36 / 42
10話ー➁ 神術教本完全版 ゲェットォ!!!
しおりを挟むソロモンは穏やかな表情を崩さず、口を開いた。
「まず君があそこで使った神術は~原初神の雷槍かな?」
「どういう事でしょうか?何か不可解な点でもあったのでしょうか?」
僕は眉ひとつ動かさず、無表情でとぼけて見せた。
あたかも魔道具を使った後に、他の誰かが人為的工作を仕掛けたかのように振る舞う。
「あの......夫の報告書に何かミスでもあったのでしょうか……」
ルシアは即座に察して、僕の芝居に自然と合わせてくれた。流石、片割れの嫁だ。
「そっか~。残念だな~?僕はあの秘匿神術道本の完全版と続版を持ってたのになぁ。君に写本を渡そうと思ったんだけど、残念残念。」
「あ。あれ使ったの僕です。なので写本ください!!」
「ちょっと……あなたね……」
うん、無理だった!
知識欲が全く抑えきかい。制御が聞かない暴走機関車のようだ。
あの本は内容の五分の四が消失しているが、残りの五分の三を復元するのに500万年もかかっていた。
その完全版、さらには僕の知らない続編まで手に入るとなれば、このチャンスを逃すわけにはいかない。
目の前のソロモンに対して、僕の瞳は輝きを増し、心臓の鼓動が高鳴るのを感じた。
長年追い求めた知識の結晶が目の前にあるという事実に、僕の興奮は抑えられなかった。
「うん。でも条件がある。まず二人とも僕の弟子になること。二つ目は上位神序列。ルーク君は2位、ルシアさんは7位まで上げさせてもらう。」
いや、前者の条件は最高すぎる。十神柱の教えを受けられるなんて夢のようだ。
聞きたいことが山ほどある。
後者の条件は当初の計画よりも多少目立つが、前の条件が良すぎて気にならない。
「わ、私もですか?」
「君もだよ。君も神術が使えるでしょ?魔力の練り方を見ればわかる。ルーク君の方は隠蔽が上手いから見ただけでは分からないけどね。」
「条件については問題ございません。神術教本、誠にありがとうございます。」
隣でルシアが呆れた顔をしているが、今は無視しよう。
「それでは報告に入ろうか。まず今回の呪術師で何か感じたことはあるかい?」
「感じたことと言えば......明らかに最上位神案件でした。上位神複数人でも対応を間違えれば全滅させられることでしょう。」
上位神であっても、僕やルシアのように突出した個の力がなければ到底対応できなかっただろう。
あの呪術師との戦闘は、上位神としてのレベルを遥かに超えていた。
そしてその後僕らは呪術師の呪法や、その現地の生態系の調査結果などを報告した。
「なるほど。それ程の呪術師がいたのか~。しかも結界術の強力な使い手ね。」
「私としては陽動かと......彼からは使い捨てのような印象を受けました。」
陽動の可能性は十分に考えられる。実際、今の神界の関心は、キノコに寄生する狂化ウイルスの方に向けられているのだから。
大きな出来事を起こせば、それだけ神界の意識を別の方向に向けさせやすくなる。
「なるほど。この少ない情報で陽動と判断したねー。それはどうしてかな?」
「はい。私たちと相対した時に結界中心部の小屋を守ろうとはしていませんでした。おおよそ何か自身の目的があるようには見えなかったんです......」
「……」
確かに違和感はあったが、敵の前で目的を馬鹿正直に晒すのは愚かな者のすることだ。
とはいえ、この呪術師の行動はそれを超えて、異常さを際立たせていたのもまた事実ではある。
「ただね、狂化の件との関連性を示唆するものはないね。はぁ~......」
少し考え込んでいる様子を見せその後、魔道神ソロモンは続けた。
「だけど、それがまた怪しい。これは十神柱が直接動く必要がありそうだね。」
「そ、それほどなのですか!?」
ルシアはまだ状況を完全には把握していないようだが、今回の件は明らかに十神柱が関与すべき案件だ。
あの呪術師がもし下っ端に過ぎないのなら……この事態はさらに深刻だ。
「全神王のゼレスちゃんにも動いてもらうしかないね……頼みにくいなぁ。」
「僕らに何かできることはありますか?」
十神柱に会える機会など滅多にない。
この場で何か好印象を与えることができれば、僕の目指す次代の全神王に一歩でも近づけるかもしれない。
「うーん……あるにはあるね。危険かもだけどさ?一連の件と関連がある可能性の高い任務を消化してくれないかい?」
危険……これは僕一人の問題ではない。
この言い方からして、ルシアと二人での任務を指しているのだろう。
僕が少しの間悩んでいると、ルシアは僕の手を優しく握り、にこやかに微笑んだ。
「私なら大丈夫よ。あなたの好きなようにして。」
ルシアはこの任務の危険性も、僕が抱える夢への焦燥も、そして僕が彼女のことを案じていることも......
すべて理解した上で覚悟を決めてくれたのだ。
彼女は消えてしまうかもしれない恐怖すらも受け入れ、それでも僕と命を共にすると決意した。
その瞳には揺るぎない信念と愛が宿っていた。ならば、僕の選択肢はただ一つ。
「……。魔道神ソロモン様。このお話引き受けさせていただきます。」
「分かった。じゃあ、今後僕の方から、依頼推薦って形でそれらきし任務を送るから。今日はもう終わりにしよう。」
僕らは深々と礼をして、部屋を退室した。
手にはしっかりと神術教本を握りしめている。
ギルドの亜空間の廊下を歩く中、薄暗い光が足元をぼんやりと照らし出す。
静寂に包まれた廊下に、僕たちの足音だけが静かに響いた。
この一冊の教本が、新たな知識と力への扉を開くのだ。
胸の奥で期待と緊張が入り混じった感情が高まっていく。
切り札以外で強力な術を習得することは、それだけ戦略の幅を広げる。
それだけ強くなれるということだ。
そして、この日が……
これからの運命の......最初の分岐点になった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件
☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。
しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった!
辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。
飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。
「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!?
元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる