新緑の少年

東城

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三浦希望

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朝起きて、メールをチェックする。
【三浦!! 重要なお話】
土曜の補習のこと?
メールを開く。
【桐野先生へ 突然ですが私は桐野先生が好きです。お付き合いできないでしょうか? 土曜までに返事ください。 のぞみより】
うわーっ。告白メールだ。朝日には内緒にしておこう。
困ったな。付きあえるわけないじゃないか。僕には朝日がいるし。だから女の人は無理なんだって。

横で、朝日は安心し切った顔でスヤスヤ眠っている。
この子以外の人と付き合うなんて考えられない。
それに僕がいなくなったら、また一人ぼっちになっちゃうよね。
もう寂しい思いや、つらいこととか、泣きたいこととか、孤立するとか、そんな境遇に戻って欲しくない。
ずっとずっとそばにいて朝日のことを助けてあげたい。
キスぐらいいいよね。だって、僕は君のおかあさんじゃないんだもの。
君の恋人になりたいよ。

***

断る理由を考えたあげく、土曜にきちんと会って話すことにした。
付き合っている人がいるからごめんで、いいだろう。
嘘じゃないし。
土曜にアパートの横の狭い駐車場で三浦先生を待つ。
ダイハツの赤い軽自動車であの人は、やってくる。
駐車場で三浦先生に伝えた。
「実は、付き合っている人がいるので、申し訳ないのですが」
三浦先生はカバンをぎゅっと抱きしめている。熊の人形を抱きしめて泣いてる小さな女の子みたいに見えた。
「そうなんですか。残念だったな」
「三浦先生なら僕よりいい人みつかりますよ」
「どうかなー。桐野先生かっこいいし、お医者さんだから、彼女いるかなって思って、はざま君に聞いたらいないって。きっと子供だからそんなことまで知らなかったんですね」とても残念そうな口調だった。
彼女はいないよ。でも、付き合っている人はいるよと心の中でつぶやいた。
「どんな人ですか?」
どんな人って、そんな、なんて言っていいのか。三浦先生のよーく知っている人だよ。
「かわいくて、とてもいい子ですよ。まだ学生だけど」
三浦先生は少し笑った。
「大学生の若くてかわいい子かあ。勝ち目ないなあ」

そのあと僕は駅に歩いて行った。そのまま電車に乗って映画を見に行った。
断るしかなかったが、悪いことしたとは思わなかった。
もう朝日の勉強をみてもらえなくなるけど、これ以上、僕たちにかかわって欲しくないからこれでよかったんだ。

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