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「駐禁取られたらお前に金払わす」と、社長への挨拶もそこそこに引きずられるように外へ出ると、出てすぐのところに停められていた車に乗るよう促される。
真っ白な左ハンドルのスポーツカー。あまりにもらしくて嫌味にすら取れる。
「ほら、早く乗れよ」
ジトっと長門さんを見ていると、何やってんだと言うようにそう言われた。
ここまで来たら乗るしかないよね……。同じ場所に行くんだから。
仕方なく諦めて車に乗る。もちろん助手席になんて乗ってやらない。後部座席のドアを開けると運転席の後ろに乗り込んだ。
「なんでそっちだよ」
長門さんは呆れたように言うと運転席に乗り込んだ。
シートベルトをすると、早速私はタブレットを取り出して電源を入れる。
「おい、飯まだだろ?何する?」
「現場近くの立ち食い蕎麦で」
「はぁ?俺がそんなところ行くわけないだろ」
「えぇ。だから、私はそれで結構ですので長門さんはお一人でお好きな場所へどうぞ」
画面に視線を落としたまま、私はそう答えた。一回寝たくらいで隙なんかみせてたまるか。
「へいへい」
何故か大人しくそう返事をした長門さんは車のエンジンをかけ発進させた。
しばらくするとカーステレオから勇ましい曲が流れてきた。どこかで聴いた事あるような、ないような。某SF大作映画の曲に似ている気もする。
私は曲が気になりながらもメールの確認に勤しんだ。
現場に着いたらこんな事もしていられない。せっかくのこの状況、上手く使わせて貰おう。なんせ、スケジュールを確認する相手は目の前にいるのだ。
「長門さん、◯◯社からの依頼いつ入れますか?」
「あー…あれね。11月は?」
「では2週目で返事をします。X X出版の案件どうしますか?」
「断っといてー」
「承知しました」
そうやって確認しているといつもの半分の時間で処理が進み、気持ちがスッキリする。そりゃそうだ。いつもなら前にいる人にまずお伺いの連絡をしてから相手に連絡を入れるのに、今はそのタイムラグがない。
同行めんどくさ……と思っていたが意外とメリットもあった。
「終わったぁ!」
今ある案件を一通り拐うと私は顔をあげ大きく伸びをした。さすがに揺れる車の中でずっと下を向きっぱなしでいたから首が痛い。
首をゴキゴキ回していると、耳馴染みのある曲が流れてきた。
あれだ、あれ……そう、
「木星だ!」
ようやく思い出した曲名が口をついて出た。
ずっと流れていたのはクラシックだったのか。何か意外……。と思ったが、じゃあ何を聴いてそうかと言うと何も思い浮かばない。さすがに若い女性アイドルなんて聴いてるところすら想像出来ない。
「知ってるのか?」
「有名ですよね、この曲。にしてもクラシックなんて聴くんですね」
「子供の頃そんなのしか聴かされなかったからな。まぁ染み付いててそれ以外聴く気になれないだけだ」
この人、お坊ちゃん育ちなんだろうか?
