上 下
24 / 37

ミウの葛藤

しおりを挟む
「アキラ~お腹空いた、ご飯食べに行こ?」

「嫌だよ、面倒くさい。ご飯作って俺適当に食べるから。」


「むぅ~分かった!」
そう言うとミウは、俺をお姫様抱っこして抱えた。

おい、何するんだとミウに聞く。

「面倒なんでしょ? このまま抱えてご飯食べに行く。」

恥ずかしいだろうと首を振る。

「私はなんとも思わない、抱えて行く。」

「思えよ! 無理だよ恥ずかしくて死ぬ。」

「じゃあ歩いて行く? 死ぬよりマシだよね?」

歩いて行くのだるいと断る。他の3人はご飯を食べたのだろうか?

「カノンやレイナとセレーネは?」

そうそう、セレーネの玉の事ギルドのお姉さんに聞いたら、普通に食べ物入れられるらしい。

考えてみれば当然か。玉から出すには魔法以外に指に掴ませて出す方法以外ない。

そうすると間違えて入れた場合餓死するないものな。

それと強盗に襲われた理由が、ミウが借金踏み倒したやつが依頼したようだ。


「もう朝食べたよ。アキラはお寝坊さんだから、こうして誘ってあげてるんじゃん。」

「そりゃ結構。じゃあ作ってくれよ、手料理俺に。」

「駄目食べに行くの!」

「そう言う気分じゃないんだよ。」

「そんなに私とご飯食べに行くの嫌なんだ?」

「違うよ~そうじゃないけどさ。」

「いらいらするぅ! このまま抱えてどっか捨てるかな。」

結構計算高い人間の癖に、短気なんだよな、彼女は。

「捨てる? ペットじゃねーんだから、辞めて。」


「ペットよりタチ悪いよ。完全にキレた!」

ミウの表情が眉間に皺寄せして、頬を膨らませていた。

「短気すぎるんだよ、勘弁して。」


「アキラには私の機嫌直す責任がある!」

なんの責任だよ…自分で起こってるだけだろう。
渋々俺は折れる事にした。

「分かったって、もう行くよ~やれやれだぜ!」

「初めからそうして! やれやれはこっちの台詞なんですぅ!」

ミウに怒られたので、用意を整えてから外出する事にした。

「一応きちんとして行くわ。」

ありがとうですぅ、私も準備しますん!

それから、30分過ぎ、1時間たった~なっげ~! いつまで準備てんだやつは。

呆れてため息が出た。

ああーもう、異世界だからスマホがないから余計長く感じる。

俺は呆れてミウの部屋に向かった。

ドアをノックして、まだかとか聞いた。

「まだ~入って良いよ。」

俺は部屋に入った。

ピンクとグレーの色彩がとても綺麗な部屋だ。

布団がピンクで枕の横には、手作りだろうか?
可愛いあるキャラのぬいぐるみが置かれていた。

このぬいぐるみが彼女に過ごす時間、寄り添っていたのだろうか?

真の友達だろう…何も文句も言わずに愛くるしい可愛さを振り撒いているのだから。

ベッドに座って、悲しそうに俯いてるミウがいた。

「どうしたんだ?」

「うん、待たせてごめん…親に叱られたこと思い出しちゃって。」

涙声で彼女が言った。

「そうか…つらいな。」

「うん、頭がぼっとしてて。」

俺は隣に座り、どう話しかけるべきか、天井を一瞬見る。

「話して楽になるなら、その…聞くぞ?」

無理矢理こねくり回して出た言葉だった。

「私ね、中学の頃は優等生で良い子だって先生にも言われててさ、親に暴力振るわれて、それで
高校で1番良い女子高受験したんだ。」

「そこに受かれば認められて、暴力無くなるんじゃないかなって。そしたら受験失敗。」

「そこから何か壊れて、私人生どうでも良くなって、高校もどんどん成績悪くなってさ。」

ミウが手を組んで、首を傾げた。

「私悪い子になっちゃったけど…これからもパーティ居て良いのかなって。」

気にするなと俺はミウを慰めた。

「今も良い子だぞ、ミウは。」
俺は思ったことをありのまま言葉に出した。

ミウが水鉄砲受付のお姉さんに喰らわせたのは、注意されて親の暴力がフラッシュバックしたのかもしれない。拒絶反応がそうさせたのだと俺は考えた。

ミウからの説明によると父親からは、勉強しろと激しい監視が付き纏い、拒否すると物にあたり、母からは食事を抜きにされて、腕を折られたり…何故そんな勉強を強要したんだと聞いた。

自分が出来る人間だから、私にも強要するんだよと言った。母は操り人形。

だから私は、人を操るのは良いけど、操られるのはもう嫌だと言った。

自己中な彼女らしいな。

「ありがとう…私はアキラを捨てようとしちゃうんだよね、どうしても。
でも、アキラは私の事捨てないで、お願い。」

彼女が震えて抱きしめて言う。

ちくしょう、なんで俺泣いてんだろ?
勝手なこと言われてるのに。

ミウの生い立ちに胸が締め付けられる。俺が彼女の立場だったら…涙が頬に伝わり手の甲でその涙を受け止めた。

服で涙を拭い、ミウも辛いんだと思い直した。
彼女の強さに俺は泣いたんだ、決して同情だけじゃない。

顔を上にあげて、ぐっと涙を堪えて彼女に視線を投げかけた。

何か込み上げる感情を押し殺そうと頑張ったが、それが逆に抑えきれずに声が上擦った。

「ああ、捨てないよ。そんな不安消し飛ばしてやるから、ご飯食べに行こうぜ。」

「…うん!
アキラから免罪符頂きました!」

「宗教? 俺そんなのあげた覚えないぞ?」

「ふふふ、例えですぅ。アキラには高度な例え過ぎましたか。」

俺はそうだな、高度だったと素直に言う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

処理中です...