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☆番外編4☆

とある日常の風景 3

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 玄関口に取り付けてあるインターフォン。その前で一度呼吸を整えると、私はそれを押す。

『はーい!』

 弾むような明るい応答に、「東藤です」と告げた。

 しばらくすると扉は開き、「いらっしゃい。どうぞ、入って?」と、瑤子さんは変わらぬ明るい笑顔を私に向けた。

 リビングに入ると、そこを取り囲むようにベビーサークルが置いてある。中にはおもちゃが点在していて、そこに向かって一生懸命に這っているお嬢さんの姿があった。

「大きくなりましたね」

 何度かお会いしたことのある壱花さんは、私を見るとニコッと愛らしい笑顔を見せてくれた。

「本当に。早いわよねぇ。この頃はずり這いでどこまでもいっちゃうからこんなことになってて。狭くてごめんなさい」

 そう言うと、瑤子さんはサークルに押し退けられた形のソファに座る私にコーヒーを差し出した。

「いえ。お気になさらず」

 瑤子さんは、テーブルに自分のカップを置くと、横にあるスツールに腰掛ける。サークルの真横で、中の様子がよく見える場所だ。

「それより、改まって相談って何? ごめんなさい、司はさっき急にコーヒー豆無くなったから買いに行ってくるって出かけてちゃって」

 瑤子さんは申し訳なさそうにそう言う。司さんが出かけて行くのは計画通りと知っていても、こちらも申し訳ない気分になる。

 数日前。私は困り果てていた司さんに提案した。よろしければ、私が瑤子さんに直接リサーチしましょうか、と。これ以上悩み続けられると、仕事にも支障が出そうだったからだ。

「問題ありません。どちらかと言えば、瑤子さんにお聞きしたかったので」

 私は手にしていたカップをテーブルに置くと、瑤子さんに体を向ける。

「実は、妻の誕生日プレゼントに悩んでおりまして。いい案がないかと」
「そうなんだ。私で参考になるのかわからないけど……。ところで誕生日はいつなの?」

 ワクワクしたような瑤子さんに、私は「6月です」と答える。もちろん嘘ではない。だが、嘘を言ったところで私の乏しい表情では見抜けないだろう。

「そうね~……」

 考え始めた瑤子さんに、私は付け加える。

「できれば、瑤子さんなら何が嬉しいか教えていただけませんか?」

 瑤子さんは驚いたように目を開いてから「わかったわ」と微笑んだ。


「お待たせしました」

 駐車場に停まる車の窓をノックし、顔を出したその人に声を掛ける。

「首尾は?」
「上々です」

 それから私は、聞き出した内容を全て伝えた。それに司さんは口角を上げると、「決まりだな」と呟いた。
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