新緑の少年

東城

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ろりいた

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次の日、朝日がきょとんとした顔で質問した。
「なんで部屋、別々にするの?」
「二人で一緒に寝るの狭いし」
「言われみればそうだよね。今までなんで栄と同じベッドで寝てたんだろう」朝日も同意して笑った。
怖い夢見るから一緒に寝てたんだろ。もう忘れてるよ。

物置化していた部屋の片づけが終わって、ベッドを組み立ててマットレスを置くと、もう十時になっていた。
朝日が言った。
「埃っぽくて、今夜はこの部屋で寝るの無理」
本や使わなくなった家具とか移動させたり片づけたりしたから、一晩窓開けて換気しないと、空気悪すぎだよね。それにまだ雪が降ってるし。

「今晩だけ一緒に寝ていい?」朝日が聞いた。
一緒に寝ていいって……おねだりしてるよ。かわいい。
「いいよ」
頬がホカホカ熱くなる、いままで一緒に寝てたのになにドキドキしてるんだよ、自分。
僕が先にお風呂に入って、ベッドに寝転がって、スマホで古い映画をみていた。
恋愛映画は感情移入できて楽しいから昔からよく見ていた。
ロリータ、中年男性と少女の映画。
なんでこんな変態映画を自分は見てるんだ。
少女にペディキュアをする映像が官能的で、くらくらしてきた。
少女の足の指の間に丁寧にひとつひとつコットンを深く押し込むって描写がエロすぎないか。

朝日がやってくる気配がしたので、映画を中断した。
子猫みたいにベッドにモソモソ入ってくる。
やっぱりかわいいな。
朝日は僕の背中にぴとっと頬と手を寄せて言った。
「最後のお泊りだから、甘えちゃえ」僕の腰に足を巻き付ける。
ふざけてやってるんだろうけど、この密着度は恋人だよ。
君のほうから誘ったんだよ。いいよね。キスぐらいして。
両手首を握り、シーツに押し付ける。
え? なにって、困った笑顔で僕を見てる。
やさしく口づけする。
いままでの唇が触れるだけの軽いキスじゃなくて、口を深く合わせる。
やわらかいくちびるをキスでふさぐ。
いったん唇を離すと、困った顔で僕を見てる。
「なにこれ」
「いや?」
「いやじゃないけど。なんか」
言葉をキスで中断させ、さらに深くキスをする。
大人のキスを教えてあげてもいいかな。
まだ、はやいかな。
キスをまたやめ、くちびるを指でなぞる。
「怖い?」
「ちょっと、しすぎかも」
キスしすぎって、こんなのまだまだソフトなほうだよ。
ディープキスまでしてないのに、しすぎって、ピュアすぎる。
何も知らないんだな。
朝日、大好き。
唇をついばむようにキスする。
そして、唇をやさしくおし開け、深く口づけする。

トゥルルルルとスマホの着信音が鳴る。
朝日がキスを中断して、うわずった声で言った。
「誰かから電話だよ」
もう誰だよ。
職場からかもしれないから、出ないと。
スマホを取ると、三浦希望先生と表示されていた。
思わず切ろうかと思った。
昨夜のあのもっさりした女教師の姿が脳裏によみがえった。
すっかり気分がなえてしまって、仕方なく電話にでる。
「もしもし」
『三浦です。昨夜はどうもありがとう。今週の土曜なんですが、十一時にお邪魔してもよろしいでしょうか? 英語の予習と数学の遅れているところの補習を予定してますので』
そんなことだったらメールすればいいのに、なんでわざわざ電話!?
「それじゃ土曜にお願いします」
なんで、このタイミングで電話してくる?
それも補習だとかそんな学校的な会話で。
ぶちっと電話を切る。
「土曜に補習だって。ありえないよね」
「キスのほうがありえない。いきなりあんなの」朝日は放心して言った。
キスの補習もそのうちね。今日は授業終了。
どうして、あの女教師はいつも変なタイミングで連絡してくるんだろう。
女の勘ってやつかな。

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