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1.いざ煌めく世界へ
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夢にまで見た都会生活の新居は、タワーマンションの32階。広い広いリビングから見下ろすと、そこにはミニチュアの世界が広がっていた。
「うわぁ……。人が……」
そこまで言うと、隣にいたふう君に「ゴミのようだ、とか言うなよ?」と笑いながら言われる。
「言わないよ! さすがに。でも、車がミニカーみたい」
「それ、俺も最初思った」
眼下に広がる景色は、本当に別の空間のように見える。これから毎日この景色を見るのか、と思うとなんか不思議な気分だ。
「与織子。荷物はいいのか?」
部屋に荷物を運んでくれたいっちゃんがリビングへやって来ると私にそう言う。
「ありがとう。すぐにいるものは1つに纏めてあるから大丈夫だよ?」
「手伝うことあれば言えよ?」
そう言うといっちゃんは、そばにあった家族全員座れそうな大きな革張りのソファに置いてあった紙袋を手にした。
「与織子。これは俺からの就職祝い」
「ありがとういっちゃん。でも前にも貰ったよ?」
大きめだけどそうマチのない紙袋を受け取りながら私はそう答える。
「あれは内定祝い。今回は就職祝いな」
「あっ! 兄貴抜け駆け!」
そう言うと今度はふう君が同じように、紙袋を差し出してきた。今度は小さいけどマチが広いものだ。
「ふう君も? ありがとう。嬉しい」
そう言って受け取っていると、奥からみー君の叫ぶ声が聞こえた。
「兄ちゃん達ずるい! 与織ちゃん! 僕からもあるからねー!」
どうしてこうも私の兄達はこんなにも私を甘やかすのか……。唯一の女の子だからなんだろうか?と思いながら、私はニコニコ私を見ている兄達の顔を見上げていた。
「はい。与織ちゃん、できたよ~」
そう言ってみー君は肩にかけたケープ代わりのタオルを外す。
「わぁ! 可愛い! ありがとう、みー君。また腕上げた?」
自分の部屋に置いてくれてあったドレッサーの前で、サイドを確認するように首を振りながら私は言う。
みー君は私の平凡なボブヘアの両サイドを編み込んでヘアアレンジしてくれたのだ。
「与織ちゃんに喜んで貰いたくて練習したんだよね」
そう言ってふんわりと笑みを見せるその顔はお母さん似だ。髪の毛はどちらかと言えばブラウン系で細くてふわっとしている。
兄弟の中でお母さん似なのはふう君とみー君といっくん。私といっちゃん、りっちゃんはお父さん似の黒髪で硬め。
それでもいっちゃんとりっちゃんは、切長の目に整った他のパーツも相まってザ日本男児って感じの涼しげな雰囲気。けど私はと言うと、一歩間違うと市松人形にしか見えないのが残念だ。
でも、今はなんとか見られる格好のはずだ。
着ているのはいっちゃんにプレゼントされたばかりのコーラルピンクのワンピース。そしてみー君がくれたメイクパレットでお化粧をして、靴はふう君からのベージュのストラップ付きのパンプス。
兄達のおかげで、きっとこの、スーツでばっちり決めた、眩いほど輝く3人と一緒にいても浮かないはずだ。
たぶん……
それからしばらくは、とにかくこれでもか!と言うくらいに遊んだし、兄弟たちも友だちも時間を見つけては遊んでくれた。
初日の星の付くレストランでのディナーに始まり、テーマパークへ行ったり、カフェでまったりお茶したり。
働きだしたら、もう来ないかも知れない自由な時間を、私はとにかく満喫したのだった。
そして、やってきたこの日。
「与織ちゃーん! 用意できた?」
部屋の扉から顔を覗かせたみー君にそう声をかけられ振り返る。
「うん。できたよ? どうかな?」
そう言って私は、黒のリクルートスーツを着た姿を見せた。
「……。むちゃくちゃ無難……だね」
唖然とした顔でそう言うみー君に、「だって入社式だよ?」と私は答えた。
4月1日。今日私はとうとう社会人デビューを果たす。と言っても今日は金曜日で、一日行けばまた休みなんだけど。
「まあ……いいか。あんまり悪目立ちするのも良くないしね。来週からは服装自由だし、コーデさせて?」
そう言うみー君は、濃紺の柔らかそうなジャケットの下は薄手のニット。そしてベージュのチノパン。社会人はみんなスーツを着て仕事に行くものだと思ってた私から見たら、かなりラフな格好に見える。
「にしても、与織ちゃんの職場が同じビルで良かった。これから毎日一緒に通勤しようね?」
みー君はそう言ってにっこり笑った。
「うわぁ……。人が……」
そこまで言うと、隣にいたふう君に「ゴミのようだ、とか言うなよ?」と笑いながら言われる。
「言わないよ! さすがに。でも、車がミニカーみたい」
「それ、俺も最初思った」
眼下に広がる景色は、本当に別の空間のように見える。これから毎日この景色を見るのか、と思うとなんか不思議な気分だ。
「与織子。荷物はいいのか?」
部屋に荷物を運んでくれたいっちゃんがリビングへやって来ると私にそう言う。
「ありがとう。すぐにいるものは1つに纏めてあるから大丈夫だよ?」
「手伝うことあれば言えよ?」
そう言うといっちゃんは、そばにあった家族全員座れそうな大きな革張りのソファに置いてあった紙袋を手にした。
「与織子。これは俺からの就職祝い」
「ありがとういっちゃん。でも前にも貰ったよ?」
大きめだけどそうマチのない紙袋を受け取りながら私はそう答える。
「あれは内定祝い。今回は就職祝いな」
「あっ! 兄貴抜け駆け!」
そう言うと今度はふう君が同じように、紙袋を差し出してきた。今度は小さいけどマチが広いものだ。
「ふう君も? ありがとう。嬉しい」
そう言って受け取っていると、奥からみー君の叫ぶ声が聞こえた。
「兄ちゃん達ずるい! 与織ちゃん! 僕からもあるからねー!」
どうしてこうも私の兄達はこんなにも私を甘やかすのか……。唯一の女の子だからなんだろうか?と思いながら、私はニコニコ私を見ている兄達の顔を見上げていた。
「はい。与織ちゃん、できたよ~」
そう言ってみー君は肩にかけたケープ代わりのタオルを外す。
「わぁ! 可愛い! ありがとう、みー君。また腕上げた?」
自分の部屋に置いてくれてあったドレッサーの前で、サイドを確認するように首を振りながら私は言う。
みー君は私の平凡なボブヘアの両サイドを編み込んでヘアアレンジしてくれたのだ。
「与織ちゃんに喜んで貰いたくて練習したんだよね」
そう言ってふんわりと笑みを見せるその顔はお母さん似だ。髪の毛はどちらかと言えばブラウン系で細くてふわっとしている。
兄弟の中でお母さん似なのはふう君とみー君といっくん。私といっちゃん、りっちゃんはお父さん似の黒髪で硬め。
それでもいっちゃんとりっちゃんは、切長の目に整った他のパーツも相まってザ日本男児って感じの涼しげな雰囲気。けど私はと言うと、一歩間違うと市松人形にしか見えないのが残念だ。
でも、今はなんとか見られる格好のはずだ。
着ているのはいっちゃんにプレゼントされたばかりのコーラルピンクのワンピース。そしてみー君がくれたメイクパレットでお化粧をして、靴はふう君からのベージュのストラップ付きのパンプス。
兄達のおかげで、きっとこの、スーツでばっちり決めた、眩いほど輝く3人と一緒にいても浮かないはずだ。
たぶん……
それからしばらくは、とにかくこれでもか!と言うくらいに遊んだし、兄弟たちも友だちも時間を見つけては遊んでくれた。
初日の星の付くレストランでのディナーに始まり、テーマパークへ行ったり、カフェでまったりお茶したり。
働きだしたら、もう来ないかも知れない自由な時間を、私はとにかく満喫したのだった。
そして、やってきたこの日。
「与織ちゃーん! 用意できた?」
部屋の扉から顔を覗かせたみー君にそう声をかけられ振り返る。
「うん。できたよ? どうかな?」
そう言って私は、黒のリクルートスーツを着た姿を見せた。
「……。むちゃくちゃ無難……だね」
唖然とした顔でそう言うみー君に、「だって入社式だよ?」と私は答えた。
4月1日。今日私はとうとう社会人デビューを果たす。と言っても今日は金曜日で、一日行けばまた休みなんだけど。
「まあ……いいか。あんまり悪目立ちするのも良くないしね。来週からは服装自由だし、コーデさせて?」
そう言うみー君は、濃紺の柔らかそうなジャケットの下は薄手のニット。そしてベージュのチノパン。社会人はみんなスーツを着て仕事に行くものだと思ってた私から見たら、かなりラフな格好に見える。
「にしても、与織ちゃんの職場が同じビルで良かった。これから毎日一緒に通勤しようね?」
みー君はそう言ってにっこり笑った。
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