俺様カメラマンは私を捉えて離さない

玖羽 望月

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 まるで初めてのように、唇に軽く触れるだけのキス。けれどしばらくすると、唇をねっとりと吸われ始めた。でもそれだけだ。

(……もどかしい……かも……)

 この人なら、最初から蹂躙するような荒々しいキスをしてくるのだと思った。音を立ててはいるものの、未だにただ唇に触れるだけのキスを繰り返され、ようやく私は気がついた。

(わざと……だ)

 徐々に広がって行く甘い痺れが背中を伝い、私の体を熱くする。もっと欲しい。だんだんとその欲望が湧き上がっていく。けれど、それ以上は与えてくれない。私から求めない限り。
 唇が離れると勝ち誇ったような顔で覗き込まれ、意地の悪い笑みを浮かべられた。

「場所、移動するか」

 長門さんは立ち上がると、座ったままの私の膝裏に手を差し入れた。

「えっ?」
「捕まっとけよ。落ちんぞ? にしても、お前。想像以上に軽いな」

 抱え上げられた私は思わずその首にしがみつく。平均身長より少し高めの、一六二センチある私は、軽いと言ってもそれなりにあるはずだ。けれど、言葉の通り軽々と私をベッドに運ぶとそこに下ろした。そのあと長門さんは上着を脱ぐと、ばさりと放り投げていた。

「やっ……。待っ、て……」

 まだ覚悟はできていない。全く見ず知らずの人なら何も考えずにいられたのに、この人はそうじゃないのだから。

「待てねぇよ」

 シュルリとネクタイの擦れる音がすると、片手で外されたそれも放り出された。
 私を組み敷いたまま、楽しげにも見えるその顔は私に近づく。

「私、やっぱり、知ってる人となんて……」

 顔を背けてそう言うと、可笑しそうに笑う息が私の頰を撫でた。

「顔と名前を知ってるくらいだろ? そんなの知ってるうちに入らねぇだろ」
「で、でも……仕事もやりづらいし……」
「何? 俺が公私混同するとでも思ってんの?」

 耳元で囁かれ、その息遣いだけで体が反応してしまう。
 顔を顰めながら「それは……」と言葉を濁すと、その舌がざらりと耳の縁をなぞった。

「んっ……」

 身を捩ると、一層楽しそうな笑い声が漏れた。

「しねぇよ。してたらキリがねぇ。そもそもするつもりもねぇし」

 今度は首筋に唇で触れ、時々舌が這う。

「あっ……。絶対……約束……して」

 吐息を吐き出すようになんとか言葉を絞り出す。

「わかった。じゃあ、見せてもらうぞ? 純情なふりして男を誘うお前の本当の姿を」

 そう言って私を見下ろすその顔は、甘い言葉で人を唆す美しい悪魔のように見えた。

「あっ、やっ……! またっっ‼︎」

 もう数えていられないほど何度も絶頂を迎えた体は、ジュルジュルと卑猥な音に合わせて戦慄いた。
 さっきから、口と指だけでいかされ続け、私はハァハァと荒い息を吐き出していた。そして、未だにその様子を楽しげに見下ろし長門さんは笑みを浮かべていた。

「ここ、すげぇな。そんなに気持ちいいか?」

 ぐちゅりと指を引き抜く余裕綽々な顔。自分ばかりが声を上げさせられ続け、余裕がないのが腹立たしい。

「何だ。まだ足りないのか?」

 そんなはずないとわかっているのに、私を組み伏すように顔を近づけ尋ねる。

「もっ、いいでしょ? そろそろ挿入れたらどうですか? 長門さん」

 顔を背けて怒りを露わにすると、耳元で囁かれる。

「その呼びかたじゃ萎えるんだけど?」

 そう言いながら硬く屹立したものを私のあわいにゆるゆると押し付けた。

「んっ……。じゃ、なんて呼べば……」

 もどかしすぎて腰が揺れる。早く欲しくて、ありえないくらいひくつくのが自分でもわかる。

「それは……自分で考えろ? 瑤子……」

 溢れる蜜を塗りつけるように極浅い部分を擦られる。焦ったいその動きが、余計私に火を付けた。
 悔しいけれど、私の完全な敗北。最初から太刀打ちなんてできなかった。
 私はその首に腕を回すと唇を震わせた。

「お願い……いれ、て……。司……」

 司は、勝ち誇った顔で薄い唇から息を漏らして笑っている。

「上出来。覚悟しろよ?」

 そう言われた瞬間、ずぶりと待ち望んでいたものが私を満たす。

「あ、あああっ‼︎」

 焦れに焦らされ続けたせいで、挿入れられた途端に頭がクラクラするほどの快感が体中を駆け巡った。

「すげっ。いきなり食いちぎられそうだな」

 まだ序盤の、中を探るような動き。それでも一瞬、司は顔を顰めた。

「もっと……。もっと、ちょうだい?」

 焼き切れそうな理性は、本能を剥き出しにし、じわじわと体を侵食していく。
 熱い吐息を漏らし強請る私に煽られるように司は動きを早めた。

「あっ! やっ、ああっ!」

 必死にしがみつく私に、司は嬉々としながら言う。

「気持ち、よさそうだな」

 もう、本能のままにコクコクと頷く。それにニヤリと笑うと、司は穿つように私の奥の奥まで這入ってきた。

(もう、頭がおかしくなりそう……)

 愛情など存在しないこの獣のような行為。ただ、何も考えず体だけが満たされていくことに私は安堵していた。
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