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クリスマスの次の日。
家に突然やって来たのは、この家のオーナー。
「ツカサ!私からのクリスマスプレゼントは開けてくれたかい?」
そう言って現れたのは、本当にサンタさんのような体格の男性。
「あー……ロイ。まだ開けてねーわ」
玄関先で頭を掻きながら司はそう答えている。
「なんと!なら一緒に開けよう!」
そう言ってロイは家に入って来る。元々ロイの家なんだから、そこに遠慮はない。
それにしても、アメリカ発祥のチキンの店の前にいるおじさんが歩いてるみたい……なんて私はその姿を見て、少し笑ってしまった。
リビングへ向かうロイを先頭に、私達はその後を着いて歩く。
かと思うと、突然ロイは立ち止まるとクルリとこちらを向いた。
「ところでツカサ。この美しいお嬢さんを紹介してくれないのか?」
「あぁ?ロイが紹介する暇を与えてくれなかったんだろうが。こいつは瑤子。俺のフィアンセ。OK?」
半ば投げやりに司はロイにそう言った。
「おお!ヨーコ!まるで誕生したばかりのヴィーナスの様に美しい!」
大袈裟に手を広げたかと思うと、ロイは私をその大きな胸の中に収め……ようとして司に止められる。
「いくらロイでも瑤子には触らせねー」
そんな司を見て、ロイは「ハッハッハ!」と声を上げて笑っている。
「こりゃあ噂以上だな。こんなツカサを生きている間に見る日が来るとは!」
司が顔を顰めながら「誰だよ。変な噂流したのは!」と言うと、ロイは笑いながら「自分じゃないのか。ツカサ」と言ってまた歩き出した。
顔を顰めたままその姿を見送って、司はポツリと「……忘れてた」と呟いた。
そうか、もうこっちじゃ結婚したって言う偽の情報が出回っているんだった。そして、その信憑性を高めるために噂を流したのは他でもない司自身だったんだっけ。
そのままの仏頂面で司はロイの方へ歩き出す。
「ねぇねぇ。ところでクリスマスプレゼントって何の事?」
私は不思議に思っていた事を司に尋ねる。ここに来た時それらしいものは見当たらなかった筈だ。それとも2人しか知らない隠し場所でもあったのだろうか?
「何言ってんだ?ずっとあっただろ。そこに」
そう言って司が指を指す方を見ると、すでにそこにロイが座り込んでいる。
「え?まさか……」
私はそのクリスマスツリーの下に大量に置いてあった箱を思い出す。私がカモフラージュに使った場所。でも、ずっと飾りの一部なんだと思っていた。
「あれ、全部中身入ってるぞ?もちろん俺とお前用にな」
そう言って司は笑っていた。
司の言う通り、ツリーの下にあった大小様々な箱には全部中身が入っていた。
ロイは嬉しそうに、箱を私達の前に積んで早く開けるよう急かす。
子供の頃でさえこんなにプレゼント貰った事ないや……と思いながら、私はワクワクしてそれを開けた。
「どうだい?気に入ってくれたかい?」
全部開け終わると、ロイが暖炉の前のソファで寛ぎながら柔和な笑顔で言う。
私が司の方を戸惑いながら見ると、「貰っとけ。その方がロイも喜ぶ」と笑顔を浮かべた。
私は頷いてからロイを見て「ありがとうございます。大事にします」と答えるとロイは満足そうに何度も頷いていた。
凄すぎて言葉が出ないのが正直なところなんだけど……
目の前のプレゼントを見て私は思った。
カシミアのショールに有名な香水、素敵な風景の写真集と司とペアになっていた腕時計。
もちろん司の開けたものも豪華だった。ワインに高級チョコレート、腕時計にカメラのレンズまであった。
「さすがによく分かってんな。ロイ」
司も満更でもなさそうにロイの元へ行きそう言っている。
こっちに来てからたくさんの司の本当の顔を見た気がする。
日本では、司より遥かに年の離れた人達と接している姿を見ることなどなかったが、ここでは違う。
司とは親子程離れた人達と、司は心の底から楽しそうにしている姿をたくさん見ることが出来た。
司は……愛されてるんだな
なんて、自分の事のように嬉しくなる。自分の愛している人が、たくさんの人達から愛されていると思うと。
ロイが特製のサンドウィッチを作ってくれると言うので、私達はキッチンへ向かう。
ロイは鼻歌を歌いながら冷蔵庫に残っていた食材をポイポイ出していて、
司はコーヒーを淹れ始めていた。
私はと言うと、何をするわけでもなく、ただ2人のその楽しげな様子を眺めていた。
「あぁ、そうだ」
ロイの作った、とにかく具が山盛りのオープンサンドと司の入れたアメリカンコーヒーで食事をしながら、ロイは徐にそう言った。
「ツカサが前に住んでいた家。ツカサが出てすぐ次が決まったよ」
そう聞いた司は、コーヒーを啜りながら「へー。良かったな」なんて他人事のように答えた。
「ツカサがあんなに物を置いて行くとは思わなかったが、それが功を奏したのか、一眼で気に入ってくれてな。いやぁ、ツカサの名前を出さなくても借りてくれる相手がいて良かった」
そう言って豪快にロイは笑う。
「そんなに残していったの?」
私が司に小さく尋ねると、バツの悪そうな顔で司は答える。
「まぁ、ほとんど置いてったからな」
家に突然やって来たのは、この家のオーナー。
「ツカサ!私からのクリスマスプレゼントは開けてくれたかい?」
そう言って現れたのは、本当にサンタさんのような体格の男性。
「あー……ロイ。まだ開けてねーわ」
玄関先で頭を掻きながら司はそう答えている。
「なんと!なら一緒に開けよう!」
そう言ってロイは家に入って来る。元々ロイの家なんだから、そこに遠慮はない。
それにしても、アメリカ発祥のチキンの店の前にいるおじさんが歩いてるみたい……なんて私はその姿を見て、少し笑ってしまった。
リビングへ向かうロイを先頭に、私達はその後を着いて歩く。
かと思うと、突然ロイは立ち止まるとクルリとこちらを向いた。
「ところでツカサ。この美しいお嬢さんを紹介してくれないのか?」
「あぁ?ロイが紹介する暇を与えてくれなかったんだろうが。こいつは瑤子。俺のフィアンセ。OK?」
半ば投げやりに司はロイにそう言った。
「おお!ヨーコ!まるで誕生したばかりのヴィーナスの様に美しい!」
大袈裟に手を広げたかと思うと、ロイは私をその大きな胸の中に収め……ようとして司に止められる。
「いくらロイでも瑤子には触らせねー」
そんな司を見て、ロイは「ハッハッハ!」と声を上げて笑っている。
「こりゃあ噂以上だな。こんなツカサを生きている間に見る日が来るとは!」
司が顔を顰めながら「誰だよ。変な噂流したのは!」と言うと、ロイは笑いながら「自分じゃないのか。ツカサ」と言ってまた歩き出した。
顔を顰めたままその姿を見送って、司はポツリと「……忘れてた」と呟いた。
そうか、もうこっちじゃ結婚したって言う偽の情報が出回っているんだった。そして、その信憑性を高めるために噂を流したのは他でもない司自身だったんだっけ。
そのままの仏頂面で司はロイの方へ歩き出す。
「ねぇねぇ。ところでクリスマスプレゼントって何の事?」
私は不思議に思っていた事を司に尋ねる。ここに来た時それらしいものは見当たらなかった筈だ。それとも2人しか知らない隠し場所でもあったのだろうか?
「何言ってんだ?ずっとあっただろ。そこに」
そう言って司が指を指す方を見ると、すでにそこにロイが座り込んでいる。
「え?まさか……」
私はそのクリスマスツリーの下に大量に置いてあった箱を思い出す。私がカモフラージュに使った場所。でも、ずっと飾りの一部なんだと思っていた。
「あれ、全部中身入ってるぞ?もちろん俺とお前用にな」
そう言って司は笑っていた。
司の言う通り、ツリーの下にあった大小様々な箱には全部中身が入っていた。
ロイは嬉しそうに、箱を私達の前に積んで早く開けるよう急かす。
子供の頃でさえこんなにプレゼント貰った事ないや……と思いながら、私はワクワクしてそれを開けた。
「どうだい?気に入ってくれたかい?」
全部開け終わると、ロイが暖炉の前のソファで寛ぎながら柔和な笑顔で言う。
私が司の方を戸惑いながら見ると、「貰っとけ。その方がロイも喜ぶ」と笑顔を浮かべた。
私は頷いてからロイを見て「ありがとうございます。大事にします」と答えるとロイは満足そうに何度も頷いていた。
凄すぎて言葉が出ないのが正直なところなんだけど……
目の前のプレゼントを見て私は思った。
カシミアのショールに有名な香水、素敵な風景の写真集と司とペアになっていた腕時計。
もちろん司の開けたものも豪華だった。ワインに高級チョコレート、腕時計にカメラのレンズまであった。
「さすがによく分かってんな。ロイ」
司も満更でもなさそうにロイの元へ行きそう言っている。
こっちに来てからたくさんの司の本当の顔を見た気がする。
日本では、司より遥かに年の離れた人達と接している姿を見ることなどなかったが、ここでは違う。
司とは親子程離れた人達と、司は心の底から楽しそうにしている姿をたくさん見ることが出来た。
司は……愛されてるんだな
なんて、自分の事のように嬉しくなる。自分の愛している人が、たくさんの人達から愛されていると思うと。
ロイが特製のサンドウィッチを作ってくれると言うので、私達はキッチンへ向かう。
ロイは鼻歌を歌いながら冷蔵庫に残っていた食材をポイポイ出していて、
司はコーヒーを淹れ始めていた。
私はと言うと、何をするわけでもなく、ただ2人のその楽しげな様子を眺めていた。
「あぁ、そうだ」
ロイの作った、とにかく具が山盛りのオープンサンドと司の入れたアメリカンコーヒーで食事をしながら、ロイは徐にそう言った。
「ツカサが前に住んでいた家。ツカサが出てすぐ次が決まったよ」
そう聞いた司は、コーヒーを啜りながら「へー。良かったな」なんて他人事のように答えた。
「ツカサがあんなに物を置いて行くとは思わなかったが、それが功を奏したのか、一眼で気に入ってくれてな。いやぁ、ツカサの名前を出さなくても借りてくれる相手がいて良かった」
そう言って豪快にロイは笑う。
「そんなに残していったの?」
私が司に小さく尋ねると、バツの悪そうな顔で司は答える。
「まぁ、ほとんど置いてったからな」
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