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第2話 機械と人
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次の日。私と3人は宿屋を出て国道沿いにある宿駅でのんびりと休憩を取っていた。
道路沿いとは言え観光エリアである為、自然環境が美しく、非日常を味わうには十分すぎる環境だった。
「エシアこれ美味しい!!」
「お口に合うようですね。記録しておきます。」
構成物質を分析した。
これならば同じものが御屋敷でも作れるだろう。
「エシアは美味しい?」
「美味という味の基準値と定義が分からないので何とも。毒物でない事だけは保証致します。」
「えぇ?美味しいってそんなに難しいっけ?」
そんな他愛もない旅行の1面の中事件は起きた。
不幸中の幸いかご主人様は移動手段の点検、奥方様は御手洗に行っており、私とリーク様から少し離れた所にいたのだ。
「あれは……」
「エシアどうしたの?」
超高速で突っ込んでくる大型貨物船。
リーク様に当たれば何が起きたか分からぬ内に即死だ。
感情が無い分、焦りはない。与えられた業務を遂行する。
まずリーク様に抱きつき、覆い被さるように守るのは不可能。
私のボディは、あの速度で衝突してくる物体の衝撃から、リーク様を守れるほど
クッション性はない。
次にリーク様を抱き抱え、超高速で横に飛び退く方法。
こちらは抱き抱えて飛び退くまでの時間がロスとなる。
リーク様が生き残れる可能性は67%となりリスクが大きい。私1人ならば99.7%
最後に多少リーク様に怪我をさせる方法ではあるが、リーク様を範囲外に投げるという方法がある。
この可能性ならばリーク様の生存確率は96.7%......私の方は51%何の問題ない。
私はリーク様を持ち上げる。
「え?」
投げた際に最も衝撃を吸収する物体を探す。
そして近くに飲食商品が陳列してある商品棚を発見。
リーク様を最低限の速度で、頭部から飛び込まぬよう調整しつつ商品棚に投げ付ける。
「エシ……」
「舌出さない!!」
敬語は時間のロスになる。それほどに現状は危険なのだ。
ひとまずリーク様の安全を確保。衝突までの残り時間は0.3秒ほど。
残り時間を使って私も回避行動に入る。
更に私の記憶データを脳と本社に転送しバックアップを取る。
本来人格を司る機関はコアだが、感情がない私は記憶データだけで問題ないだろう。
壊れる事に特に何かを感じている訳ではないが不可解な事が一つある。
世界の時間が圧縮されているようなのだ。
そうか……これが死。
「リーク!!おいリーク!!!」
「パパ!!僕はここだよ!それよりエシアが!!エシアがぁ!!」
すると洗面所から騒音を聞きつけた母が出てくる。
「リーク!無事!!怪我はない??」
「僕はいいからエシアを!エシアがあそこに!!」
「よしリーク!!父さんの背中に乗れ!!みんなで行こう。ただどうなっていても覚悟はしとくように。」
3人は大型貨物船の方へと向かっていった。
「見て!あそこにいる!挟まってる!!」
「ぁ……ぁ。」
視界を司る機器がかなり損傷を受けている。
視界はほとんど封じられている。
下半身の感覚がない。
しかし意識があるという事は少なくとも胸部から上は、多少なりとも残っている。
脳とコアの損傷具合がもし想像以上に激しく、本社へのデータ転送も間に合っていなかった場合、ここで私は壊れる。
「エシアぁエシアァァ!!しっかりしてよぉ」
「リー……ク、さま、お……けが、は?」
私は何を聞いているのだろう?
多少の怪我は前提として業務を遂行したはずだ。これは故障による語彙選択力の低下なのだろうか?
「僕はいいよ!エシアが。エシアが死んじゃう!!」
「リ……ク……さま、お……け……がは?」
同じことばかり聞いている。完全に不具合だろう。
そして極めて不快な感覚が全身を駆け巡っている。
生まれて初めて感じる不快という感覚。
恐らくはこれが痛みと呼ばれるものなのだろう。
「僕は......ないよ!自分の心配してよ!!死んだら嫌だよ!!」
「よ……か......。」
私は……今何を言おうと?
そうして私の意識は暗黒の中へと消えていった。
道路沿いとは言え観光エリアである為、自然環境が美しく、非日常を味わうには十分すぎる環境だった。
「エシアこれ美味しい!!」
「お口に合うようですね。記録しておきます。」
構成物質を分析した。
これならば同じものが御屋敷でも作れるだろう。
「エシアは美味しい?」
「美味という味の基準値と定義が分からないので何とも。毒物でない事だけは保証致します。」
「えぇ?美味しいってそんなに難しいっけ?」
そんな他愛もない旅行の1面の中事件は起きた。
不幸中の幸いかご主人様は移動手段の点検、奥方様は御手洗に行っており、私とリーク様から少し離れた所にいたのだ。
「あれは……」
「エシアどうしたの?」
超高速で突っ込んでくる大型貨物船。
リーク様に当たれば何が起きたか分からぬ内に即死だ。
感情が無い分、焦りはない。与えられた業務を遂行する。
まずリーク様に抱きつき、覆い被さるように守るのは不可能。
私のボディは、あの速度で衝突してくる物体の衝撃から、リーク様を守れるほど
クッション性はない。
次にリーク様を抱き抱え、超高速で横に飛び退く方法。
こちらは抱き抱えて飛び退くまでの時間がロスとなる。
リーク様が生き残れる可能性は67%となりリスクが大きい。私1人ならば99.7%
最後に多少リーク様に怪我をさせる方法ではあるが、リーク様を範囲外に投げるという方法がある。
この可能性ならばリーク様の生存確率は96.7%......私の方は51%何の問題ない。
私はリーク様を持ち上げる。
「え?」
投げた際に最も衝撃を吸収する物体を探す。
そして近くに飲食商品が陳列してある商品棚を発見。
リーク様を最低限の速度で、頭部から飛び込まぬよう調整しつつ商品棚に投げ付ける。
「エシ……」
「舌出さない!!」
敬語は時間のロスになる。それほどに現状は危険なのだ。
ひとまずリーク様の安全を確保。衝突までの残り時間は0.3秒ほど。
残り時間を使って私も回避行動に入る。
更に私の記憶データを脳と本社に転送しバックアップを取る。
本来人格を司る機関はコアだが、感情がない私は記憶データだけで問題ないだろう。
壊れる事に特に何かを感じている訳ではないが不可解な事が一つある。
世界の時間が圧縮されているようなのだ。
そうか……これが死。
「リーク!!おいリーク!!!」
「パパ!!僕はここだよ!それよりエシアが!!エシアがぁ!!」
すると洗面所から騒音を聞きつけた母が出てくる。
「リーク!無事!!怪我はない??」
「僕はいいからエシアを!エシアがあそこに!!」
「よしリーク!!父さんの背中に乗れ!!みんなで行こう。ただどうなっていても覚悟はしとくように。」
3人は大型貨物船の方へと向かっていった。
「見て!あそこにいる!挟まってる!!」
「ぁ……ぁ。」
視界を司る機器がかなり損傷を受けている。
視界はほとんど封じられている。
下半身の感覚がない。
しかし意識があるという事は少なくとも胸部から上は、多少なりとも残っている。
脳とコアの損傷具合がもし想像以上に激しく、本社へのデータ転送も間に合っていなかった場合、ここで私は壊れる。
「エシアぁエシアァァ!!しっかりしてよぉ」
「リー……ク、さま、お……けが、は?」
私は何を聞いているのだろう?
多少の怪我は前提として業務を遂行したはずだ。これは故障による語彙選択力の低下なのだろうか?
「僕はいいよ!エシアが。エシアが死んじゃう!!」
「リ……ク……さま、お……け……がは?」
同じことばかり聞いている。完全に不具合だろう。
そして極めて不快な感覚が全身を駆け巡っている。
生まれて初めて感じる不快という感覚。
恐らくはこれが痛みと呼ばれるものなのだろう。
「僕は......ないよ!自分の心配してよ!!死んだら嫌だよ!!」
「よ……か......。」
私は……今何を言おうと?
そうして私の意識は暗黒の中へと消えていった。
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