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長山先輩と翼先輩

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部屋は洋室だった。シングルのベッドが二つ。付き添いの中年の先生は外で飲み歩いて、明け方まで戻ってこないらしい。鹿児島といえばお酒が名物だし、酒飲みには天国なんだろう。

朝日はシングルベッドにちょこんと座った。
荻野先生は隅っこの椅子に座って仕事をしだす。
「いつ寝るんですか?」
「12時かなあ」
「もう眠いんですけど、寝ていいですか?」
「いいよ」真剣な顔してノーパソにパチパチ入力している。

「合宿なのに仕事なんですか?」
「部活も仕事のうちだよ。それに2学期の授業の草案も作っておかないとな」
「先生って夏休みないんですか?」
「んなものないよ」
「将来、学校の先生になりたいんだけど、やっぱ僕には無理かな」
「そんなことないぞ。教師はやりがいもあって最高な仕事だ」
「ですよね」

荻野先生にえっちなことされるんじゃないかって勘繰った自分が恥ずかしくなった。
ワイセツ教員なんて公立校の一部の変な先生だけだ。うちの学校は進学校だし、きちんとした先生ばかりだ。
ごろんとベッドに横になった。

ドンドンドンとドアをノックする音にびくっとして飛び上がる。荻野先生もびっくりして、ドアにつかつか歩み寄った。
ドアを開けると先輩たちがいた。

「おぎのせんせー、朝日を部屋に連れ込んで何する気ですか!! 2年生一同激怒ですよ!!」髪ツンツンの翼先輩が怒っている。
「部屋に生徒を連れ込んじゃダメですよ。校長先生に報告しますよ」部長の長山先輩は冷静だが目が怖い。
「一年が騒いでいて。朝日が盛り上げてたから」
「一年から話を聞きました。朝日のせいじゃないですよ」長山先輩は部屋に入ってくると朝日の横に立つ。
「わかった。もう一年の部屋に戻っていいから」荻野先生はたじろいている。
「俺らが朝日の面倒みます。じゃあおやすみなさい」長山先輩に右手を掴まれて部屋から出た。

廊下に出ると、朝日はほっとした。助かった。やっぱり長山先輩は頼りになる。顧問の荻野先生よりしっかりしているし、さすが部長とあって判断が早い。

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