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☆番外編4☆

とある日常の風景 2

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「じゃあ、俺のを聞いてください!」

 腰に両手を当て、胸を反らして得意気に中川は言う。

「仕方ねぇ。聞いてやるよ」

 ビールを流し込みながら投げやりに返すと、中川は満面の笑みを浮かべた。

「まず、ブランドショップの並ぶ街でデートです。なんでも、好きなもの買ってやるよ? ってね」

 なんでも~から、演技がかった口調で中川は話す。もしかしなくても、俺の真似か? と思うと無性イラつく。しらけた視線を送る俺に気づいてないのか、中川は続けた。

「夜は、高級ホテルの、夜景の見える高級レストランで食事。そのあとは、そのままスイートルームで熱い夜を……」

 うっとりしながら目を瞑る中川は、目を開けると体勢を戻す。

「……ってのが、俺の夢です!」

 はなから憐れみの目で見ていた長谷は、「だろうな」と呆れている。しらっとした空気が流れるなか、中川は「え! ダメですか? 俺の理想シチュエーション!」と俺たちの顔をキョロキョロと眺めながら訴えた。

「あのなぁ。そんなつまんねぇ内容で瑤子が喜ぶなら苦労しねぇんだよ」
「え~? つまんなくないっすよ! じゃあ聞きますが、去年はどんな楽しい誕生日だったんっすか?」

 俺はその質問を、渋い顔して受ける。を言わなきゃなんねぇのか? と去年のことを思い出す。誰にも言ってねぇのに。

「教えてくださいよぉ! 今後の参考にしますから!」

 懇願する中川に、俺はニヤリと笑みを浮かべる。

「じゃ、お前に女ができたら、最初の誕生日は同じようにしろよ? ぜってーな?」
「はい! もちろんっす!」

 両手を握り振りながら、中川は勢いよく答える。俺はそれを鼻で笑いながら話し始めた。

「昼間は……近所の公園を散歩。マジで歩いただけ。夕方は、牛丼チェーン店で飯食って、ケーキだけ買って帰って家で食った。以上、終わり!」

 ヤケクソにそう言うと、皆同じようにポカンとした顔で俺を見ている。いつも無表情の東藤でさえも。

「……え。そんな誕生日デート。中学生でもしませんよ……」
「うるせぇな。瑤子のリクエストに答えたらこうなったんだよ!」

 唖然としたままの中川に吐き捨てるように返すと、その隣で長谷が笑っている。

「さすが瑤子さん。想像以上! そりゃ、次のハードル高いわ!」

 牛丼チェーン店にいる俺を想像でもしてるのか、長谷は持っているグラスが揺れるくらい笑っている。
 
「だから悩んでんだろうが……」

 残りのビールを呷り、ジョッキをテーブルに置くと、向かいの東藤と目が合った。

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