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その場にあった雑誌に一通り目を通していると、コンビニの袋に入れてあったスマホが震えた。
手にして画面を確認すると、メッセージが入っていた。
夕実ちゃんだあ!
相手は大学時代からの親友の、村井夕実だった。大学入学後、すぐに意気投合し、今でも交流があるのは彼女くらいだ。
『来月時間取れそう。12日どう?』
定期的な2人だけの女子会のお誘い。
夕実ちゃんは幼なじみの旦那様がいて、5歳になる女の子のお母さんでもある。
それでも、ここから一駅先にある大きな会社の秘書室長をしている格好いい自慢の友人だ。
12日……何かあったような……。
ふと考えて、あ、そうだと思い出す。
長門さんが橋本さんの撮影をする日だ。でも、その日は同行不要と言われたし、だいたい私がいてもなんの役にも立たないのだから、行ってもしょうがない。
『OK~!時間と場所はいつものところでね!楽しみにしてまーす♪』
と返事を返した。
さて、仕事に戻りますか。
私は立ち上がり大きく伸びをすると、休憩室を後にした。
また自席に戻り、仕事の続きに入る。
すでに新着メールの数に溜息が出そうだが、とりあえずは午前中の残りを片付ける事にした。
夕実ちゃんに会えるのを楽しみに乗り越えよう!
そう奮起して、キーボードを叩き始めた。
やっと、メールを送る準備だけ済ませて、新着メールを確認する。行き違いがないか確認するためだ。その中に、長門さんからのメールがあり、恐る恐る開けてみる。
私が送るメールは、だいたいがアンケートのような形式になっていて、それに返事を書き込み送り返せばいいようになっている。
大抵の人はそれでも頭に『お疲れ様です』とか『いつもお世話になっています』とか、たまに『今度飲みに行きませんか?』とかあり、もちろん最後のはスルーするのだが、長門さんのメールには全くそれがない。ザ用件のみだった。
挨拶もできないの⁈とイラッとするが、別に文面で上辺だけの挨拶も謝罪もして欲しい訳ではない。
それに……絶対自分が悪いとか思わなさそうだし!
私はそんな事を考えながら、メールを手直しすると送信のボタンを押した。
今年も残すところ半分になった7月。
本当に、年を重ねるほど早く感じるのは何故だろう。
相変わらずな毎日で、ひたすら仕事に明け暮れていたら、もうそんな季節だ。
あれから、長門さんからはなんの音沙汰もない。いや、ちゃんと仕事の連絡はある。
けれどそれ以外は何もない。
そうそうに飽きたのか、それとも新しい女でも見つけたのか……。私には関係のないことだ。
とは言え、今日の橋本さんの撮影の前はさすがにソワソワしていた。
また社長に呼び出されるんじゃないかと、今日の朝まで落ち着かなかったけど、呼ばれる事もなく定時を迎えた。
そして、違う意味でソワソワしていた私は、終業と共に更衣室へ走る。
持って来たノースリーブのアイボリーのセットアップに着替え、化粧も女子会モードに可愛く変える。髪の毛を下ろして、ミストで少し癖を取ると、纏めていた跡を活かして緩く一つに結んだ。もちろん伊達眼鏡など必要ない。
よし!完了!
更衣室にある鏡で全身を確認すると、鞄を持って部屋を後にした。
梅雨明け間近の晴れ間。
昼間は結構降っていたからどうしようかと思ったが、もうすっかり上がり青空が見えている。
夕実ちゃんとは、お互いの職場のだいたい真ん中辺りにあるコンビニ前でいつも待ち合わせをしている。
入る店も毎回適当で、まだ店が混み合う前で2人ということもあり、大抵すんなり決まる。
今日ももうすぐ待ち合わせ場所、と言うところで前から夕実ちゃんが歩いてくるのが見えた。
「瑤子~!」
向こうも気付いて手を振っている。
落ち合うと、2人できゃあきゃあ言いながら抱き合った。
周りの冷たい視線など気にしない。女はいくつになっても女子なのだ。
「すぐそこにハッピーアワー8時までやってる店あったよ」
「おお!いいねえ。行こう行こう!」
私ははしゃぎながら夕実ちゃんの腕を取り歩き出した。
手にして画面を確認すると、メッセージが入っていた。
夕実ちゃんだあ!
相手は大学時代からの親友の、村井夕実だった。大学入学後、すぐに意気投合し、今でも交流があるのは彼女くらいだ。
『来月時間取れそう。12日どう?』
定期的な2人だけの女子会のお誘い。
夕実ちゃんは幼なじみの旦那様がいて、5歳になる女の子のお母さんでもある。
それでも、ここから一駅先にある大きな会社の秘書室長をしている格好いい自慢の友人だ。
12日……何かあったような……。
ふと考えて、あ、そうだと思い出す。
長門さんが橋本さんの撮影をする日だ。でも、その日は同行不要と言われたし、だいたい私がいてもなんの役にも立たないのだから、行ってもしょうがない。
『OK~!時間と場所はいつものところでね!楽しみにしてまーす♪』
と返事を返した。
さて、仕事に戻りますか。
私は立ち上がり大きく伸びをすると、休憩室を後にした。
また自席に戻り、仕事の続きに入る。
すでに新着メールの数に溜息が出そうだが、とりあえずは午前中の残りを片付ける事にした。
夕実ちゃんに会えるのを楽しみに乗り越えよう!
そう奮起して、キーボードを叩き始めた。
やっと、メールを送る準備だけ済ませて、新着メールを確認する。行き違いがないか確認するためだ。その中に、長門さんからのメールがあり、恐る恐る開けてみる。
私が送るメールは、だいたいがアンケートのような形式になっていて、それに返事を書き込み送り返せばいいようになっている。
大抵の人はそれでも頭に『お疲れ様です』とか『いつもお世話になっています』とか、たまに『今度飲みに行きませんか?』とかあり、もちろん最後のはスルーするのだが、長門さんのメールには全くそれがない。ザ用件のみだった。
挨拶もできないの⁈とイラッとするが、別に文面で上辺だけの挨拶も謝罪もして欲しい訳ではない。
それに……絶対自分が悪いとか思わなさそうだし!
私はそんな事を考えながら、メールを手直しすると送信のボタンを押した。
今年も残すところ半分になった7月。
本当に、年を重ねるほど早く感じるのは何故だろう。
相変わらずな毎日で、ひたすら仕事に明け暮れていたら、もうそんな季節だ。
あれから、長門さんからはなんの音沙汰もない。いや、ちゃんと仕事の連絡はある。
けれどそれ以外は何もない。
そうそうに飽きたのか、それとも新しい女でも見つけたのか……。私には関係のないことだ。
とは言え、今日の橋本さんの撮影の前はさすがにソワソワしていた。
また社長に呼び出されるんじゃないかと、今日の朝まで落ち着かなかったけど、呼ばれる事もなく定時を迎えた。
そして、違う意味でソワソワしていた私は、終業と共に更衣室へ走る。
持って来たノースリーブのアイボリーのセットアップに着替え、化粧も女子会モードに可愛く変える。髪の毛を下ろして、ミストで少し癖を取ると、纏めていた跡を活かして緩く一つに結んだ。もちろん伊達眼鏡など必要ない。
よし!完了!
更衣室にある鏡で全身を確認すると、鞄を持って部屋を後にした。
梅雨明け間近の晴れ間。
昼間は結構降っていたからどうしようかと思ったが、もうすっかり上がり青空が見えている。
夕実ちゃんとは、お互いの職場のだいたい真ん中辺りにあるコンビニ前でいつも待ち合わせをしている。
入る店も毎回適当で、まだ店が混み合う前で2人ということもあり、大抵すんなり決まる。
今日ももうすぐ待ち合わせ場所、と言うところで前から夕実ちゃんが歩いてくるのが見えた。
「瑤子~!」
向こうも気付いて手を振っている。
落ち合うと、2人できゃあきゃあ言いながら抱き合った。
周りの冷たい視線など気にしない。女はいくつになっても女子なのだ。
「すぐそこにハッピーアワー8時までやってる店あったよ」
「おお!いいねえ。行こう行こう!」
私ははしゃぎながら夕実ちゃんの腕を取り歩き出した。
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