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2章
レニスとスビア2人で紡ぐ正義
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レニスの視点
「魔族の子供の処刑だってスビア。エルフか人なら助けるけど…ほっておこうか。」
危険な魔族は、子供であろうと油断しては行けない。子供といえど魔法は得意だから、それが命取りに繋がる。
決っして同情などしてはいけないと、村のみんなとマギのお母様に嫌と言うほど聞かされた。
私は、その処刑を見学せずに立ち去ろうとした。
「はぁ? あんた正気? あのねぇ…レニスが魔族に生まれてきて、はいお前魔族処刑ね。なんて受け止めるの? 私助けるから、あんたは黙ってるか、食事でも言ってなさい。」
立ち止まることなく男の人に向かっていくスビアに驚き、彼女の歩みを止める間がなかった。
「ちょっとあんた、子供を公開処刑にしようなんて、随分乱暴ね。この子供達は、何も悪いことしてないじゃないの。」
「あぁ? なんだ子供達ってお前も子供じゃないか。それにしてもエルフか珍しいな。森にでも帰った! 子供の状態でも、いつか大人になれば殺人鬼になるんだ。処刑は当然だろ。」
「知らないわよ。解放なさい! そうならないように知恵を絞りなさいよ。子供を処刑なんて短絡過ぎ、やるなら悪い魔族にしなさいな。」
私は涙を流していた。勇敢で正義感のある彼女の言葉に感化された。そうだよね、スビアの言う通りだ。私は涙を拭って、行方を見守った。
双子と言われた魔族の子供が肩を震わせている。男の子と女の子、お互い身を寄せ合って、スビアと男の人とのやりとりを見ていた。
邪魔するなー! 殺せー! 観客の耳を塞ぎたくなる声が聞こえる。
くっ…私たちがまるで観客たちの敵の様に思えてくる。
だけど…私だけはスビアの応援をする。周りの反応で変わる様な女の子じゃないもんね。私はそう考えて笑みを浮かべた。
「見ろ! 聞け! 聴衆の声を! みんな現実を見てる。お前みたいな子供には、責任感ないだろうが、大人達にはこの魔族どもを野放しにする選択はない!」
手を広げ男の人が、演説の様に言葉を発した。
私はスビアの返答を待った。
言い返してくれるだろうと言う思いがあったからだ。
「あなたの子供が殺人鬼にならない保障はあるの?」
「は?」
「ないわよね? それと一緒の事言ってんのよ。この魔族の子供が殺人鬼になるって決めつけてるけど、将来の事分かるわけない。言葉を話せる子供を殺す。それは取り返しつかないの。」
それは…そうだ。言葉を話せるのは、もう人と言えるんじゃないか? 私はその考えをすぐに首を振り、否定した。
これから魔族を倒す大義名分が、無くなるのを恐れたからだ。
人だと言うなら裁きは、誰が下すのだろう。
子供の私には答えは出せない。
「くっ…このガキ言いたい放題抜かしやがって。痛い目見ないと分からないようだな!」
男の人が威張って言う。
威嚇する様に表情に眉間を寄せる。
「何よあんた? もしかしてすぐ暴力に訴えるの? 良いわよ、そっちがその気なら、こっちも魔法で痛めつけてあげるわよ。」
いつでも来いと、胸を張ってスビアが言い返す。
「ふん、残念だったな。これでもくらいな。」
男がポケットから瞳を模った不気味な物を、スビアにかざした。
彼女が力が抜けた様に、膝を地面につけた。
「何よこれ? 力が…入らない。」
「ふっ、こいつはな、相手を金縛りにする魔具だ。3分間だけだが、魔族もこれでイチコロよ。処刑の邪魔した罰、覚悟するんだな。」
まずい、スビアを助けないと。
私は急いで観客を掻き分けて、彼女の前に仁王立ちした。
「なんだ? こいつの仲間か。さっさとそのガキ、連れて失せな。俺は魔族を処刑するのに忙しいんだ。」
スビアを指して邪魔そうに言う。
「そうはいきません、その魔族の子供達、私達に預けてくれませんか?」
交渉する様に言い、双子の子供達に目配せした。
男の人は、手に顔をやり、デカいため息を吐いた。
「おいガキ…気が変わった。お前らも処刑する。魔族の味方をしたら、どうなるか分からせてやる。」
怒り心頭になりながら、短髪のゴツい男の人が剣を引き抜く。
だけど、この状況は、むしろ交渉に利用できると思った。
「ちょっとレニス、あなた!」
スビアの心配そうな声が聞こえた。私は向き直って大丈夫だよと言う気持ちで頷いた。
「へー、ならこうしませんか? 私があなたに勝ったら、その魔族を私達に預ける。私が負けたら、処刑されても構いません。」
男の人は笑みを浮かべ、私の提案をあっさりと受けた。それはそうだろう。動きを封じる魔具があって、剣もエルフ、しかも女の子。絶対に勝てると思い込んでる。
私はそれ見透かして、満面の笑みで剣を抜いた。
「魔族の子供の処刑だってスビア。エルフか人なら助けるけど…ほっておこうか。」
危険な魔族は、子供であろうと油断しては行けない。子供といえど魔法は得意だから、それが命取りに繋がる。
決っして同情などしてはいけないと、村のみんなとマギのお母様に嫌と言うほど聞かされた。
私は、その処刑を見学せずに立ち去ろうとした。
「はぁ? あんた正気? あのねぇ…レニスが魔族に生まれてきて、はいお前魔族処刑ね。なんて受け止めるの? 私助けるから、あんたは黙ってるか、食事でも言ってなさい。」
立ち止まることなく男の人に向かっていくスビアに驚き、彼女の歩みを止める間がなかった。
「ちょっとあんた、子供を公開処刑にしようなんて、随分乱暴ね。この子供達は、何も悪いことしてないじゃないの。」
「あぁ? なんだ子供達ってお前も子供じゃないか。それにしてもエルフか珍しいな。森にでも帰った! 子供の状態でも、いつか大人になれば殺人鬼になるんだ。処刑は当然だろ。」
「知らないわよ。解放なさい! そうならないように知恵を絞りなさいよ。子供を処刑なんて短絡過ぎ、やるなら悪い魔族にしなさいな。」
私は涙を流していた。勇敢で正義感のある彼女の言葉に感化された。そうだよね、スビアの言う通りだ。私は涙を拭って、行方を見守った。
双子と言われた魔族の子供が肩を震わせている。男の子と女の子、お互い身を寄せ合って、スビアと男の人とのやりとりを見ていた。
邪魔するなー! 殺せー! 観客の耳を塞ぎたくなる声が聞こえる。
くっ…私たちがまるで観客たちの敵の様に思えてくる。
だけど…私だけはスビアの応援をする。周りの反応で変わる様な女の子じゃないもんね。私はそう考えて笑みを浮かべた。
「見ろ! 聞け! 聴衆の声を! みんな現実を見てる。お前みたいな子供には、責任感ないだろうが、大人達にはこの魔族どもを野放しにする選択はない!」
手を広げ男の人が、演説の様に言葉を発した。
私はスビアの返答を待った。
言い返してくれるだろうと言う思いがあったからだ。
「あなたの子供が殺人鬼にならない保障はあるの?」
「は?」
「ないわよね? それと一緒の事言ってんのよ。この魔族の子供が殺人鬼になるって決めつけてるけど、将来の事分かるわけない。言葉を話せる子供を殺す。それは取り返しつかないの。」
それは…そうだ。言葉を話せるのは、もう人と言えるんじゃないか? 私はその考えをすぐに首を振り、否定した。
これから魔族を倒す大義名分が、無くなるのを恐れたからだ。
人だと言うなら裁きは、誰が下すのだろう。
子供の私には答えは出せない。
「くっ…このガキ言いたい放題抜かしやがって。痛い目見ないと分からないようだな!」
男の人が威張って言う。
威嚇する様に表情に眉間を寄せる。
「何よあんた? もしかしてすぐ暴力に訴えるの? 良いわよ、そっちがその気なら、こっちも魔法で痛めつけてあげるわよ。」
いつでも来いと、胸を張ってスビアが言い返す。
「ふん、残念だったな。これでもくらいな。」
男がポケットから瞳を模った不気味な物を、スビアにかざした。
彼女が力が抜けた様に、膝を地面につけた。
「何よこれ? 力が…入らない。」
「ふっ、こいつはな、相手を金縛りにする魔具だ。3分間だけだが、魔族もこれでイチコロよ。処刑の邪魔した罰、覚悟するんだな。」
まずい、スビアを助けないと。
私は急いで観客を掻き分けて、彼女の前に仁王立ちした。
「なんだ? こいつの仲間か。さっさとそのガキ、連れて失せな。俺は魔族を処刑するのに忙しいんだ。」
スビアを指して邪魔そうに言う。
「そうはいきません、その魔族の子供達、私達に預けてくれませんか?」
交渉する様に言い、双子の子供達に目配せした。
男の人は、手に顔をやり、デカいため息を吐いた。
「おいガキ…気が変わった。お前らも処刑する。魔族の味方をしたら、どうなるか分からせてやる。」
怒り心頭になりながら、短髪のゴツい男の人が剣を引き抜く。
だけど、この状況は、むしろ交渉に利用できると思った。
「ちょっとレニス、あなた!」
スビアの心配そうな声が聞こえた。私は向き直って大丈夫だよと言う気持ちで頷いた。
「へー、ならこうしませんか? 私があなたに勝ったら、その魔族を私達に預ける。私が負けたら、処刑されても構いません。」
男の人は笑みを浮かべ、私の提案をあっさりと受けた。それはそうだろう。動きを封じる魔具があって、剣もエルフ、しかも女の子。絶対に勝てると思い込んでる。
私はそれ見透かして、満面の笑みで剣を抜いた。
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