ハムスター父さん

質問

「つーことだ」

ハムスターのバムはそこで話を切り上げた。

「それからどうなったの？」もっと先の話を聞きたかったので催促してみた。

「どーでもいいだろ。これ以上、俺のしょぼい人生聞いてどうすんだよ」
前足で毛づくろいしながら、めんどくさそうに答えた。

「なんでニートだったバムは死んじゃったの？」
「うるせーな、どうでもいいだろ。気が向いたらそのうち教えてやるよ」

人間だったころのバムは幸せだったんだろうか。
引きこもってゲームばかりしてリアルの友達もいなくて、家族から迷惑がられて。

「なんか、かわいそう……」
そう僕がつぶやくと、バムはじっと僕の顔をつぶらな瞳で見つめた。

「無職だったらかわいそうなのか？　結婚できなかったらかわいそうなのか？　お金が無かったらかわいそうなのか？　デブのキモオタだったらかわいそうなのか？」
「別にそういうわけでは」

「俺から見たら、守の母さんのほうが悲惨だぜ。離婚してシングルマザーで、体壊すまで働いてさ」
「うん」

「だからよ。お前がしっかりないと母さんが救われないじゃん」
「うん」
「俺みたいなゴミくずニートになるなよ！！」

人間の頃のバムは、たしかに社会不適合者だったけど、悪いやつじゃなかったのは確かだ。

ハムスターのバムもやさしくて頼りになるよ。

「バムが父さんだったら良かったのに。そしたら、お母さん、もっと幸せになってたかも」