芸能人じゃあるまいし、流石にどんな家庭で育ったかなんて噂は流れて来ない。女癖の悪さはバンバン流れてくるけれど。
「それにしても、現場にはまだ着かないんですか?」
私はタブレットをバッグにしまいながら尋ねる。
電車の所要時間は調べていたが、さすがに車は調べていなかった。
もう30分程は走っているはずだ。普段車に乗らない分、今どこに居るのか全く分からない。
「あぁ。もうすぐだ」
本当にすぐだったようで、ほんの数分走るとウインカーを出す音が聞こえて、ゆっくりと小さなビルの駐車場に入った。
一階が駐車場になっていて、何台か止まっている。
長門さんは奥まったスペースに駐車するとエンジンを切った。
車から降り辺りを見るが、なんか古そうで驚いた。
もっとこう、オシャレ~な感じのところで撮影するのかと思ってた。
キョロキョロしていると、長門さんは私の前に立ち塞がるように立つ。
「じゃ、行こうか」
何故か凄く不気味に笑いながら私の手を取り歩き出した。
真っ白な左ハンドルのスポーツカー。あまりにもらしくて嫌味にすら取れる。
「ほら、早く乗れよ」
ジトっと長門さんを見ていると、何やってんだと言うようにそう言われた。
ここまで来たら乗るしかないよね……。同じ場所に行くんだから。
仕方なく諦めて車に乗る。もちろん助手席になんて乗ってやらない。後部座席のドアを開けると運転席の後ろに乗り込んだ。
「なんでそっちだよ」
長門さんは呆れたように言うと運転席に乗り込んだ。
シートベルトをすると、早速私はタブレットを取り出して電源を入れる。
「おい、飯まだだろ?何する?」
「現場近くの立ち食い蕎麦で」
「はぁ?俺がそんなところ行くわけないだろ」
「えぇ。だから、私はそれで結構ですので長門さんはお一人でお好きな場所へどうぞ」
画面に視線を落としたまま、私はそう答えた。一回寝たくらいで隙なんかみせてたまるか。
「へいへい」
何故か大人しくそう返事をした長門さんは車のエンジンをかけ発進させた。
しばらくするとカーステレオから勇ましい曲が流れてきた。どこかで聴いた事あるような、ないような。某SF大作映画の曲に似ている気もする。
私は曲が気になりながらもメールの確認に勤しんだ。
現場に着いたらこんな事もしていられない。せっかくのこの状況、上手く使わせて貰おう。なんせ、スケジュールを確認する相手は目の前にいるのだ。
「長門さん、◯◯社からの依頼いつ入れますか?」
「あー…あれね。11月は?」
「では2週目で返事をします。X X出版の案件どうしますか?」
「断っといてー」
「承知しました」
そうやって確認しているといつもの半分の時間で処理が進み、気持ちがスッキリする。そりゃそうだ。いつもなら前にいる人にまずお伺いの連絡をしてから相手に連絡を入れるのに、今はそのタイムラグがない。
同行めんどくさ……と思っていたが意外とメリットもあった。
「終わったぁ!」
今ある案件を一通り拐うと私は顔をあげ大きく伸びをした。さすがに揺れる車の中でずっと下を向きっぱなしでいたから首が痛い。
首をゴキゴキ回していると、耳馴染みのある曲が流れてきた。
あれだ、あれ……そう、
「木星だ!」
ようやく思い出した曲名が口をついて出た。
ずっと流れていたのはクラシックだったのか。何か意外……。と思ったが、じゃあ何を聴いてそうかと言うと何も思い浮かばない。さすがに若い女性アイドルなんて聴いてるところすら想像出来ない。
「知ってるのか?」
「有名ですよね、この曲。にしてもクラシックなんて聴くんですね」
「子供の頃そんなのしか聴かされなかったからな。まぁ染み付いててそれ以外聴く気になれないだけだ」
この人、お坊ちゃん育ちなんだろうか?
芸能人じゃあるまいし、流石にどんな家庭で育ったかなんて噂は流れて来ない。女癖の悪さはバンバン流れてくるけれど。
「それにしても、現場にはまだ着かないんですか?」
私はタブレットをバッグにしまいながら尋ねる。
電車の所要時間は調べていたが、さすがに車は調べていなかった。
もう30分程は走っているはずだ。普段車に乗らない分、今どこに居るのか全く分からない。
「あぁ。もうすぐだ」
本当にすぐだったようで、ほんの数分走るとウインカーを出す音が聞こえて、ゆっくりと小さなビルの駐車場に入った。
一階が駐車場になっていて、何台か止まっている。
長門さんは奥まったスペースに駐車するとエンジンを切った。
車から降り辺りを見るが、なんか古そうで驚いた。
もっとこう、オシャレ~な感じのところで撮影するのかと思ってた。
キョロキョロしていると、長門さんは私の前に立ち塞がるように立つ。
「じゃ、行こうか」
何故か凄く不気味に笑いながら私の手を取り歩き出した。
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