87 / 116
信頼編
第八十六話 宇宙連合と宇宙連盟
しおりを挟む
焔たちは部屋に置いてきた荷物をまとめると、ある場所に集められた。そこはどこか教室に似た雰囲気の場所であった。前にある黒板のようなものには『席に座って待て』とだけ書かれていた。
「いやー、懐かしいなー。再び学校に舞い戻ったような感じだな」
サイモンはあたりを見回しながら、過去のことを思い出していた。
「あたしは学校とか行ったことなかったから、何かすごくドキドキするネ」
「え!? リンリンちゃん学校行ってなかったの?」
「うん。でも、必要なこととかは全部お師匠から教わってたから、特に不便なことはなかったネ」
思わぬ過去を知ったサイモンはそのままリンリンと話し込む。一方、その横ではコーネリアがソラに向かって恥ずかしそうな顔を向け、声を荒げていた。
「な、何をしているの、ソラちゃん!!」
「座っている」
「いや、そうじゃなくて! 何で焔の膝の上に座ってるの!?」
ソラは椅子に座っている焔の上に座っていたのだ。
「そこに焔がいたから」
なぜか、ソラはキメ顔で言った。
「そ、ソラちゃん何を言って……焔! あんたもあんたよ! 何でソラちゃんをそんなところに座らせてんのよ!」
ソラに説得は無理だと悟ったコーネリアは今度は焔に向かって声を上げる。
「いやいや、座らせてなんかないって。勝手にソラが座ってきたんだろ。それに、どかすって言ったって……」
焔はそう言いながら、どこを持ってどかせばいいのかと、手をソラの体の横に持っていき、上下に動かす。その様子を見ていたコーネリアは再び罵声を浴びせる。
「ちょ、あんたどこ触ろうとしてんのよ!」
「お前、理不尽すぎるだろ!」
一方、その騒がしさとは対照的に、静かに後ろの席に座っている茜音はコーネリアの豹変っぷりをまじまじと見ていた。
(嫉妬……ではないよね。コーネリアちゃん、男の子のことどんな風に思ってるんだろ?)
茜音は未だ熱が冷めぬコーネリアに苦笑いを浮かべた。
ウィーン
前のドアが開くと、総督が入ってきた。総督は教壇の前に立つと、咳払いを一回して、
「御機嫌よう諸君! 改めて入隊試験突破おめでとう。今後、君たちの活躍には期待している……とまあ、挨拶はこんなところでそろそろここでのことについて説明したいのだが……ソラ、ちゃんと席に座ってくれないか?」
流石に総督もソラのことが目についたのか、諭すようにソラに問いかける。ソラは少し不満そうな顔をするが、焔にもどくように言われ、隣の席へと移動した。それを確認したコーネリアはホッと胸をなでおろす。
「ハハ、ソラは焔にぞっこんだね」
急に茶化すような声が後ろから聞こえてきた。前の方に固まって座っていた焔たちはすぐにその声の正体を確かめるべく、後ろへ振り返る。すると、そこには見慣れた顔と見覚えのない顔があった。
「シンさん!? いつの間に。それにレオさんも」
焔たちの後ろには何食わぬ顔で教官たち5人が座っていた。
「やあ」
「フッ」
シンは笑顔で小さく手を振り、レオは手を組み、相変わらずの仏頂面だったが、焔に声を掛けられ、少し笑って見せた。
「後ろに座っているやつらは教官たちだ。皆もこの中で1人ずつ面識があると思う。こいつらについても後々話をしておこうと思ったので、今日は呼ばせてもらった」
教官たちが呼ばれたわけを話した総督は早速、本題に取り掛かる。
「教官たちからここの組織についての説明は受けたと思うが、一応、簡単に話させてもらう。うちの組織、アースは主に地球に入り込んだ危険生物を討伐することが目的だ。もちろん、もうすでに住み着いている者たちもいるが、そういうやつらの大半はすでに把握しているし、うまく地球に適応できている。海底人なんかとは互いにコンタクトを取り合い、何か異変が起きれば、すぐに連絡してくれる」
