エルフに転生した俺は、クズ野郎をぶっ飛ばす!

タカユキ

文字の大きさ
上 下
5 / 36

エルフの本能

しおりを挟む
 ※※※

 今日は高校生になって初めて、女友達と二人で遊びに行く。凄く嬉しい。行く前から何だかわくわくしてる。こういう事したかったから。でも、今日私が遊びに行くのを知っている恩田さんは、やっぱりというか、私が家を出てからずっと、監視をつけていた。電柱や家の影からこっそり覗く数人の人影。昔の私なら分からなかっただろうけど、今は慣れてきたのもあってさすがに気づいてる。

 ……仕方ない。できるだけ気にしないようにして、明歩とのデートを楽しもう。恩田さんの言う通り、これが最初で最後かも知れないし。でも、こんな状態なの、何だか明歩に申し訳ないな。一応そういう人達いるかも、って明歩には事前に伝えておいたけど。

 待ち合わせ場所は自宅から、自転車で十五分ほど走ったショッピングセンターの前。だから今日は私も明歩も自転車で待ち合わせ。あ、あれ明歩かな? 私が声をかけようとすると、先に明歩が私に気づいた。

「え? 美久……だよね?」でも疑問系だ。という事は上手くいったな。良かった。

「うん。言われた通り地味な格好で、顔も帽子被ってわからなくしてきた……って、明歩派手過ぎない?」改めて明歩の姿に唖然とした私。

 G生地の超ミニのタイトスカートに、ふくよかな明歩の胸を強調するようなピッチピチのTシャツ。大きめのゴールドのイヤリングに首からはチェーンネックレス。しかも化粧もかなり濃い目。……まるでわざと目立とうとしてるみたい。

「そりゃそれが作戦だからねー」とニッコリする明歩。作戦? どういう事だろ? 

 そしておもむろに、アーケード街入り口の上についてる時計を見て「まだ間に合う」と呟き、それからあちこちをキョロキョロしだす明歩。やっぱいるね、とか言ってる? あ、監視の人達の事かな。

 そこで私に「スマホ見て」と、声を出さず口をパクパクさせて伝える。どういう事? 声出せばいいのに、と不思議に思うも言われた通り、スマホを出して見てみると、つい「え?」と声が出てしまった。

「じゃあ自転車停めに行こう」でも明歩は何ともないと言った表情で、自転車に跨がり駐輪場に向かう。私も黙ってそれに従う。けれど、

「行くよ!」といきなりペダルに力を込め、全力疾走する明歩。私も急いで付いていく。駐輪場の中を抜けていく私達。一方のんびり構えていた監視の人達は、私達の突然の行動に、慌てて走って追いかけてきた。でも、明歩は事前にこの辺りをリサーチしてたみたいで、車が入れない、更に土曜でかなり人通りが多いアーケード街の中を、自転車ですり抜けていく。監視の人達は人混みに邪魔され私達に追いつけないようだ。急いで車に戻って追いかけようとした人達も、これだと多分、私達が何処に行ったか分からないだろう。

 暫く二人、全力で自転車で走らせ、それからとある建物の陰に明歩が隠れた。私もついでそこに入っていった。「はあっ、はあっ、……ふう、ついて来てないね」と、明歩は息を切らせながら、そーっと物陰から覗く。

 そう。明歩は私が監視されてるのを知って、彼らを撒くよ、と私にlineで伝えてきた。驚いたのも束の間、明歩はすぐ行動に出てしまったから、私もつい付き合ってしまった。

 それからすぐに、私のスマホがバイブする。だけど明歩がすぐ私からそれを奪い、電源を切った。

「あ、明歩。それはさすがにまずいよ」「今日くらいは大丈夫だって。せっかく遊びに行くのに監視されてちゃ楽しめないっしょ? てか、今日の目的はここなんだけどね」今日は六月の下旬。暑い盛りに全力で走ってきたから、明歩も私も汗だくだ。明歩はその建物を見上げニヤッとする。

 今度は明歩のスマホがバイブしたようだ。画面を見てすぐ出る明歩。

『何処行ったの?』「それ言う必要あります?」恩田さんの声が明歩のスマホから漏れ聞こえてきた。結構大きな声。怒ってるのが分かる。

「そもそも、監視つけるとかおかしいっしょ。女子高生ストーカーするんすか?」『何言ってるの? 美久に万が一の事があったら……』「それはまず大丈夫っすよ。心配要らないっす」

『どういう事なの?』と言う恩田さんの声が聞こえたけど明歩はすぐ切った。

「よし! じゃあ行こう」ふう、と息を吐いて明歩は私を建物の影から出るよう促す。そして改めて建物を見てここが何処か分かった。

「ねえ、明歩。ここって……」「そう。市民体育館。空手大会があるんだよ」

 ※※※

「あ! 雄介ー! 頑張ってー!」

 明歩が一段と大きな声で三浦君を応援してる。その黄色い声援を聞いた、ちょっと離れたところで固まっている何処かの高校の男子部員達が一斉にこちらを見てる。……怨念とかやっかみとか妬みとか、色んな感情が入り混じってるね。

「てか明歩。余り大きな声だと目立つよ」「あ、いっけなーい」私が小声で注意しテヘヘと頭を掻く明歩。まあ、愛しの三浦君がこれから出るんだから、つい声を張り上げちゃうのも仕方ないよね。でも周りも結構声出して応援してたりするから、明歩の声紛れて聞こえていないかも? あ、でも三浦君、こっちに手振ってる。それに気づいた明歩もブンブンと嬉しそうに手を振り返す。何だか微笑ましくて羨ましいな。

 でも空手の試合ってこんな風に沢山の高校が集まってやるんだ。そう言えば私、部活動の大会見るの初めて。ついあちこちキョロキョロしてしまう。会場はかなりの熱気が充満していて、でも私達がいる観覧席は上の方で窓が全開なのもあって、風が吹き込んできて暑さは若干マシかな? 下の会場はもっと暑いんだろうけど。

 あ、三浦君が勝った? 相手選手が蹲ってて旗持った審判が、三浦君を指さして何か言ってるし。でもさすがイケメン三浦君。空手道着も様になってて、普段の練習と違って一段とカッコよく見えるね。とか思ってると、明歩が突然抱きついてきた。「キャー! 雄介勝った勝った!」そうだね、嬉しいよね。でも明歩、さすがに暑いし汗ついちゃってるよ。

 そこで急に会場がざわめいた。何かな? と明歩を引き剥がしながら騒ぎの中心辺りを見ると……、武智君がこれから試合するみたい。あ、そうか。きっと武智君だからかな? 昨年二年生ながらに準優勝したから。

 試合場に上がり「押忍!」と武智君の声が聞こえてきた。そう。武智君の試合になった途端、辺りが静かになったから、武智君の声が聞こえた。凄い。こんなに注目されてんだ。そして武智君、真剣な眼差しで相手選手を見てる。鋭い眼光。普段の優しい雰囲気とは全然違う。

「はじめ!」の審判のコールで武智君と相手選手が互いに軽やかにステップを踏み始める。と一瞬、武智君が相手選手に近づいたかと思ったら、その場で相手選手が膝を折って倒れ込んだ。……速い。何があったか分からなかった。途端、おおー、と歓声が上がる。

 武智君が「押忍!」と試合終了して挨拶して降りてくるさなか、チラリとこちらを見た。つい、小さく手を振っちゃった。あ、武智君、私を見てニコリとしてくれた。

 試合の時はあんなに凛々しいのか。練習は見た事あったけど、試合とは全然雰囲気違うんだ。……どうしよう。かっこ良かった。つい私も興奮しちゃった。そしてさっきの笑顔が可愛くて、そのギャップもいいな、武智君。

 それからも順当に武智君は勝ち進む。前評判通りの実力に、どうやら周りの選手達は舌を巻いていたよう。一方の三浦君も、武智君ほど余裕はなかったけど、何とかぎりぎり勝ち進む事が出来た。明歩は三浦君が攻撃を受ける度ハラハラし、勝つ度私に抱きつく。汗だくで。その都度明歩を引き剥がすのが若干大変だった。因みに武智君は一切攻撃を貰っていなかった。やっぱり強いんだ。凄いなあ。

 でも、来て良かった。武智君の戦ってる姿見れたし。隣では三浦君が勝って感激して泣いてる明歩。……本当、明歩には心底感謝してる。

「明歩。ありがとう」「グズ、ヒック。え? 何が?」

「今日ここに連れてきてくれた事」「グス。なあんだそんな事か、ヒック」

 泣きながら微笑む明歩にクスリとする私。明歩は私の気持ちを知ってる。だからこそ、ああやって監視を振り切って連れてきてくれた。事前にあれこれ調べてくれて。もし、空手会場に来るって恩田さんが知っていたら、間違いなく今日、明歩と遊びに行くの止められてた。それを分かってて、色々下準備してくれた明歩。

「私も何か、明歩にお返ししたいな」「本当? じゃあ今度美久の家に連れてってよ」

 そう言われて固まってしまう私。友達を家に連れて来た事、そう言えば一度もない。でも、明歩なら来てほしいな。

「そうね。それでお返しになるなら」「オッケー、約束だよ!」そう言ってまたもこの暑い中抱きついてくる明歩。もう明歩の汗が私にこびりつくのは諦めた。更に遠慮なく頬ずりしてくるし。私は明歩のペットじゃないよ。

 そして後片付けしてる武智君達を見ると、三浦君と共にこちらを見てた。またも小さく手を振る私に、武智君はグッと拳を突き上げた。何よそれ? 無駄にかっこいい。つい頬が赤くなっちゃった。もうこれ以上、武智君への気持ちを大きくしちゃいけないのに……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...