67 / 76
12
4
しおりを挟む
「お前たちはさっさと結婚しろ」
婚約発表の翌日。世間は連休最終日の祝日に、仏頂面で言ったのは創一だ。
もちろん俺たちのことをヤキモキしながら見ていただろう創一がそう言うのも理解はできる。できるが、ここまできたら俺も信念を曲げたくなかった。
「いや。川村の長男差し置いて、俺が先に結婚するわけにいかないだろ。お前が先にしろ。…………不本意だが」
なにしろ相手は妹だ。まだ大学を卒業して数ヶ月の箱入り娘をこんなに早く嫁にやるなんて、と思うといまいち納得はできない。未だに、偽装じゃなかったのかよ、と溜め息が出そうだった。
その始まりは春。親父からの一本の電話だった。
『色々あってだな。創一君と与織子をお見合いさせようと思って』
俺はそれに精一杯の力で『はぁ⁈』と返した。もちろん俺が手放しで喜んでいるとは思っていない親父は、その色々の説明を始めた。
『とりあえず、お見合いしたって事実が広がるだけでも牽制になるだろう。与織子のバックには旭河がついてるんだぞって』
親父は得意げにそんなことを言うが、元を正せば親父が朝木の持っていた旭河の株を全て与織子に渡してしまったのが悪いのだ。おかげで、妹を通じて旭河の株を狙うものが出てきてしまった。
俺は渋々お見合いは許したが、2人は勝手に婚約した上に、本当に結婚することになった。
「お前たちのほうが婚約して長いんだから、澪を待たせるな」
不本意、にムッとしたような顔で返す創一は、大事な従姉妹を引き合いに出して言う。
「仕方ないだろ。お前に相手が見つからなかったんだから」
「そう言われても、俺ははなから与織子と結婚するつもりだったが?」
俺たちの言い争いを、呆れたように眺めているのは隣にいる澪で、ハラハラしているのは創一の隣にいる与織子だ。
俺は仕方なく一つ案を出した。
「わかった。同じ日にしよう」
婚約発表の翌日。世間は連休最終日の祝日に、仏頂面で言ったのは創一だ。
もちろん俺たちのことをヤキモキしながら見ていただろう創一がそう言うのも理解はできる。できるが、ここまできたら俺も信念を曲げたくなかった。
「いや。川村の長男差し置いて、俺が先に結婚するわけにいかないだろ。お前が先にしろ。…………不本意だが」
なにしろ相手は妹だ。まだ大学を卒業して数ヶ月の箱入り娘をこんなに早く嫁にやるなんて、と思うといまいち納得はできない。未だに、偽装じゃなかったのかよ、と溜め息が出そうだった。
その始まりは春。親父からの一本の電話だった。
『色々あってだな。創一君と与織子をお見合いさせようと思って』
俺はそれに精一杯の力で『はぁ⁈』と返した。もちろん俺が手放しで喜んでいるとは思っていない親父は、その色々の説明を始めた。
『とりあえず、お見合いしたって事実が広がるだけでも牽制になるだろう。与織子のバックには旭河がついてるんだぞって』
親父は得意げにそんなことを言うが、元を正せば親父が朝木の持っていた旭河の株を全て与織子に渡してしまったのが悪いのだ。おかげで、妹を通じて旭河の株を狙うものが出てきてしまった。
俺は渋々お見合いは許したが、2人は勝手に婚約した上に、本当に結婚することになった。
「お前たちのほうが婚約して長いんだから、澪を待たせるな」
不本意、にムッとしたような顔で返す創一は、大事な従姉妹を引き合いに出して言う。
「仕方ないだろ。お前に相手が見つからなかったんだから」
「そう言われても、俺ははなから与織子と結婚するつもりだったが?」
俺たちの言い争いを、呆れたように眺めているのは隣にいる澪で、ハラハラしているのは創一の隣にいる与織子だ。
俺は仕方なく一つ案を出した。
「わかった。同じ日にしよう」
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです
紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。
★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★
☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆
※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。
お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。
あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。
汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。
書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
―――――――――――――――――――
ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。
傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。
―――なのに!
その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!?
恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆
「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」
*・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・*
▶Attention
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜
Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。
結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。
ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。
気がついた時にはかけがえのない人になっていて――
表紙絵/灰田様
《エブリスタとムーンにも投稿しています》
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる