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☆番外編3☆
emotional 5
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受けた施術は、思っていた以上にリラックスできた。
足に始まり、次はベッドの上でうつ伏せでマッサージを受ける。
最初は緊張していたし、自分の体がガチガチでちょっと痛いな、なんて思った。けれど、仰向けになってしばらくすると、緊張も解れ、体もぽかぽかしてきて、気づけばそのまま眠っていたようだ。
「……様。……長門様。以上で終了になります」
そう呼びかけられハッとする。夢すら見ないくらい熟睡していた。と言っても、ほんの2、30分の間だと思う。
「は、はい」
していたアイマスクを外しベッドの横を見ると、担当してくれた女性がにこやかに笑顔を浮かべて立っていた。
「ずいぶんお疲れのようですね。睡眠不足もですが、頭や目もお疲れのようでしたので、しっかり解しておきました。何か気になるところはございますか?」
心当たりしかないことを言われて、マッサージだけでそんなことがわかるんだ、なんて感心してしまう。
「いえ。とても体が軽くなりました。ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございました。お飲み物をお持ちしますので、お着替えになってお待ちください」
そう言って会釈をすると女性は出ていき、私はゆっくり起き上がった。まだぼんやりしていて、私はベッドの縁に座ったまましばらくボーっとしてしまう。
時間はまだ夕方4時過ぎ。ディナーまでは時間があるし、お部屋でもう一眠りできそう。せっかくだからここは甘えて、ゆっくりさせてもらおう。そんなことを考えながら私は着替えた。
フワフワした心地のまま用意された部屋に向かう。司が長期滞在していた部屋と、階数は違うけど同じような場所で、窓から見える景色はなんだか懐かしい。そのままベッドにダイブしたい気持ちを抑え、とりあえずバスローブでいいか、と着替えてからベッドに潜り込んだ。
そしてもう早くもウトウトしながら、私はお義母様に感謝していた。
こんなにゆっくりできたの、久しぶりかも……
身近に助けてくれる存在はたくさんいて、自分は凄く恵まれていると思う。それでも、性格もあってか、自分でやらなきゃ、もっと頑張らなきゃって思い込んでいたのだと思う。さっき、頭と目が、と言われて余計にそう思った。寝不足のシャキッとしない頭のまま、必死で仕事を覚えようと勉強していたから。
何か……お義母様の好きなものを買って帰ろう……
そんなことを思いながら、私の意識は途切れていた。
だ……れ……?
私の頭をゆっくり撫でる気配。
壱……花……?
休日、お昼寝をしてしまうと、壱花が私の頭をポンポンと叩いて起こすことがある。もちろん、本人は撫でているつもりだ。私が起きて抱きしめると、壱花は嬉しそうに声を上げる。そしてその向こうには、穏やかに笑みを浮かべて私達を見る司がいて、私はいつも幸せを実感するのだった。
サラサラと私の頭を撫でる気配は、夢と現実の狭間にいる私をゆっくり覚醒させていった。静かに目蓋を持ち上げると、もう薄暗くなった部屋が見えた。
「……起きたか?」
私はまだ、夢の中にいるのだろうか?
