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三沢大介 パート1 ゆとり先生と朝日

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3学期の終わりごろ、すごい先生が突然、西中にやってきた。
スーツ着て銀縁眼鏡かけた20代の男の先生で、生活指導専門の先生だった。
HRで初めての挨拶だったのに、ヤンキー鶴見と問題児の朝日が馬鹿みたいにゲラゲラ笑って授業妨害するものだから、いきなり切れた。
「お前ら、ゆとり世代かもしれないけど、手加減しねーぞ」と大声でたんかをきりだして、超怖い先生だった。
佐藤とかいう名前だったが「ゆとり先生」というあだ名で次の日には呼ばれていた。
鶴見と朝日がつけたあだ名で先生は嫌がっていたけど、定着してしまった。

ゆとり先生ってどこかで見たことあるような気がしていた。
うちの店のお得意さんの堂本信次さんって人に似ている。堂本さんは、週に2、3回出前取ったり、前はうちの店で朝日とよく夕ご飯を食べていた。

でも堂本さんは、水商売しているようなホスト系な服装だったし、眼鏡もかけていなかった。
ゆとり先生は、地味な服装しているし、学校の先生で名字は佐藤だ。
でも声は同じだし、顔もよく見てみると堂本さんだ。堂本さんは派手なイケメンでインパクトのある人なので、間違いない、ゆとり先生はお客さんの堂本さんだ。

先生に直に今度聞いてみようと思っても、なかなかチャンスがなくて聞けなかった。
教育委員会から来た生活指導の先生だから、授業を受け持つわけではなく、学級崩壊した隣のクラスの立て直しや、問題を起こす生徒の指導が主な仕事だからいつも忙しそうにしていた。

鶴見と朝日も当然、ゆとり先生に目をつけられていて、よく生徒指導室に呼び出されていた。
朝日の態度が悪いとか、なめきっているとかそんな理由だと、同じクラスの男子生徒から聞いた。
たしかに朝日はゆとり先生と話すときはタメ口だったし、やけに馴れ馴れしくて、ちょっとなぁと僕も思った。

体育の時間が終わった後、着替えながら、朝日にそれとなく聞いてみた。

「ゆとり先生って、うちのお客さんだよね」
朝日は、体操服を脱いで半裸のまま、うっとした顔をして、急にヘラヘラごまかし笑いをしだした。
「あ、そ、そうだっけ?」
「2学期、塾に行く前に、うちのラーメン屋でゆとり先生と一緒に夕食食べてたじゃん?」
「そ、そうだったっけ?」
朝日は、隣で着替えている鶴見に全然違う会話を振り出した。
「鶴見っち、土曜日、一緒にネカフェ行こうよ」

わざとらしく、僕の質問を無視する朝日は、なにか隠している。
1年生の時からずっと友達なんだから、きちんと本当にこと教えてくれればいいのに。
隠せば隠すほど知りたくなるし、ゆとり先生と朝日の関係って何なんだろうと探りたくなる。
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