サラっと海底人の存在を暴露した総督に、声には出さないが、明らかに焔たちは動揺する。
(え? けっこうサラっと言っちゃったよ、この人? 海底人はシンさんの話からいるとは思ってたけど、まさか連携してるなんて……すげえ)
地球の大きさを垣間見た焔。総督はすぐに話を続けた。
「まあ、この地球について、我々は全容を理解しているつもりだが、実際の所、我々の知らないうちに地球に入り込み、悪さをするやつも多々見られる」
そこで、何か疑問に思ったのか、茜音はスッと手を伸ばす。
「どうした茜音。何か聞き取れなかったところでもあったか?」
「いえ、ただちょっと気になったので」
「何がだ?」
「その地球外生物ってどうやって地球に来るんですか?」
(確かにー)
焔たちは茜音の質問に心の中で共感していた。だが、そのことに疑問を持ったのは茜音だけだった。総督は少しクスっと笑うと、
「そうだな……まずは、お前らが最もよく知っている宇宙船というやつだろうな」
「宇宙船って……つまるところUFOってことですよね」
「ああ、そうだな」
焔の問いに総督はうなずく。だが、まだ話には続きがあった。
「まあ、地球に来るUFOすべてが悪いやつらではないんだけどな」
「ほお、それはどういうことだい?」
サイモンはどう考えても目上の人に対しての言葉づかいではない物言いで、総督に疑問をぶつける。だが、総督はそんなことには気にも留めず、
「昨日言ったと思うが、我々は宇宙連合という組織に所属している」
「それネ! とっても気になってたやつだヨ」
リンリンが興奮気味に食いつく。だが、それはリンリンだけではなく、皆が気になっていたことだった。
「宇宙連合……この宇宙の2大勢力のうちの1つだ」
「2大勢力……」
このコーネリアの呟きに総督は更に説明を付けたす。
「ああ、2大勢力だ。宇宙連合、そして宇宙連盟。この2つの組織は宇宙の平和を、秩序を守るために発足されたと言われている。まあ、私たちが生まれる遥か前の前に作られたそうだから、実際のところは知らんが……まあ、私たちの知りうる宇宙では、この2つの組織が主に宇宙においてのトップ勢力だろう」
「あのー……目的が同じなら、どうして2つに分かれているんですか?」
「良い質問だ、茜音」
素直に褒められた茜音は照れ臭そうに頭を掻く。
「さて、宇宙の平和を守るという目的、理念は一緒なのになぜ2つの勢力に分かれているのか……それは、組織の在り方が異なるからだ……宇宙連合、宇宙連盟では加入している惑星数は圧倒的に連合の方が多い。それはなぜか? 理由は2つある」
そう言って、総督は2本の指を立てた。
「1つ、宇宙連合は加入した惑星にあまり介入しない。お前たちは宇宙人が地球にやってきて、そいつらが我が物顔で町にはびこっていたらどう思う? 嫌じゃないか?」
「うーん、確かに怖いネ」
「あまりいい光景ではないわね」
リンリン、コーネリアはその様子を想像し、苦言を呈した。それは他の者たちも同様の意見だった。
「だろう……だから、宇宙連合は例え加入したとしても、その惑星にあまり介入しない。それが連合に入りやすいメリットの1つだ。まあ、加入した惑星は定期的に視察に来られるんだが、それぐらいは許容しないとな。後、介入しないとは言っても、その惑星が許可を出せば、他の惑星から宇宙人がやってくることはできるし、逆に他の惑星に行くこともできる。言うなれば、宇宙旅行といった感じか。後は、貿易もすることが出来る。私たちも地球では取ることが出来ない資材なども多いから、よく頼っている」
「へえ」
皆が感嘆の意を示している中、茜音だけは疑問が解けたかのように笑う。
「ということは、地球にも宇宙連合に所属している宇宙人が来るから、地球に来るUFOすべてが悪いやつばかりではないという事なんですね」
「あ、ああ(よく聞いている)。地球、正確には我々の組織を通して、地球は宇宙連合に所属していることになっているからな。我々が許可を出せば、他の惑星からの旅行者が来ることもある。もちろん、我々の監視下でだがな」
一区切りついたのか、総督は控え目に咳ばらいをする。そして、少しの間を置くと、もう一度口を開いた。
「続いては2つ目、これは宇宙連盟の方の話なんだが、連盟は加入した惑星は自身の管轄下に置く。つまりは、ほぼ支配状態にすると言っていい。自分たちが培ってきた技術、持っている資源などを提供、汚く言えば、奪われてしまう」
「えー、それは皆入りたがらないネ」
「ああ……だが、悪いことばかりではない。加入した惑星は外部からの攻撃を受けても連盟の軍が各惑星を守っているため、侵略などをされる恐れがないらしい」
その曖昧な表現に焔は引っかかる。
「らしい……というのはどういうことですか?」
「……らしい、この表現を使ったのは連盟はそう主張しているが、実際に連合はこれを確認したことがないからだ。宇宙連盟所属の惑星は警備が厳重でな。少しでも近づこうものなら、容赦なく攻撃してくる。だから、所属した惑星が今どうなっているかは我々にもわからない。だから、『らしい』という言葉を使わせてもらった」
「なるほど……何か胡散臭い組織ですね。まるで、中を覗かれるのを嫌がっているようにしか見えませんね」
「まあ、そうなんだが、実際に戦果を挙げているから、あまり口答えはできんのだよ」
「戦果?」
「宇宙は広い。ゆえに我々のような正義の組織だけでなく、悪の組織も当然存在する。その中でも最も危険視されているのが、『風来坊』という組織だ」
「風来坊? なんか弱そうですね」
「何だ、焔? そんなに私のネーミングセンスは悪かったか?」
「風来坊……何とも言えない威圧感がありますね」
さっきまでの適当そうな口調とは一変、焔は真剣な目つきで総督の話に相槌を打つ。すると、後ろから複数の忍び笑いが聞こえてきた。その中にはシンの笑い声も入っており、焔は少しいらだった。
「フッ、まあいい。で、この風来坊という組織は名前の通り、どこからともなく現れる。そして、突然現れたかと思うと、あたり見境なく星を攻撃し、侵略を図る。そして、この侵略の手を最も多く防いでいるのが、宇宙連盟だ。こうして、宇宙連盟は確かに戦果を挙げ、宇宙の平穏を守っているため、私たちもあちらのやり方にはあまり口答えはできんのだよ」
宇宙連盟、組織の在り方には少々疑問を感じる節があるが、実際に平和を守っているため、焔たちも納得せざるを得なかった。
「簡単に言えば、宇宙連合は横のつながりで組織の輪を広げ、宇宙連盟は縦のつながりで組織を縛り上げ、宇宙の平穏をそれぞれのやり方で保っているということだ。まあ、この先2つの組織がどうなるかはわからんが、そのころには私たちはもうあの世だからな。考えるだけ時間の無駄だ」
ここで、総督の話は一区切りついたのだろうか、少しの間が開く。その間にコーネリアが質問を投げかける。
「総督、少しいいでしょうか?」
「かまわん」
「宇宙連合は宇宙連盟よりも強いのでしょうか?」
「……なるほど。確かに、今の話だけを聞いていれば、宇宙連合よりも宇宙連盟の方が軍事力はあるように聞こえるな。だが、宇宙連合も宇宙連盟には負けないぐらいの武力はある……そして、そのトップには、お前らの後ろにいる5人も入っているんだぞ」
は? お前らの後ろ? 5人? おいおいまじかよ……
焔たち6人は恐る恐る後ろを振り向く。当然ながら、そこにはさっき見た光景と同じ光景があった。そう、後ろにいたのはシンを含めた教官たち5人だけだった。
「……マジすか?」
「……ああ、大マジ」
宇宙連合という、いかにも規模がでかい組織の中のトップに、まさか人間が……それも自身を育ててくれた身近な人が入っていることに焔は驚き、引きつり気味の笑顔を見せる。だが、それとは対照的に師はいつも通りの変わらぬ笑顔を見せるのだった。
「いやー、懐かしいなー。再び学校に舞い戻ったような感じだな」
サイモンはあたりを見回しながら、過去のことを思い出していた。
「あたしは学校とか行ったことなかったから、何かすごくドキドキするネ」
「え!? リンリンちゃん学校行ってなかったの?」
「うん。でも、必要なこととかは全部お師匠から教わってたから、特に不便なことはなかったネ」
思わぬ過去を知ったサイモンはそのままリンリンと話し込む。一方、その横ではコーネリアがソラに向かって恥ずかしそうな顔を向け、声を荒げていた。
「な、何をしているの、ソラちゃん!!」
「座っている」
「いや、そうじゃなくて! 何で焔の膝の上に座ってるの!?」
ソラは椅子に座っている焔の上に座っていたのだ。
「そこに焔がいたから」
なぜか、ソラはキメ顔で言った。
「そ、ソラちゃん何を言って……焔! あんたもあんたよ! 何でソラちゃんをそんなところに座らせてんのよ!」
ソラに説得は無理だと悟ったコーネリアは今度は焔に向かって声を上げる。
「いやいや、座らせてなんかないって。勝手にソラが座ってきたんだろ。それに、どかすって言ったって……」
焔はそう言いながら、どこを持ってどかせばいいのかと、手をソラの体の横に持っていき、上下に動かす。その様子を見ていたコーネリアは再び罵声を浴びせる。
「ちょ、あんたどこ触ろうとしてんのよ!」
「お前、理不尽すぎるだろ!」
一方、その騒がしさとは対照的に、静かに後ろの席に座っている茜音はコーネリアの豹変っぷりをまじまじと見ていた。
(嫉妬……ではないよね。コーネリアちゃん、男の子のことどんな風に思ってるんだろ?)
茜音は未だ熱が冷めぬコーネリアに苦笑いを浮かべた。
ウィーン
前のドアが開くと、総督が入ってきた。総督は教壇の前に立つと、咳払いを一回して、
「御機嫌よう諸君! 改めて入隊試験突破おめでとう。今後、君たちの活躍には期待している……とまあ、挨拶はこんなところでそろそろここでのことについて説明したいのだが……ソラ、ちゃんと席に座ってくれないか?」
流石に総督もソラのことが目についたのか、諭すようにソラに問いかける。ソラは少し不満そうな顔をするが、焔にもどくように言われ、隣の席へと移動した。それを確認したコーネリアはホッと胸をなでおろす。
「ハハ、ソラは焔にぞっこんだね」
急に茶化すような声が後ろから聞こえてきた。前の方に固まって座っていた焔たちはすぐにその声の正体を確かめるべく、後ろへ振り返る。すると、そこには見慣れた顔と見覚えのない顔があった。
「シンさん!? いつの間に。それにレオさんも」
焔たちの後ろには何食わぬ顔で教官たち5人が座っていた。
「やあ」
「フッ」
シンは笑顔で小さく手を振り、レオは手を組み、相変わらずの仏頂面だったが、焔に声を掛けられ、少し笑って見せた。
「後ろに座っているやつらは教官たちだ。皆もこの中で1人ずつ面識があると思う。こいつらについても後々話をしておこうと思ったので、今日は呼ばせてもらった」
教官たちが呼ばれたわけを話した総督は早速、本題に取り掛かる。
「教官たちからここの組織についての説明は受けたと思うが、一応、簡単に話させてもらう。うちの組織、アースは主に地球に入り込んだ危険生物を討伐することが目的だ。もちろん、もうすでに住み着いている者たちもいるが、そういうやつらの大半はすでに把握しているし、うまく地球に適応できている。海底人なんかとは互いにコンタクトを取り合い、何か異変が起きれば、すぐに連絡してくれる」
サラっと海底人の存在を暴露した総督に、声には出さないが、明らかに焔たちは動揺する。
(え? けっこうサラっと言っちゃったよ、この人? 海底人はシンさんの話からいるとは思ってたけど、まさか連携してるなんて……すげえ)
地球の大きさを垣間見た焔。総督はすぐに話を続けた。
「まあ、この地球について、我々は全容を理解しているつもりだが、実際の所、我々の知らないうちに地球に入り込み、悪さをするやつも多々見られる」
そこで、何か疑問に思ったのか、茜音はスッと手を伸ばす。
「どうした茜音。何か聞き取れなかったところでもあったか?」
「いえ、ただちょっと気になったので」
「何がだ?」
「その地球外生物ってどうやって地球に来るんですか?」
(確かにー)
焔たちは茜音の質問に心の中で共感していた。だが、そのことに疑問を持ったのは茜音だけだった。総督は少しクスっと笑うと、
「そうだな……まずは、お前らが最もよく知っている宇宙船というやつだろうな」
「宇宙船って……つまるところUFOってことですよね」
「ああ、そうだな」
焔の問いに総督はうなずく。だが、まだ話には続きがあった。
「まあ、地球に来るUFOすべてが悪いやつらではないんだけどな」
「ほお、それはどういうことだい?」
サイモンはどう考えても目上の人に対しての言葉づかいではない物言いで、総督に疑問をぶつける。だが、総督はそんなことには気にも留めず、
「昨日言ったと思うが、我々は宇宙連合という組織に所属している」
「それネ! とっても気になってたやつだヨ」
リンリンが興奮気味に食いつく。だが、それはリンリンだけではなく、皆が気になっていたことだった。
「宇宙連合……この宇宙の2大勢力のうちの1つだ」
「2大勢力……」
このコーネリアの呟きに総督は更に説明を付けたす。
「ああ、2大勢力だ。宇宙連合、そして宇宙連盟。この2つの組織は宇宙の平和を、秩序を守るために発足されたと言われている。まあ、私たちが生まれる遥か前の前に作られたそうだから、実際のところは知らんが……まあ、私たちの知りうる宇宙では、この2つの組織が主に宇宙においてのトップ勢力だろう」
「あのー……目的が同じなら、どうして2つに分かれているんですか?」
「良い質問だ、茜音」
素直に褒められた茜音は照れ臭そうに頭を掻く。
「さて、宇宙の平和を守るという目的、理念は一緒なのになぜ2つの勢力に分かれているのか……それは、組織の在り方が異なるからだ……宇宙連合、宇宙連盟では加入している惑星数は圧倒的に連合の方が多い。それはなぜか? 理由は2つある」
そう言って、総督は2本の指を立てた。
「1つ、宇宙連合は加入した惑星にあまり介入しない。お前たちは宇宙人が地球にやってきて、そいつらが我が物顔で町にはびこっていたらどう思う? 嫌じゃないか?」
「うーん、確かに怖いネ」
「あまりいい光景ではないわね」
リンリン、コーネリアはその様子を想像し、苦言を呈した。それは他の者たちも同様の意見だった。
「だろう……だから、宇宙連合は例え加入したとしても、その惑星にあまり介入しない。それが連合に入りやすいメリットの1つだ。まあ、加入した惑星は定期的に視察に来られるんだが、それぐらいは許容しないとな。後、介入しないとは言っても、その惑星が許可を出せば、他の惑星から宇宙人がやってくることはできるし、逆に他の惑星に行くこともできる。言うなれば、宇宙旅行といった感じか。後は、貿易もすることが出来る。私たちも地球では取ることが出来ない資材なども多いから、よく頼っている」
「へえ」
皆が感嘆の意を示している中、茜音だけは疑問が解けたかのように笑う。
「ということは、地球にも宇宙連合に所属している宇宙人が来るから、地球に来るUFOすべてが悪いやつばかりではないという事なんですね」
「あ、ああ(よく聞いている)。地球、正確には我々の組織を通して、地球は宇宙連合に所属していることになっているからな。我々が許可を出せば、他の惑星からの旅行者が来ることもある。もちろん、我々の監視下でだがな」
一区切りついたのか、総督は控え目に咳ばらいをする。そして、少しの間を置くと、もう一度口を開いた。
「続いては2つ目、これは宇宙連盟の方の話なんだが、連盟は加入した惑星は自身の管轄下に置く。つまりは、ほぼ支配状態にすると言っていい。自分たちが培ってきた技術、持っている資源などを提供、汚く言えば、奪われてしまう」
「えー、それは皆入りたがらないネ」
「ああ……だが、悪いことばかりではない。加入した惑星は外部からの攻撃を受けても連盟の軍が各惑星を守っているため、侵略などをされる恐れがないらしい」
その曖昧な表現に焔は引っかかる。
「らしい……というのはどういうことですか?」
「……らしい、この表現を使ったのは連盟はそう主張しているが、実際に連合はこれを確認したことがないからだ。宇宙連盟所属の惑星は警備が厳重でな。少しでも近づこうものなら、容赦なく攻撃してくる。だから、所属した惑星が今どうなっているかは我々にもわからない。だから、『らしい』という言葉を使わせてもらった」
「なるほど……何か胡散臭い組織ですね。まるで、中を覗かれるのを嫌がっているようにしか見えませんね」
「まあ、そうなんだが、実際に戦果を挙げているから、あまり口答えはできんのだよ」
「戦果?」
「宇宙は広い。ゆえに我々のような正義の組織だけでなく、悪の組織も当然存在する。その中でも最も危険視されているのが、『風来坊』という組織だ」
「風来坊? なんか弱そうですね」
「何だ、焔? そんなに私のネーミングセンスは悪かったか?」
「風来坊……何とも言えない威圧感がありますね」
さっきまでの適当そうな口調とは一変、焔は真剣な目つきで総督の話に相槌を打つ。すると、後ろから複数の忍び笑いが聞こえてきた。その中にはシンの笑い声も入っており、焔は少しいらだった。
「フッ、まあいい。で、この風来坊という組織は名前の通り、どこからともなく現れる。そして、突然現れたかと思うと、あたり見境なく星を攻撃し、侵略を図る。そして、この侵略の手を最も多く防いでいるのが、宇宙連盟だ。こうして、宇宙連盟は確かに戦果を挙げ、宇宙の平穏を守っているため、私たちもあちらのやり方にはあまり口答えはできんのだよ」
宇宙連盟、組織の在り方には少々疑問を感じる節があるが、実際に平和を守っているため、焔たちも納得せざるを得なかった。
「簡単に言えば、宇宙連合は横のつながりで組織の輪を広げ、宇宙連盟は縦のつながりで組織を縛り上げ、宇宙の平穏をそれぞれのやり方で保っているということだ。まあ、この先2つの組織がどうなるかはわからんが、そのころには私たちはもうあの世だからな。考えるだけ時間の無駄だ」
ここで、総督の話は一区切りついたのだろうか、少しの間が開く。その間にコーネリアが質問を投げかける。
「総督、少しいいでしょうか?」
「かまわん」
「宇宙連合は宇宙連盟よりも強いのでしょうか?」
「……なるほど。確かに、今の話だけを聞いていれば、宇宙連合よりも宇宙連盟の方が軍事力はあるように聞こえるな。だが、宇宙連合も宇宙連盟には負けないぐらいの武力はある……そして、そのトップには、お前らの後ろにいる5人も入っているんだぞ」
は? お前らの後ろ? 5人? おいおいまじかよ……
焔たち6人は恐る恐る後ろを振り向く。当然ながら、そこにはさっき見た光景と同じ光景があった。そう、後ろにいたのはシンを含めた教官たち5人だけだった。
「……マジすか?」
「……ああ、大マジ」
宇宙連合という、いかにも規模がでかい組織の中のトップに、まさか人間が……それも自身を育ててくれた身近な人が入っていることに焔は驚き、引きつり気味の笑顔を見せる。だが、それとは対照的に師はいつも通りの変わらぬ笑顔を見せるのだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる