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タカユキ

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アキラとカノン2人の関係

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「アキラ! だらしなすぎる!
今日という今日は、許さない。」

カノンが布団に入ってゴロゴロしていた俺を怒鳴りつける。

「なんだよ~俺は伝説の遊び人だぞ? 職がそうなんだから、俺は呪われてるんだよ。」

だらしない。それは分かってても、治らないよ。諦めて欲しいなと、布団に隠れる。

「知るか! そんな呪いあったらレイナに解いてもらいなさい!」


「知るかってちょっとは寄り添ってくれよ~。」

布団から顔だけ出して俺は言った。

「そんな優しさ、現世に捨ててきた!」

顔を赤くして彼女が口をへの字にさせて言う。目も赤いから、鬼の様だ。

でも正直よく見ると、可愛いのだ。微笑んでくれることがほとんどないから、そう思わないだけで。

「身も蓋ねーよ! 
…なら1からその優しさ今日から作っていこう。というわけで、おやすみ~。」

俺が言うとカノンが布団を剥ぎ取った。

「残念作れません。さぁ、起きてご飯作るのまず手伝いなさい!」

人差し指を立てて言う姿は、まるで教師の様だ。

「ひぇ~無理! カノンは無理難題を仰る。これだから、お局様は。」

「お局様? 結構傷ついた…ああ言ってしまってはいけないことを口に出したわね?」

彼女が手を顔に当てて、目だけは見えるようにして言う。

カノンの真紅の瞳は綺麗だなと、叱られているにも関わらず、リラックスしてしまった。

「すみません謝るので許してください。ってことでお食事頑張って下さい。」


「誠意は言葉ではなく行動よ? さぁ料理を手伝うんだぞっ。」

カノンが微笑んで言う。天使がそこにいた。

けれど、キレる寸前なのが伝わった。
いやもうキレてるのかもしれない。

急に喋り方を変えてくるなんて、恐ろしいぃ。

なにか、何かないか? 料理の手伝いをしない方法、考えるんだ!

「確かに誠意は行動だな。なぁ提案があるんだけど、俺はギルドの依頼をしてお金を稼ぐ。
カレンは料理を頑張る。」

これでどう? 別に問題はないだろ?

「問題ない? んーなにがだろ? ギルドの依頼私も出来るよ? アキラもご飯は食べるよね?
自分だけしないなんて、私なら情け無くて泣きたくなるけどな~。」

彼女が笑顔なのに、顔がひきつってる。

駄目だ! カノンにギルドの依頼をさせて、怪我でもさせたら…って言い訳してもレイナに回復とか言われるし…どうしたら良い?

思案するんだ、人生最大の危機なんだぞ!
自分に言い聞かせ、俺は対策を考えた。

「分かった、料理人を雇う。俺のギルドで稼いだ金を引いて貰って構わない。
それで決着だ。」

胸を張って言った。これで良いだろ? 彼女の顔を恐る恐る見る。

「ふぅ~アキラあのね、なんでもお金で決着させるような男の人ってどう思う? 最低だと思うの。私はそんな風になって欲しくないの。」

カノンが顔を伏せて言う。

「料理したくないって気持ちは分かる。でもそれでいつまでも逃げてたら、孤立すると思う。
私は料理するね、手伝いたくなったら来て。
待ってるから。」

伏せた顔を俺に向けた。そんな悲しそうな表情しないでくれと、俺は胸が痛くなる思いで、彼女に謝りたいと考えた。

だけど、それは言葉だけ。行動で示せと彼女はさっき言ったばかりだ。

俺はベッドから出て、ダイニングキッチンに向かった。

「アキラ…来てくれたんだ。」
カノンが目を輝かせて微笑む。

当然だろ? 来ないなんてそんな薄情なこと出来ない。
手伝うよ、嫌これは言われてされるみたいだ。なら手伝わせて下さい? これも卑屈過ぎる。


「ああ、カノンと料理したくなったから、一緒に料理作ろう!」

「うん、一緒に楽しんで料理しよう。」
カノンに教わりながら、俺も笑顔で彼女と料理に励んだ。

目を背けず、俺は逃げずに立ち向かったんだ。

「あれ? アキラって料理出来るの?」

彼女が目を見開いて言う。

「実はさ、料理のバイトで働いてて、やれるんだよ。」

俺はカノンに事情を話した。

バイトで全然仕事が出来ず、毎日叱られて仕事するのが嫌になっていた。

けど学校では、頼られる存在。そのギャップに苦しんでいた事を彼女に伝えた。

カノンが手を握って優しく言う。

「そうだったんだ…もう大丈夫だよ。この異世界にアキラを叱るような人がいたら、私が全力でアキラの偉大さを伝えてやるから!」

それを聞いて俺は涙を流して、彼女に感謝した。

カノンも涙を流していた。

「ふぅ~。私こそ、教えてくれてありがとう。アキラの重荷一緒に背負うから。楽しく今は料理しよ。」

そうだなと俺は頷いた。

他の2人がそう言えば見当たらないので、カノンに聞いた。

「ミウは1人で用事があるって出てったよ? レイナはいつものように図書館に行ってる。」

ミウが俺誘わないって事は友達と遊びに行ったか? レイナは本読むの好きだな。


2人の分も作っておくのか、カノンに聞いてそうしようと言われた。

「いつも有難うな、色々やってもらって。」

「んーもう! 泣かせないでよ…そう言われると、料理出来ないじゃない。終わってから聞かせて。」

泣くのか叱るのか…でもここは、そうだな、ごめんなと彼女に謝った。

カノンが手慣れた手つきで、テキパキと野菜を切った。そしてフライパンで肉を入れる。

今日は野菜炒めだ。

「あとお局様って言って悪かった。むしろその…良い奥さんなれるよ。色々言われてカノンの思いやりが身に染みよ。」

俺がそう言うと、彼女は横を向いて吹き出して、顔を赤らめていた。

「もう、どうしちゃたのよ? 照れるから!」

それは本心で言った。久しぶりだと、ぎこちないな。肉を切るのを手伝ったりしたけど、カノンの方がやはり早い。

それを見たら、尊敬したのだ。

先に俺たち2人でご飯を食べて、美味しいねーと、いつもより上機嫌なカノンだった。
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