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在学編
第四十九話 まさかの事態
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焔は呆れた顔で会長に今日も同じ質問をする。
「何か用ですか会長?」
「焔!! お茶を飲ま―――」
「結構です」
「何でだよー!! いいじゃないか1回ぐらい!!」
焔は大きくため息を吐く。
「はあ……あのねー、放課後は忙しいって何度も言ってるでしょ。そろそろ諦めてくださいよ」
焔にすごまれ、会長はどんどん声が小さくなる。
「えー……1回ぐらいいいじゃん。焔のいけず」
「はあ……別に何か用があるんでしたら行ってもいいんですけど……何か俺が会長とお茶を飲む理由ってあるんですか?」
この焔の問いに会長は目を泳がせ、あたふたしだした。
「い、いや……理由は……特にないけど……ただ一緒にお茶飲んで話したいなー……みたいな……」
そう言って、焔の方に顔を上げるとそこには誰もいなかった。
「焔!?」
廊下の方に振り向くとそこには走り去る焔の姿があった。
「理由がねえならもう行くわ。じゃあな会長」
「待て焔!!」
後を追おうとした会長だったが、無理だと悟り何歩か進んだところで足を止める。その後、下を向いて残念そうな表情を浮かべ、その場で立ち尽くしていた。
そんな会長を教室から覗う3人の姿があった。
「あーあ、また断られちまったな会長」
「でも、何で焔君のことを執拗に誘うんだろ?」
「あー……何でだろうねー絹ちゃん」
明らかに棒読みで言う綾香。そんな綾香をよそに後ろから龍二はその理由を言おうとした。
「そりゃお前会長が焔のことを……」
ここまで言いかけた龍二だったが、綾香からの無言のプレッシャーに言葉がつまる。
「え? 会長が焔君のことを……何?」
そんな綾香の様子なんかまったく気づかず、絹子はその続きを龍二に言わせようとする。
「え? あ、あー、会長が……焔のことを……えー」
「好きだからですよ」
言いあぐねている龍二だったが、まさに龍二と綾香が心の中で思っている言葉が発せられた。
「え? 会長って焔君のこと好きなの……!?」
絹子は龍二に詰め寄る。同様に綾香も龍二に詰め寄る。
「龍二ー!! 何で言っちゃうのよ!!」
「い、いや!! 俺じゃないって!! マジで俺じゃないから!!」
「じゃー誰だって言うのよ」
「そ、それは……」
「僕ですよ」
そう言って、龍二の後ろからひょっこり副会長が顔を出す。
「あれ? 確か副会長だよな。いつの間に俺の後ろに……」
「そんなことよりも焔さんに一度だけでも会長とお茶を飲んで話す時間ってとれませんかね」
「まあ、あいつにもそれなりの理由があるからなー。俺たちじゃどうしようもならないな」
「ハー……そうですか……」
残念そうにため息を漏らす副会長に綾香が踏み込む。
「ていうか、さっき会長が焔のこと好きって言ってたよね」
「はい……」
「それって会長が言ってたの?」
「いえ、別に。でも、あの会長を見てれば誰でもわかりますよ」
「え、分からなかったけど」
「まあまあ、絹ちゃんは別に分からなくてもいいの」
綾香が絹子をなだめ終わると、副会長が生徒会室での会長の様子を話し始めた。
「最近、会長ずっと上の空なんですよ。ずーっとボケーッとしてますし、大好きな茶菓子食べてても何の反応もしませんし、と思ったら何かを思い出してニヤニヤしてますし、もう変なんですよ」
副会長の話を聞き、3人とも考え込む。そして、第一声を発したのは龍二だった。
「なるほどなー……よし分かった!! ダメもとだが、俺からも焔に言っといてやるよ」
「まー、力を貸すのは嫌だけどあの会長の悲しそうな顔も見たくないしね。私も言ってみる」
「私も力を貸すよ」
「……ありがとうございます!!」
深々と頭を下げる副会長の姿に3人に笑みがこぼれる。そんな中、龍二は何かを思い出したように副会長に質問をする。
「そういや、会長って受験生だろ? こんなことしてて大丈夫なのか?」
「あー、それなら大丈夫ですよ。会長は全国模試で10位以内をキープしてますし、毎回A判定しか取りませんから」
「は!?」
龍二は少し協力することに後ろ向きになった。
そんなこんなで翌日の放課後
―――「焔!! お茶を飲ま―――」
「結構です」
その言葉を合図に後ろで待機していた3人が一斉に動き出した。
「いいな!! 予定通り行くぞ!!」
「オッケー!!」
「わかった」
意気揚々と飛び出そうとした3人だったが、焔の話はまだ終わってなかった。
「でも、土曜日だったら空いてるんでその日ならいいですよ」
「え……」
会長、そして後ろの3人同時に同じ反応を取る。
流石の会長もこれは予想してなかったのか、頭が真っ白になり固まってしまった。
「あれ? 会長ー。聞こえてますか?」
「ハッ!! い、いや聞こえてる聞こえてる!! いやー、焔も意外と積極的なんだなって驚いただけだよ!! ハーハッハッハッハ!!」
「え? 別に嫌ならいいですけど」
「嫌じゃない嫌じゃない!!」
「そんじゃ、行先とか予定とかは会長が適当に決めといてください。じゃ、俺はもう行きますね」
走り去る焔の後ろ姿を未だに実感が湧かないような、でも滅茶苦茶嬉しそうな表情で見つめる会長、驚きと焦燥で慌てふためいている綾香、相変わらずの無表情だが、汗を垂れ流している絹子。そして……
(焔てめー……いや、師匠さん!! あんたの差し金だなー!! こっちのことも考えてくれよー!!)
事後処理のことを考えて、涙目になる龍二だった。
土曜日、朝の駅前
―――柱の前にもたれかかり、スマホをいじりながら会長を待っている焔。そんな焔に息を切らしながら1人の少女は駆け寄る。
「ごめん焔、ちょっと遅れちゃった」
「別に大丈夫ですよ。遅れたって言っても本当に1分ぐらいですからね。そんじゃ、取り敢えず駅の中に入りますか」
そう言って、駅の中に入ろうとする焔に会長が一声かける。
「焔!! こ、この服似合ってる?」
会長は白のニットに青色の膝丈まであるスカートをはいていた。ジーっと見てくる焔に会長は少し恥ずかしそうな顔をする。
「可愛いと思いますよ」
その言葉を聞くと、会長は満足そうな顔をして焔をグイグイ駅の中へ引っ張って行った。
電車、バスを経由して2時間弱が経ち、ようやく目的地に到着した。到着した先は遊園地だった。
「会長は俺とお茶を飲みたかったんじゃないですか? なぜ遊園地に……」
「まあまあ堅いことは気にするな!! こっちのほうが楽しいだろ!! ほら行くぞ!!」
引っ張られる焔はめんどくさそうなしぐさを見せるが、実際内心はソワソワしていた。
遊園地……か。ここは小学生の時よく綾香のお父さんに連れてってもらったな。土曜日は休みにするから会長とどこか行ってこい……か。シンさんには感謝だな。
それから焔と会長はドンドン乗り物を制覇していった。この2人全く絶叫系を恐れることがない。会長はむしろ好きなので、ジェットコースターは全て一番前で2人そろって乗っていた。
昼休憩がてら2人はベンチで少し遅めの軽い昼食を取っていた。
「いやー、やっぱり遊園地は楽しいな!!」
「そうですね」
「絶叫系も良かったが、私はコーヒーカップが今のところ一番楽しかったな。焔が全力で回すもんだから周りのやつらはドン引きしてたぞ。あれは本当面白かったな。ハーハッハッハッハ!!」
「いやいやあんたが『会長命令だ。全力で回せ!!』なんて言うからやってあげたんでしょ。あれめっちゃ疲れたんですからね」
「ハッハッハッハ!! そうだったな。でも、まだまだ乗りたい物はいっぱいあるんだ。こんなもんでへばってもらっちゃ困るぜ焔」
「は? まだまだ余裕ですよ」
「そうか……じゃ、さっさと食べちゃおうぜ」
軽い昼食を終えると、早速新たな乗り物を探して遊園地を歩き出す2人だった。だが、焔たちを含めたその場にいた人たちの注目を集めるある出来事が起こる。
それは1人の女性の怒りや憎しみが混じったような叫び声が始まりだった。
「何か用ですか会長?」
「焔!! お茶を飲ま―――」
「結構です」
「何でだよー!! いいじゃないか1回ぐらい!!」
焔は大きくため息を吐く。
「はあ……あのねー、放課後は忙しいって何度も言ってるでしょ。そろそろ諦めてくださいよ」
焔にすごまれ、会長はどんどん声が小さくなる。
「えー……1回ぐらいいいじゃん。焔のいけず」
「はあ……別に何か用があるんでしたら行ってもいいんですけど……何か俺が会長とお茶を飲む理由ってあるんですか?」
この焔の問いに会長は目を泳がせ、あたふたしだした。
「い、いや……理由は……特にないけど……ただ一緒にお茶飲んで話したいなー……みたいな……」
そう言って、焔の方に顔を上げるとそこには誰もいなかった。
「焔!?」
廊下の方に振り向くとそこには走り去る焔の姿があった。
「理由がねえならもう行くわ。じゃあな会長」
「待て焔!!」
後を追おうとした会長だったが、無理だと悟り何歩か進んだところで足を止める。その後、下を向いて残念そうな表情を浮かべ、その場で立ち尽くしていた。
そんな会長を教室から覗う3人の姿があった。
「あーあ、また断られちまったな会長」
「でも、何で焔君のことを執拗に誘うんだろ?」
「あー……何でだろうねー絹ちゃん」
明らかに棒読みで言う綾香。そんな綾香をよそに後ろから龍二はその理由を言おうとした。
「そりゃお前会長が焔のことを……」
ここまで言いかけた龍二だったが、綾香からの無言のプレッシャーに言葉がつまる。
「え? 会長が焔君のことを……何?」
そんな綾香の様子なんかまったく気づかず、絹子はその続きを龍二に言わせようとする。
「え? あ、あー、会長が……焔のことを……えー」
「好きだからですよ」
言いあぐねている龍二だったが、まさに龍二と綾香が心の中で思っている言葉が発せられた。
「え? 会長って焔君のこと好きなの……!?」
絹子は龍二に詰め寄る。同様に綾香も龍二に詰め寄る。
「龍二ー!! 何で言っちゃうのよ!!」
「い、いや!! 俺じゃないって!! マジで俺じゃないから!!」
「じゃー誰だって言うのよ」
「そ、それは……」
「僕ですよ」
そう言って、龍二の後ろからひょっこり副会長が顔を出す。
「あれ? 確か副会長だよな。いつの間に俺の後ろに……」
「そんなことよりも焔さんに一度だけでも会長とお茶を飲んで話す時間ってとれませんかね」
「まあ、あいつにもそれなりの理由があるからなー。俺たちじゃどうしようもならないな」
「ハー……そうですか……」
残念そうにため息を漏らす副会長に綾香が踏み込む。
「ていうか、さっき会長が焔のこと好きって言ってたよね」
「はい……」
「それって会長が言ってたの?」
「いえ、別に。でも、あの会長を見てれば誰でもわかりますよ」
「え、分からなかったけど」
「まあまあ、絹ちゃんは別に分からなくてもいいの」
綾香が絹子をなだめ終わると、副会長が生徒会室での会長の様子を話し始めた。
「最近、会長ずっと上の空なんですよ。ずーっとボケーッとしてますし、大好きな茶菓子食べてても何の反応もしませんし、と思ったら何かを思い出してニヤニヤしてますし、もう変なんですよ」
副会長の話を聞き、3人とも考え込む。そして、第一声を発したのは龍二だった。
「なるほどなー……よし分かった!! ダメもとだが、俺からも焔に言っといてやるよ」
「まー、力を貸すのは嫌だけどあの会長の悲しそうな顔も見たくないしね。私も言ってみる」
「私も力を貸すよ」
「……ありがとうございます!!」
深々と頭を下げる副会長の姿に3人に笑みがこぼれる。そんな中、龍二は何かを思い出したように副会長に質問をする。
「そういや、会長って受験生だろ? こんなことしてて大丈夫なのか?」
「あー、それなら大丈夫ですよ。会長は全国模試で10位以内をキープしてますし、毎回A判定しか取りませんから」
「は!?」
龍二は少し協力することに後ろ向きになった。
そんなこんなで翌日の放課後
―――「焔!! お茶を飲ま―――」
「結構です」
その言葉を合図に後ろで待機していた3人が一斉に動き出した。
「いいな!! 予定通り行くぞ!!」
「オッケー!!」
「わかった」
意気揚々と飛び出そうとした3人だったが、焔の話はまだ終わってなかった。
「でも、土曜日だったら空いてるんでその日ならいいですよ」
「え……」
会長、そして後ろの3人同時に同じ反応を取る。
流石の会長もこれは予想してなかったのか、頭が真っ白になり固まってしまった。
「あれ? 会長ー。聞こえてますか?」
「ハッ!! い、いや聞こえてる聞こえてる!! いやー、焔も意外と積極的なんだなって驚いただけだよ!! ハーハッハッハッハ!!」
「え? 別に嫌ならいいですけど」
「嫌じゃない嫌じゃない!!」
「そんじゃ、行先とか予定とかは会長が適当に決めといてください。じゃ、俺はもう行きますね」
走り去る焔の後ろ姿を未だに実感が湧かないような、でも滅茶苦茶嬉しそうな表情で見つめる会長、驚きと焦燥で慌てふためいている綾香、相変わらずの無表情だが、汗を垂れ流している絹子。そして……
(焔てめー……いや、師匠さん!! あんたの差し金だなー!! こっちのことも考えてくれよー!!)
事後処理のことを考えて、涙目になる龍二だった。
土曜日、朝の駅前
―――柱の前にもたれかかり、スマホをいじりながら会長を待っている焔。そんな焔に息を切らしながら1人の少女は駆け寄る。
「ごめん焔、ちょっと遅れちゃった」
「別に大丈夫ですよ。遅れたって言っても本当に1分ぐらいですからね。そんじゃ、取り敢えず駅の中に入りますか」
そう言って、駅の中に入ろうとする焔に会長が一声かける。
「焔!! こ、この服似合ってる?」
会長は白のニットに青色の膝丈まであるスカートをはいていた。ジーっと見てくる焔に会長は少し恥ずかしそうな顔をする。
「可愛いと思いますよ」
その言葉を聞くと、会長は満足そうな顔をして焔をグイグイ駅の中へ引っ張って行った。
電車、バスを経由して2時間弱が経ち、ようやく目的地に到着した。到着した先は遊園地だった。
「会長は俺とお茶を飲みたかったんじゃないですか? なぜ遊園地に……」
「まあまあ堅いことは気にするな!! こっちのほうが楽しいだろ!! ほら行くぞ!!」
引っ張られる焔はめんどくさそうなしぐさを見せるが、実際内心はソワソワしていた。
遊園地……か。ここは小学生の時よく綾香のお父さんに連れてってもらったな。土曜日は休みにするから会長とどこか行ってこい……か。シンさんには感謝だな。
それから焔と会長はドンドン乗り物を制覇していった。この2人全く絶叫系を恐れることがない。会長はむしろ好きなので、ジェットコースターは全て一番前で2人そろって乗っていた。
昼休憩がてら2人はベンチで少し遅めの軽い昼食を取っていた。
「いやー、やっぱり遊園地は楽しいな!!」
「そうですね」
「絶叫系も良かったが、私はコーヒーカップが今のところ一番楽しかったな。焔が全力で回すもんだから周りのやつらはドン引きしてたぞ。あれは本当面白かったな。ハーハッハッハッハ!!」
「いやいやあんたが『会長命令だ。全力で回せ!!』なんて言うからやってあげたんでしょ。あれめっちゃ疲れたんですからね」
「ハッハッハッハ!! そうだったな。でも、まだまだ乗りたい物はいっぱいあるんだ。こんなもんでへばってもらっちゃ困るぜ焔」
「は? まだまだ余裕ですよ」
「そうか……じゃ、さっさと食べちゃおうぜ」
軽い昼食を終えると、早速新たな乗り物を探して遊園地を歩き出す2人だった。だが、焔たちを含めたその場にいた人たちの注目を集めるある出来事が起こる。
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