い妹が突然結婚したのだ。内心穏やかではないだろう。彼は物凄く渋い表情だ。
兄妹の会話が終わったところで、爽くんが背筋を伸ばし真剣な眼差しを向けた。
「竹篠さん。いや、お義兄さん。さっきは生意気な態度を取って、すみませんでした。その……一緒にいたときの羽瑠があまりにも楽しそうだったから嫉妬したっつうか……。けど、生半可な気持ちで結婚したわけじゃないんで。彼女を、必ず幸せにします」
自分の両膝に手をついて、深々と頭を下げる爽くんに、依澄さんは毒気も抜かれたようだ。
「こちらこそ、大人気ない態度ですまなかった。……羽瑠を、よろしく頼む」
同じように頭を下げる二人の姿を見て、羽瑠ちゃんと顔を見合せて、笑い合っていた。
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