聞こえるはずのない声が聞こえて、私は顔を上げた。
「よく寝てたな」
そう言って笑う、一月ぶりに見るその顔。私はもしかして丸一日眠ってしまっていたのだろうかと呆然としながらその顔を見上げた。
「ただいま。一日早く帰って来た。驚いたか?」
サプライズが成功した子どものような悪戯っぽい笑みを浮かべて司はそう言う。私は体を起こすと、ベッドサイドに座る司を見上げた。
「……司……」
ようやく言えたのはこれだけ。
「なんだ?」
笑みを浮かべて答えるその顔が、だんだんと滲んでいく。フッと司の唇から息が漏れると、私は抱き寄せられる。
「そんなに俺と会えて嬉しい?」
司の体温が、匂いが、私の感情に訴える。
「うん……。会いたかった。会いたかったよ」
次々と溢れる涙とともに、私はそう口にした。
足に始まり、次はベッドの上でうつ伏せでマッサージを受ける。
最初は緊張していたし、自分の体がガチガチでちょっと痛いな、なんて思った。けれど、仰向けになってしばらくすると、緊張も解れ、体もぽかぽかしてきて、気づけばそのまま眠っていたようだ。
「……様。……長門様。以上で終了になります」
そう呼びかけられハッとする。夢すら見ないくらい熟睡していた。と言っても、ほんの2、30分の間だと思う。
「は、はい」
していたアイマスクを外しベッドの横を見ると、担当してくれた女性がにこやかに笑顔を浮かべて立っていた。
「ずいぶんお疲れのようですね。睡眠不足もですが、頭や目もお疲れのようでしたので、しっかり解しておきました。何か気になるところはございますか?」
心当たりしかないことを言われて、マッサージだけでそんなことがわかるんだ、なんて感心してしまう。
「いえ。とても体が軽くなりました。ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございました。お飲み物をお持ちしますので、お着替えになってお待ちください」
そう言って会釈をすると女性は出ていき、私はゆっくり起き上がった。まだぼんやりしていて、私はベッドの縁に座ったまましばらくボーっとしてしまう。
時間はまだ夕方4時過ぎ。ディナーまでは時間があるし、お部屋でもう一眠りできそう。せっかくだからここは甘えて、ゆっくりさせてもらおう。そんなことを考えながら私は着替えた。
フワフワした心地のまま用意された部屋に向かう。司が長期滞在していた部屋と、階数は違うけど同じような場所で、窓から見える景色はなんだか懐かしい。そのままベッドにダイブしたい気持ちを抑え、とりあえずバスローブでいいか、と着替えてからベッドに潜り込んだ。
そしてもう早くもウトウトしながら、私はお義母様に感謝していた。
こんなにゆっくりできたの、久しぶりかも……
身近に助けてくれる存在はたくさんいて、自分は凄く恵まれていると思う。それでも、性格もあってか、自分でやらなきゃ、もっと頑張らなきゃって思い込んでいたのだと思う。さっき、頭と目が、と言われて余計にそう思った。寝不足のシャキッとしない頭のまま、必死で仕事を覚えようと勉強していたから。
何か……お義母様の好きなものを買って帰ろう……
そんなことを思いながら、私の意識は途切れていた。
だ……れ……?
私の頭をゆっくり撫でる気配。
壱……花……?
休日、お昼寝をしてしまうと、壱花が私の頭をポンポンと叩いて起こすことがある。もちろん、本人は撫でているつもりだ。私が起きて抱きしめると、壱花は嬉しそうに声を上げる。そしてその向こうには、穏やかに笑みを浮かべて私達を見る司がいて、私はいつも幸せを実感するのだった。
サラサラと私の頭を撫でる気配は、夢と現実の狭間にいる私をゆっくり覚醒させていった。静かに目蓋を持ち上げると、もう薄暗くなった部屋が見えた。
「……起きたか?」
私はまだ、夢の中にいるのだろうか?
聞こえるはずのない声が聞こえて、私は顔を上げた。
「よく寝てたな」
そう言って笑う、一月ぶりに見るその顔。私はもしかして丸一日眠ってしまっていたのだろうかと呆然としながらその顔を見上げた。
「ただいま。一日早く帰って来た。驚いたか?」
サプライズが成功した子どものような悪戯っぽい笑みを浮かべて司はそう言う。私は体を起こすと、ベッドサイドに座る司を見上げた。
「……司……」
ようやく言えたのはこれだけ。
「なんだ?」
笑みを浮かべて答えるその顔が、だんだんと滲んでいく。フッと司の唇から息が漏れると、私は抱き寄せられる。
「そんなに俺と会えて嬉しい?」
司の体温が、匂いが、私の感情に訴える。
「うん……。会いたかった。会いたかったよ」
次々と溢れる涙とともに、私はそう口にした。
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