2 / 8
第一章 突入
1, 一世一代の大博打
しおりを挟む
────『異界』内部 ユグ・シルドア王国
ユグ・シルドア王国は、カラスコ大陸の北部の端にあるため、北部はローツ海に面している。
その海で取れた新鮮な魚を大陸中央に存在する皇国に輸出することで、何とか独立を保つことが出来ている、弱小国家だ。
そんな、ユグ・シルドア王国で行われている御前会議は、今までにないほどに荒れていた。
何故こんなにも会議が荒れているのかと言うと……事の発端は、一週間前のことだった。
───同年4月1日正午 ユグ・シルドア王国 領空
天気は快晴、雲ひとつなく暖かい日差しがサンサンと照りつけていた。
そんな天気の中、痩せこけた畑を耕し農作業をしていた村人達を轟音と一つの大きな影が覆う。村人達が不思議に思い、空を見上げると……大きな塊が轟音を発しながら、空を飛んでいた。
一瞬で飛び去っていた塊を、村人たちはただただ呆然と見つめるしか無かった。
その後、大きな塊───航空自衛隊 P1哨戒機は、その青白い機体に描かれた日の丸を誇らしげに見せつけながら、ユグ・シルドア王国の王都上空を優雅に旋回していた。
シルドア王国の王都上空に突然現れた、未知の物体にあるものは恐怖し、あるものは未知なるものに興味を抱いた。王国の軍部は、右へ左へ大騒ぎであった。
数分後、数度の旋回のち、空飛ぶ塊は轟音を空に響かせながら北の空へと飛び去っていった───
シルドア国王は、正体不明の物体が自国の首都上空にまで侵入された、この非常事態に対処するため、御前会議を急遽開催。今後の対応などについて、話し合われていた。
───そんな中だった。日本国と名乗る国から、打診があったのは。
未知の物体が王都上空まで侵入されたあとだ。そのため、最初は断ろうとしていたがその内容が内容だったため、会議にて話し合いがされていた。
その内容というは────
・我が国は、貴国の沿岸部から北方に凡そ50キロメートル離れた場所にある、小島に存在する『門』の奥より来たためこの世界の知識に疎い。
・この世界の常識や文化を知るため。そして、我が国のことを貴国に知ってもらうためにも、我が国の使節団を派遣したい。
・返事は、2週間ほどを目安にしてもらいたい。もし、3週間経っても返事がない場合、貴国を警戒対象として、今後対応していく。
・なお、我が国の航空機が哨戒活動中に陸地を発見したため、偵察を行った。その際に、貴国の領空を侵犯してしまったことに関して、深く謝罪したい所存である。
────というものだった。
シルドア王国のトップ──セルキ・シルドア国王は、まともに話し合いができていない、普段は優秀な大臣たちを眺めながら、この打診について思考を巡らせる。自分の選択に、この国の未来が懸かっていると感じながら。
『門』という、謎の多い建築物の奥から来たと言っている未知の国、日本国。
普段なら有り得ないと一蹴りにする所だが、日本国が保有するという、あの未知の物体──航空機が、意図も簡単に首都の防空網を掻い潜って見せたのだ。
にわかには信じられない話だが、あの技術力があるのだ。ありない話ではないのかもしれない。
しかし問題は、皇国だ。
あの国が未知との接触を許すか?いや、絶対に許さないだろう。
この国は、皇国の顔色を伺って経済援助を受けるだけの、属国に成り下がったのだ。
少しでも皇国の機嫌を損ねれば、直ぐにでも併合されてしまうだろう。
ローツ海で捕れる魚の量も年々減る一方。あと数年で、皇国からの納品要求量を下回ってしまう。
そうすれば待っているのは併合。あの国は、利用価値がなくなった国などすぐに自国へと併合する。
そうしてあの国は発展していったのだから。
どっちみち待っているのは破滅のみ。ならば、あの国にかけてみても良いのかもしれないな。
「もしそれでもダメだったのなら、それまでだったということだな」
セルキは一人覚悟を決め、玉座から立ち上がり、口を開いた。
国王が立ち上がった瞬間、先程まで騒がしかった会議室に静寂が訪れる。
「皆の者、よく聞け。我は日本国とやらにこの未来を託してみようと思う」
「しかし……」
ある大臣が反対しようとして、国王の顔を見る。そして、国王の目には決意が宿っているように見えた。
この大臣は、現国王が即位してから共に国を取り仕切っていた、いわば側近だ。だから、そんな側近の彼にはわかる、この目を国王が見せた時は、何を言っても無駄なのだと。
「わかりました」
「よし。ならば早速、日本国の者に返事を送れ。貴国の使節団を歓迎する、とな」
『『仰せのままに』』
────同年4月10日
日本国が『異界』内で、初めて接触した国となったユグ・シルドア王国は、国の存亡を賭けた一世一代の大博打を始めるのだった。
一方その頃、カラスコ大陸東部と南部では、銃声や爆発音、兵士の雄叫びが響き渡っていた───
ユグ・シルドア王国は、カラスコ大陸の北部の端にあるため、北部はローツ海に面している。
その海で取れた新鮮な魚を大陸中央に存在する皇国に輸出することで、何とか独立を保つことが出来ている、弱小国家だ。
そんな、ユグ・シルドア王国で行われている御前会議は、今までにないほどに荒れていた。
何故こんなにも会議が荒れているのかと言うと……事の発端は、一週間前のことだった。
───同年4月1日正午 ユグ・シルドア王国 領空
天気は快晴、雲ひとつなく暖かい日差しがサンサンと照りつけていた。
そんな天気の中、痩せこけた畑を耕し農作業をしていた村人達を轟音と一つの大きな影が覆う。村人達が不思議に思い、空を見上げると……大きな塊が轟音を発しながら、空を飛んでいた。
一瞬で飛び去っていた塊を、村人たちはただただ呆然と見つめるしか無かった。
その後、大きな塊───航空自衛隊 P1哨戒機は、その青白い機体に描かれた日の丸を誇らしげに見せつけながら、ユグ・シルドア王国の王都上空を優雅に旋回していた。
シルドア王国の王都上空に突然現れた、未知の物体にあるものは恐怖し、あるものは未知なるものに興味を抱いた。王国の軍部は、右へ左へ大騒ぎであった。
