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☆番外編2☆ (27章〜28章辺り)

勝負の行方4

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 私、なんでされてるんだろう?

 そう思っていても、司のすることに抗えないまま、唇は塞がれ着ている薄いニットの中は弄られている。

「んっ、ちょっと……。あ!」

 押し返そうにも、まだ手からは水が滴る感覚が伝わって来て、抗議しようにも言葉を発する機会を与えてもらえない。
 アッサリ私の下着を緩めたかと思うと、その中に指は伝い、やわやわと感触を味わうように蠢いている。

「触ってるだけで気持ちいいんだけど」

 そんなことを小さく耳元で囁かれたら、こっちのほうがゾクゾクしてしまう。胸の尖った先端を指の間に挟まれ刺激されながら揉みしだかれ、耳の縁をなぞるように舌が這う。

「やっ、あっ……」

 体の中からピリピリと電流が沸き立ち、私の背中を這い上がると、立っていられないくらいに体は揺れた。

「司っ! もうおしまい!」

 もうこれ以上ここでされちゃうのは!とびしょびしょの手のまま司の胸を押す。着ていたグレーのスエットシャツは、私の指が当たった部分だけ濃い色に変わっている。そして司は、ものすごーく不機嫌そうに私を見下ろしていた。

「今からがいいところだろ」
「何言ってるのよ! ここでどこまでするつもり⁈」

 聞かなくても返ってくる答えは想像できる。でも思わず聞いてしまった。

「もちろん……。2人で気持ちよくなれるところまで、だな」

 不敵な笑みを浮かべて、当たり前のようにそう言う司に、私は呆れるしかない。

「何言ってるのよ! こんなところで絶対しないから! だいたい、勝負に勝ったのは私なのよ? 明日、朝食作ってくれるんでしょう? 早く寝なきゃ!」

 私の抗議にも表情を崩さず、司は私を腰から引き寄せる。

「お前が寝坊してくれたら俺も早起きしなくてすむだろ? 安心しろ。ちゃんと服は着せてやる」

 そう言って顔を近づけてくる司から逃れるように私は頭を後ろにやる。

「ちょっ、とっ! ここじゃダメだって!」

 私が仰け反りながら言うと、司は諦めたように体勢を戻した。
 いや、諦めたのは、ここですること、だけだ。

 キッチンに響くチャイムと、機械のアナウンス。

『オフロガワキマシタ』

 司はそれにニヤリと笑うと、「だってよ。good timing」と、無駄に綺麗な発音でそんなことを言った。

「全然グッドタイミングじゃないわよ! ちょっとっ!!」

 抗議も虚しく、私はそのままバスルームに連れ込まれたのは、言うまでもなかった。


◆◆


「なぁ」

 2人で入るとそれなりに窮屈になる浴槽の中で、目の前にある瑤子の髪を弄びながら問いかける。まだ洗っていないその髪の手触りは、絹のように滑らかだといつも思う。

「なぁに?」

 俺が髪の毛を持ち上げているからか、瑤子はほんの少しだけこちらを向いた。

「もう伸ばさねぇの?」

 出会った頃は背中まであった髪が、肩で切り揃えられたのは1カ月半ほど前。
 髪型など好きにすればいいし、何のこだわりもないと思っていた自分が、意外とその短くなった髪を残念に思ってしまったのも事実だ。
 俺が髪から手を離すと、瑤子はようやく体を捻り俺の顔を見上げ、少し不満気な表情を見せた。

「この長さから伸ばすの、結構大変なんだけど……」

 確かに、今もすでに伸びてきていて、朝跳ねた髪と格闘してしているのは知っている。

「でも……。また伸ばしてもいいかな?」

 クスクスと笑いながらそう言うと、瑤子は腕を持ち上げて俺の顔を撫でる。

「そんなにシュンとされちゃったら、少しくらい跳ねるのも我慢するわ?」
「……してねぇ」

 瑤子はクスクスと笑みをこぼしながら体を俺のほうに向けた。

「そう?」

 表情を確認するように瑤子は俺を見上げてそう言う。

「私、結構髪伸びるの早いみたいだから、あっという間よ」

 宥めるような穏やかな表情でそう言う瑤子に、今度は俺が息を漏らして笑う。

「ってことは、すけ……」
「余計なこと、言わないでくれるかな?」

 俺が最後の一文字を言う前に、顔を顰めた瑤子の両手で口を塞がれる。その手をゆっくり退かしてそのまま握りながら、俺は湯船の中で腰を引き寄せた。

「本当のことだろ?」
「っ! それは司がっ!」

 不服そうに声を上げる瑤子に、俺は笑いながらゆっくり顔を近づける。

「俺が……何?」
「そうさせてる……んだから……ね?」

 唇に触れるか触れないか、そんな距離。瑤子が小さくそう言う振動まで伝わってくる。

「ま、そう言うことにしとくか。じゃ、期待に応えてやるよ」
「えっ!」

 それ以上の言葉は唇の中に閉じ込める。柔らかなその感触を味わいながら、俺は温まった肌に手を滑らせた。

 お湯が動きに合わせて揺れながら音を立て、それと同時に瑤子から吐息が漏れた。
 熱くなる唇と息、俺にしがみつく腕。こんな関係になって、約半年。数えきれないくらい体を重ねているのに、いっこうに飽きることはない。むしろ、どんどんと深みにハマってるよな、なんて思いながら、俺は瑤子の体を堪能していた。
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