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東城

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とうか パート2

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ブラックのコーヒー淹れて、先生が持ってきてくださる。

え?敬語変? てへぺろ!

インスタントじゃなくて、コーヒー豆のほうね。

「これから、僕、掃除とかするから」って言って、チェックの水色のエプロンかけてる。

この人なかなか女子力高いですよー。

居座ってコーヒーだけごちそうされてるのも気がひける。

「なんかお手伝いしましょうか」と尋ねた。

「今夜、カレーにするから、とうかちゃんにお買い物頼んでもいい?」

「いいすよ!」

牛肉とカレーのルー、ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ買ってくるように言われる。

カレーか、お買い物終わったら、作る方もお手伝いしよう。

カレーなんて楽勝。

うちさ、父子家庭だから、夕食はいつも私が作ってるんだよねー。

なんで父子家庭かって? 離婚だよ。離婚。

私が小5の時に離婚したんだよ。

小4の時の記憶、思い出したくもないな。

コーヒー飲み終わって、1000円札握りしめて、「じゃあ行ってきます」と言う。

外出ると、あっちー。天気でいいんだけど。この暑さどうにかならないのかなー。

もう40度ぐらいあるんじゃね?

今日の夕方のニュースは、熱中症・救急車総動員だわ。

アパートの階段降りて直射日光に当たると、じりじり日に焼ける。

このアパート、まじでフツーのアパートって感じ。独身のリーマンとか生息してそうな普通の。

桐野先生、精神科医で金あんだから、タワーマンションとかに住めばいいのにさ。

スーパー行って、だらだらに汗かいて戻ってくる。

「牛肉いたんじゃうから、これからカレー調理にはいりまーす」
シュッビ!
とうか14才、準備完了。敬礼!

リビングの拭き掃除してる桐野先生が「ありがーと。助かるー」って言う。

うるわしー。萌えー。先生の笑顔だいすっき。激ラブー。

「お願いねー。夕食、とうかちゃんもうちで食べてくといいよー」

顔もいいけど、やさしー。もろタイプだわ。

萌えたら、喉渇いちゃったわ。

台所で水道からグラスに水くんで、ごきゅごきゅ飲む。

シャッキーン、ではでは、とうか14才のお手並み拝見!!

まずは!玉ねぎみじん切りー。たたた-たたーーん!こんなの余裕余裕。

みじん切りなんて、玉ねぎに横に切り込み入れれば全然難しくないよ。

鍋にサラダ油入れて、みじん切りの玉ねぎをあめ色になるまで炒める。

この工程が、カレーで一番めんどい作業。

だるー。ひまー。

炒める作業、めんどくさー。

両親が離婚して、お母さんがいなくなってから、カレー連続の日があった。

こうやって作ったのじゃなくて、レトルトの。

ご飯もレンチンするやつで。

私が小5の夏休み、お父さんと台所で、二人黙って、レトルトのカレー食べてた思い出がある。

小5のときは、まだましだった。お父さんと二人での生活も悪くなかったよ。
しずかで平和な生活がはじまって、私ちょっぴり嬉しかったよ。

そう、私の人生で最悪だったのが小4。
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