数分後、数度の旋回のち、空飛ぶ塊は轟音を空に響かせながら北の空へと飛び去っていった───
シルドア国王は、正体不明の物体が自国の首都上空にまで侵入された、この非常事態に対処するため、御前会議を急遽開催。今後の対応などについて、話し合われていた。
───そんな中だった。日本国と名乗る国から、打診があったのは。
未知の物体が王都上空まで侵入されたあとだ。そのため、最初は断ろうとしていたがその内容が内容だったため、会議にて話し合いがされていた。
その内容というは────
・我が国は、貴国の沿岸部から北方に凡そ50キロメートル離れた場所にある、小島に存在する『門』の奥より来たためこの世界の知識に疎い。
・この世界の常識や文化を知るため。そして、我が国のことを貴国に知ってもらうためにも、我が国の使節団を派遣したい。
・返事は、2週間ほどを目安にしてもらいたい。もし、3週間経っても返事がない場合、貴国を警戒対象として、今後対応していく。
・なお、我が国の航空機が哨戒活動中に陸地を発見したため、偵察を行った。その際に、貴国の領空を侵犯してしまったことに関して、深く謝罪したい所存である。
────というものだった。
シルドア王国のトップ──セルキ・シルドア国王は、まともに話し合いができていない、普段は優秀な大臣たちを眺めながら、この打診について思考を巡らせる。自分の選択に、この国の未来が懸かっていると感じながら。
『門』という、謎の多い建築物の奥から来たと言っている未知の国、日本国。
普段なら有り得ないと一蹴りにする所だが、日本国が保有するという、あの未知の物体──航空機が、意図も簡単に首都の防空網を掻い潜って見せたのだ。
にわかには信じられない話だが、あの技術力があるのだ。ありない話ではないのかもしれない。
しかし問題は、皇国だ。
あの国が未知との接触を許すか?いや、絶対に許さないだろう。
この国は、皇国の顔色を伺って経済援助を受けるだけの、属国に成り下がったのだ。
少しでも皇国の機嫌を損ねれば、直ぐにでも併合されてしまうだろう。
ローツ海で捕れる魚の量も年々減る一方。あと数年で、皇国からの納品要求量を下回ってしまう。
そうすれば待っているのは併合。あの国は、利用価値がなくなった国などすぐに自国へと併合する。
そうしてあの国は発展していったのだから。
どっちみち待っているのは破滅のみ。ならば、あの国にかけてみても良いのかもしれないな。
「もしそれでもダメだったのなら、それまでだったということだな」
セルキは一人覚悟を決め、玉座から立ち上がり、口を開いた。
国王が立ち上がった瞬間、先程まで騒がしかった会議室に静寂が訪れる。
「皆の者、よく聞け。我は日本国とやらにこの未来を託してみようと思う」
「しかし……」
ある大臣が反対しようとして、国王の顔を見る。そして、国王の目には決意が宿っているように見えた。
この大臣は、現国王が即位してから共に国を取り仕切っていた、いわば側近だ。だから、そんな側近の彼にはわかる、この目を国王が見せた時は、何を言っても無駄なのだと。
「わかりました」
「よし。ならば早速、日本国の者に返事を送れ。貴国の使節団を歓迎する、とな」
『『仰せのままに』』
────同年4月10日
日本国が『異界』内で、初めて接触した国となったユグ・シルドア王国は、国の存亡を賭けた一世一代の大博打を始めるのだった。
一方その頃、カラスコ大陸東部と南部では、銃声や爆発音、兵士の雄叫びが響き渡っていた───
18
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本は異世界で平和に過ごしたいようです。
Koutan
ファンタジー
2020年、日本各地で震度5強の揺れを観測した。
これにより、日本は海外との一切の通信が取れなくなった。
その後、自衛隊機や、民間機の報告により、地球とは全く異なる世界に日本が転移したことが判明する。
そこで日本は資源の枯渇などを回避するために諸外国との交流を図ろうとするが...
この作品では自衛隊が主に活躍します。流血要素を含むため、苦手な方は、ブラウザバックをして他の方々の良い作品を見に行くんだ!
ちなみにご意見ご感想等でご指摘いただければ修正させていただく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
"小説家になろう"にも掲載中。
"小説家になろう"に掲載している本文をそのまま掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転移す万国旗
あずき
ファンタジー
202X年、震度3ほどの地震と共に海底ケーブルが寸断された。
日本政府はアメリカ政府と協力し、情報収集を開始した。
ワシントンD.Cから出港した米艦隊が日本海に現れたことで、
アメリカ大陸が日本の西に移動していることが判明。
さらに横須賀から出発した護衛艦隊がグレートブリテン島を発見。
このことから、世界中の国々が位置や向きを変え、
違う惑星、もしくは世界に転移していることが判明した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
平和国家異世界へ―日本の受難―
あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。
それから数年後の2035年、8月。
日本は異世界に転移した。
帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。
総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる――
何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。
質問などは感想に書いていただけると、返信します。
毎日投稿します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる