上 下
11 / 26

自由行動

しおりを挟む
 昼ごはんの後は、自由行動になった。三十七度もある炎天下で練習をして熱中症になったら困るからだろう。
 一年の部屋に戻りたいけど、長山先輩が一年の部屋に行ってるから戻れなくなってしまった。部屋でゴロゴロして、スマホを見たりおしゃべりしたり。それにしても暑い。なんで九州で合宿なんだろう。去年は山梨で、涼しくて練習しやすかったと翼先輩が言っていた。

「なんで暑い九州でわざわざ合宿なんですか?」
「しらね。学校の事情なんじゃね? 修学旅行先、九州とか噂聞いたし。事前調査とかじゃね?」翼先輩は寝っ転がってスマホをいじっている。
 中学の時の友達が長崎に転校したことを思い出した。高橋、どうしてるかな? ライン交換はしたから話したいけど、スマホがないから無理か。
「長崎ってここから近いのかな? 友達がいるから行ってみたいんだけど」
「新幹線で二時間以上かかるから無理じゃね?」
「そっか、結構遠いんだ」
「友達って女子?」
「そうだけど」
「やっぱ、共学は違うねえ。俺、中学から男子校だから異次元の話だ」
「彼女じゃないですよ。友達」
「女子の友達がいるってだけですごいよ。俺の友達、男オンリーだから」
「翼先輩は友達多いからいいじゃないですか。サッカー部員は翼先輩の友達だし。ところで総勢何名部員いるんですか?」
「三十五名」
「合宿来てるのって十六、十七人くらいじゃ?」
「塾の夏期講習やら用事で合宿に来てない連中や幽霊部員もいるから」

 翼先輩って友達百人いそうだな。自分は十人。いや、もっと少ないかも。

 しゅんとしていると翼先輩が立ち上がる。
「みんなー、外行こうぜ。観光、観光!」
「そうだなあ」パネエ先輩も立ち上がる。
「指宿の観光名所ってどこですか?」
「砂蒸し温泉」スマホで翼先輩が検索してくれた。
「この暑さで野外の温泉とか無理じゃん。あとは?」パネエ先輩が渋い顔をする。
「海岸とかサファリパーク」
 他の先輩たちは、暑いし、だるいからホテルで涼んでいると言った。

 朝日、翼先輩、パネエ先輩の三名だけで出かけることになった。

 外に出るとやっぱり暑い。ホテルのローターリーにゆらゆらと蜃気楼が見える。
「ぱねぇ」パネエ先輩の口癖が出た。
 文字どおり、ぱねぇ暑さだ。

 パネエ先輩はタクシーに近づく。パッとタクシーの後部座席のドアが開いた。
「みんな、乗れ乗れ」
 パネエ先輩、タクシー奢ってくれるんだって。さすが、パネエ先輩。細かいことにこだわらず、太っ腹なところがいい。
「ファミレスまで」助手席のパネエ先輩はタクシーの運転手に言った。

 えー、ファミレス。なんかいつもと変わらないじゃん。

 結局、ファミレスで涼むことにした。二人ともスマホばかりしている。
 翼先輩が誰かとラインで話している。
「ファミレスだよ。長山も来る? 来いよー」
 なんだ、長山先輩か。

 スマホを持っていない朝日はドリンクバーのジュースを何杯もおかわりしてぼーっとする。
 せっかく鹿児島まで来たんだもの、観光名所巡りとかしたいよ。
 でもこの暑さじゃ無理だよなあ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...