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エルフ村でのパーティ
しおりを挟む屋外パーティでみんな賑わっている。
小さなエルフの子供達が、飛び跳ねたり、バルーンをみて和かに微笑んでいた。
スビアの父親の跡を追いながら、壇上に上がって、我が娘を救った英雄と紹介された。
「おっ、主役のご登場だ。」
そう言ったのはレニスの師匠だ。目を輝かせて拍手をした。
それに続きみんながパチパチと一体になって拍手した。薄暗くなってきた村に鳴り響く。
照れ臭い。ヒーローと側からは見えるだろう。でも生まれつき、身につけた魔法だ。もちろん特訓はしたけど、その力を使って女の子を救った。それだけなんだ。
何も力がなかったら、こんなにちやほやされることもなかったろう。そう思うとある種の虚しさも感じた。
頬を膨らませて、何か気を紛らしたいと思い、当たりを見回す。
良い匂いが鼻にスッと入ってくる。見ると、ご馳走がテーブルにずらりと並んでいる。
豚の丸焼きがこんがりと焼けて、テーブルに置いてある。肉汁が皿に溢れて、食欲をそそる。
美味しそう。ごくりとツバを呑む。
他には、白いご飯が煙を立てて、暖かさを感じさせ、山盛りのチョコレートとバニラアイスが、置いてある。君たちは食後な、と話しかけた。
「改めて娘を助けてくれてありがとう。ゴブリン5匹を一瞬で倒したそうじゃないか。将来大物になるな。どうかね? 是非うちの娘を貰ってやってくれないか?
スビアの父親が丁寧にお礼を言った。それに反応したのだろう、スビアが父親に驚いた表情で見つめた。
「ちょっとパパー! まだ私たち子供なんですけど、前の婚約者も勝手に決めたよね?」
「良いじゃないか、どうせ今回は、本気な癖に。命を助けて貰ったらこれはもう、嫁に行くしかない。」
「ちょっと、もう…マギもパパ止めて! 恥ずかしいよ。」
2人で盛り上がってる。俺はお腹空いてそれどころじゃ…結婚も何も、もうすぐこの村母さんと出ていくしな。
エルフだから年齢気にしないのか?
「ちょっと聞いてる? 何見てんの? ああ、お腹空いてるのね。」
エルフでも腹は減る。エルフで餓死した人いるのかなー。
「うん、お腹空いてる。話は置いといて、一緒に食べよう。」
「そうね、私も腹ペコ。」
スビアがお腹を指すって言う。
「それにしても…前の婚約者…ティミドゥスは、カスだな。親にも見放されたらしいぞ。」
スビアの父が突然、ティミを詰った。
「えっ? そこまでしなくても…一応救援は呼んでくれたので。」
見放されたって、ティミは子供だからな~まだ…そこまでする必要はないんじゃないか?
「…おお、あんなカスでも、擁護するなんて、君は聖人だ。ますます気に入った!」
酷い言い草だけど…確かに自分の娘を置いて逃げたら、俺が父親でも、同じ事思うだろう。
でもな…言っちゃ駄目だよな、カスはないだろう。
でも…こう言う強い事言う人に限って、いざことが起こると逃げ出すからな。ティミもそうだった様に。
ここは、はっきりと言うべきだよな? 前世の記憶があるんだ。ここは、黙ってないでいうぞ、よし。
「あのー、いくらなんでも…カスはないですよ。それは余りにも残酷というか…ティミが殺しでもしたなら分かりますけど。」
「じゃあ卑怯者に留めておくか。」
煙たそうにスビアの父が言う。
「確かに聖人ですけど、スペルビアには、ティミドゥスが相応しいですよ、ねぇ、マギ?」
レニスが焼き鳥を食べながら、俺に近づいて言う。
「相応しいかは、本人達が決めれば良いんじゃないかな。俺がそんなの分かるわけないよ。」
手を振って俺は、レニスの言葉をかわした。
「確かに…さすがマギ。見事に論破されちゃいました。マギって大人だよね。好き。」
ん? レニス…最後の好きは余計じゃないか?
「急に好きって、どうした?」
「ふふ、前からマギのこといいなって思ってました。今回の事で、確信に変わったんです。」
何が確信? 俺の強さ…? いや…いいなって事は、素敵な男だと確信したって意味だよな。
「そ…そうか。ねぇ母さん、まだ俺気になってた事があってさ。」
俺はご飯を食べてる母さんに話しかけた。
「なぁに? もう、さっきいっぱい喋ったじゃん。どんだけ私のこと好きなん? マザコン?」
「マギのマザコン! いい加減親離れしなさいよ。」
スビアが貶す。
確かに中身は転生してるけど、体の年齢は、8歳なんだが?
「いや、俺まだ若いんですが。まだ離れてなくていいよ…なぁレニス、2人でマザコン呼ばわりしていじめるんんだけど?」
「ヨシヨシ。可哀想。いっぱい慰めて、守ってあげます。」
女の子に頭を撫でられて喜ぶ、前世の記憶を持つ8歳…いや…今は8歳だから。
ってさっきから歳のことばかり気にしてるな。
それはそうだろうな…前世の記憶と、今の状態…いまだに慣れてない。俺は一体何者なのだろう…子供なんだろうか? それとも…
「レニスは優しいね。」
彼女にお礼を言う。
「ふふふ…ありがとうございます。マギも優しいですよ。」
レニスが微笑んで、優しい声で言う。
「こいつー! 調子乗って、マギから離れろ!」
「いやどす。」
2人がいがみ合う。えっと…どうしたら良いのかな…俺は呆然と立ち尽くす。
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