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どうしてこうなったんだろう……??
浴槽の縁に腰掛けた私は、何故か今、司に髪の毛を洗われていた。
『一緒に入るか』と言われ、盛大に拒否したけど、「まーいーだろー?」何て調子でバスルームの前まで連れて行かれた。
そして、司は当たり前のように自分のシャツのボタンを外すと、何か言いたげにこちらを見ていた。
「……脱がねーの?」
「だから無理って言ってるでしょ!!」
だいたい私は、誰かと一緒にお風呂に入るなんて、元カレでさえした事はない。すでに全身見ているとはいえ、こんな明るいところで裸になる度胸はない。
「一緒じゃないとシャワー浴びさせないで、このままここで抱くけど?」
そう言いながらにじり寄る司に、精一杯の折衷案を提案した結果、何とか受け入れられて今に至る。
とりあえず、タオルを巻く事。
「しゃーねえなぁ」
何て言いながら、ちゃんと私にバスタオルを持って来てくれて、私は嫌々ながらもそれを巻いてバスルームに入った。
後から入って来た司はいきなりの全裸で、「あんたも隠してよ!!」とバスルームにあったフェイスタオルを投げつける。
「はぁ?面倒くせぇ」と言いながらも、司はちゃんと腰にタオルを巻いてくれた。
で、どうするのかと思っていたら、
「ほら、そこに座れよ」
なんてバスタブを指差す。
「なんで?」
と聞き返して振り返ると、すでにシャワーのノズルを持って司は超絶笑顔を見せていた。
「髪の毛洗ってやるよ」
何か……気持ち悪いくらいに嬉しそうに笑ってて逆に怖い。
逆らわないのが得策だと、私はそれに従った。
でも、人に髪の毛洗って貰うのって、なんでこんなに気持ちいいんだろう……。
意外と上手で、私はちょっとうっとりしながら尋ねた。
「ねぇ。いっつもこんな事やってるの?」
「あー?そういや、希海が子供の頃やってやった以来かもな」
何て返事と、シャカシャカ言う泡の音がバスルームに響いた。
私は親戚の子供扱いかっ!どういう事よ一体。
相変わらず司が何を考えてるのかさっぱり分からないまま、ご丁寧にトリートメントまでしてくれて、ようやくなんだかよく分からないこの時間は終わった。
頭にタオルを巻いていると、司は「ほら、化粧も落とすだろ?」なんて言ってアメニティのクレンジングを手渡してきた。
さすが高級ホテル。それなりにいいブランドのものだ。
何か気味が悪い……。ほんと不気味。
この見返りが一体何なのか。考えただけでも震える。戸惑っている私を他所に、司はバスタブに張っていたお湯に浸かっていた。
「早く顔洗えよ。待ってんだから」
「待たなくてもいいし、化粧落とした顔見て驚かないでよね!」
「大体想像つくから驚かねーよ」
悪かったわね!単純な顔で!
少々乱暴にクレンジングを開けて、多分ドロドロになっているだろう化粧を落とす。
あー……帰る時はスッピンかぁ……。さすがに化粧もう一回するの面倒。
なんて考える。
朝までなんて一緒にいてやらないんだから。
顔まで洗って、さて後は身体を洗うのみ……なんだけど、この人一体いつまでここにいるんだろうか。
「ねえ。まだ出ないの?身体そろそろ洗いたいんだけど」
そう言って振り返ると、司は広いバスタブの中から身体を乗り出し私の手を引いた。
「その前に一緒に浸かろうぜ」
「何でよ⁈」
「俺がそうしたいからに決まってるだろ」
当たり前かのように言って私の手を引っ張る。
さっきにも増して満面の笑みを讃えていて、私はもう諦めて足を入れた。
「おい。だから何でそっちだよ」
司の反対側にもたれるように座ると司につかさず突っ込まれる。
「いっ、いいじゃない!」
いくらバスタオルを巻いたままといえど、結構いっぱいいっぱいなんですよ。私は。
「意味ないだろーが」
司は私の方へ寄って来る。逃げ場はあるわけない。
司はそのまま、頭にタオル巻いてどスッピンの間抜けな私の顔をじっと見ていた。
「何よ?」
「いや?かわいいなーと思って」
……何か……今……空耳聞こえた?誰が一体そんな事言うの?まさかと思うけど、目の前の人?そんなはず……ないでしょ。
驚きすぎて目を丸くしている私の顔を見て、司はふっと息を漏らして笑った。
「なんつー顔してんだよ」
そう言って、優しいキスを私に落とした。
浴槽の縁に腰掛けた私は、何故か今、司に髪の毛を洗われていた。
『一緒に入るか』と言われ、盛大に拒否したけど、「まーいーだろー?」何て調子でバスルームの前まで連れて行かれた。
そして、司は当たり前のように自分のシャツのボタンを外すと、何か言いたげにこちらを見ていた。
「……脱がねーの?」
「だから無理って言ってるでしょ!!」
だいたい私は、誰かと一緒にお風呂に入るなんて、元カレでさえした事はない。すでに全身見ているとはいえ、こんな明るいところで裸になる度胸はない。
「一緒じゃないとシャワー浴びさせないで、このままここで抱くけど?」
そう言いながらにじり寄る司に、精一杯の折衷案を提案した結果、何とか受け入れられて今に至る。
とりあえず、タオルを巻く事。
「しゃーねえなぁ」
何て言いながら、ちゃんと私にバスタオルを持って来てくれて、私は嫌々ながらもそれを巻いてバスルームに入った。
後から入って来た司はいきなりの全裸で、「あんたも隠してよ!!」とバスルームにあったフェイスタオルを投げつける。
「はぁ?面倒くせぇ」と言いながらも、司はちゃんと腰にタオルを巻いてくれた。
で、どうするのかと思っていたら、
「ほら、そこに座れよ」
なんてバスタブを指差す。
「なんで?」
と聞き返して振り返ると、すでにシャワーのノズルを持って司は超絶笑顔を見せていた。
「髪の毛洗ってやるよ」
何か……気持ち悪いくらいに嬉しそうに笑ってて逆に怖い。
逆らわないのが得策だと、私はそれに従った。
でも、人に髪の毛洗って貰うのって、なんでこんなに気持ちいいんだろう……。
意外と上手で、私はちょっとうっとりしながら尋ねた。
「ねぇ。いっつもこんな事やってるの?」
「あー?そういや、希海が子供の頃やってやった以来かもな」
何て返事と、シャカシャカ言う泡の音がバスルームに響いた。
私は親戚の子供扱いかっ!どういう事よ一体。
相変わらず司が何を考えてるのかさっぱり分からないまま、ご丁寧にトリートメントまでしてくれて、ようやくなんだかよく分からないこの時間は終わった。
頭にタオルを巻いていると、司は「ほら、化粧も落とすだろ?」なんて言ってアメニティのクレンジングを手渡してきた。
さすが高級ホテル。それなりにいいブランドのものだ。
何か気味が悪い……。ほんと不気味。
この見返りが一体何なのか。考えただけでも震える。戸惑っている私を他所に、司はバスタブに張っていたお湯に浸かっていた。
「早く顔洗えよ。待ってんだから」
「待たなくてもいいし、化粧落とした顔見て驚かないでよね!」
「大体想像つくから驚かねーよ」
悪かったわね!単純な顔で!
少々乱暴にクレンジングを開けて、多分ドロドロになっているだろう化粧を落とす。
あー……帰る時はスッピンかぁ……。さすがに化粧もう一回するの面倒。
なんて考える。
朝までなんて一緒にいてやらないんだから。
顔まで洗って、さて後は身体を洗うのみ……なんだけど、この人一体いつまでここにいるんだろうか。
「ねえ。まだ出ないの?身体そろそろ洗いたいんだけど」
そう言って振り返ると、司は広いバスタブの中から身体を乗り出し私の手を引いた。
「その前に一緒に浸かろうぜ」
「何でよ⁈」
「俺がそうしたいからに決まってるだろ」
当たり前かのように言って私の手を引っ張る。
さっきにも増して満面の笑みを讃えていて、私はもう諦めて足を入れた。
「おい。だから何でそっちだよ」
司の反対側にもたれるように座ると司につかさず突っ込まれる。
「いっ、いいじゃない!」
いくらバスタオルを巻いたままといえど、結構いっぱいいっぱいなんですよ。私は。
「意味ないだろーが」
司は私の方へ寄って来る。逃げ場はあるわけない。
司はそのまま、頭にタオル巻いてどスッピンの間抜けな私の顔をじっと見ていた。
「何よ?」
「いや?かわいいなーと思って」
……何か……今……空耳聞こえた?誰が一体そんな事言うの?まさかと思うけど、目の前の人?そんなはず……ないでしょ。
驚きすぎて目を丸くしている私の顔を見て、司はふっと息を漏らして笑った。
「なんつー顔してんだよ」
そう言って、優しいキスを私に落とした。
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