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ゴブリン襲来

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村についてまだ、俺はミウと話していた。

「もしカノンの魔法、見破られて避けられたら?」  

カノンが狙っているのをアルバートが、上手く回避したらどうなっていたかを聞いた。

その可能性はあった。もちろんミウのこと知らない彼がその予測を立てるのは難しい。

カノンも正義感高い子だけれど、仲間の命を優先する子だ。


「計算に入れてますぅ。避けようが何しようがあの時はもう、彼は詰んでしまたぁ!」

つまりあの場面で避けても、ミウのスキルで倒せてたってことだろうか?

「そもそも彼は戦う前から詰んでました!」

ミウがその理由を俺に説明し始めた。
「セレーネと一緒に連携して戦うべきでした。やられてから1人で来た時点で、勝負はついてましたん。」


「ほぇ~。凄い戦いだな、ミウ狡猾だもんな。」

思わず驚嘆の声を上げた。
相手も人質を取ったりして、その人質が実は敵だったり、色々計画はしていたんだが…彼女の方が上手だな。

「フフ、狡猾って褒め言葉と受け取りますけど、私が言いたいのは、舐めプの恐ろしさを言いたかったのですん。」

「舐めプしてた癖に。」
スキルをどんどん使って相手に反撃の隙を与えないぐらいの事は出来たと思い、呆れを含んで言う。

「私でもしてしまうのですぅ。それが怖いところですん。」

ミウが舐めプしたのではなく、相手に本気を出させないためにやったのも理由というが、それは嘘だな。


ミウが本気になればアルバートをすぐに倒せたはずなんだ。

舐めプとは違う…ミウは本気を出せないんだろう。なんだかんだで冷酷なことを言いつつ、根は優しいのだ。

その優しい面が力にブレーキを与えているのだろうと推測する。

だから本気でやるとしたら、仲間の誰かが傷つけられたらだろう。

ミウが簡単に倒せたと思う根拠は、俺もアルバートに本気を出せばすぐに倒せたからだ。

セレーネに受けた攻撃で受けて手に入れたモノマネ時止めを使い、光速移動後に攻撃…だけどそうしなかったのは、俺の甘さのせいだろう。


「へへ、その洞察は一個間違いがあるな。」


「間違い?」

「2人で来ても、俺たちが勝ったよ。どっちかをスキルで閉じ込められるからな。」

俺はそれでも俺たちの優位は変わらないと主張した。

「甘いですぅ~! セレーネは時止め魔法を使えるので、連携してればまず、アキラがスキル使う前に死んでました!」

それは、悲観的過ぎる。一撃では死なない、レイナが回復すると俺は彼女に視線を向けた。

「あらあら、仲良しですねぇ。まだお話ししてたの?」
 
レイナが意地が悪いと感じさせる目をして言った。

「レイナとはすぐ会話終わるのに、アキラってば私のこと好き過ぎですん。困りすぅ~。」

ミウが両手を頬に当てて、体を横にクネクネさせていた。

「チッ!」

レイナが舌打ちをした。

今舌打ちしましたぁ? 本当のこと言って傷つけてしまいましたぁ~。


「くうぅー! 別にアキラが…大人の対応してるだけよ。好きすぎとかミウ自意識過剰だしー。ふん!」

「そうなんですか、アキラ? でも会話がすぐ終わるってことは~あれあれ? 私が好かれてないなら、レイナは子虫みたいな存在?」


「こいつ! 八つ裂きにしてやる! んもう。」


「あんた達、暇なら祭りの準備手伝いなさい!」

「村の英雄である私たちが、準備するのはちょっと違うって村長が言いたそうにしてますぅ!」

「なんだそりゃ。勝手に話作るなこいつ!」

カノンとレイナに挟まれたミウが、俺に視線を投げかける。


フゥ~俺は深呼吸をしてから言った。それはある意味で、空気を吸うというより、空気を読むと言ったほうがいいだろう。


「3人とも、祭の手伝い行ってらしゃい!」

俺は照れながら言った。


「おめぇは行かねんかい! 」

カノンが苦笑いしつつ、江戸っ子口調でツッコミした。

「行きます…行かせていただきます。」

あぁ、失敗した。ここは村の人たちに任せて俺たちは警護に回ろう。そう言えば良かったのだ。

後悔の念に苛まれつつ、足取り重く、祭の会場に着いた。

「なんで私たちが手伝うんですかぁ? 弱ちぃ村の人たちに全部任せれば良くないですかって、アキラの顔がそう言ってますん。」

ミウが言って、カノンが即座にツッコミをする。

「それ、あんたが言いたい事でしょ! 本当にしょうがない子。」

「ふぅ~ミウ、ここは大人になろうぜ。祭りのお手伝いして、この異世界の文化を知るって言うチャンスじゃないか?」


「アキラが…まともになりましたぁ! 私もそう思いますけど、急になんですか? どういう心境の変化ですか?」


「カノンは言われてないのに、手伝いをしている。大事な仲間1人で任せて俺たちは何もしない。それは間違ってると…考えたんだ。」


「アキラ…んもう好き。いつもそんな感じでいなさいよ。もー!」
カノンがパンと俺の背中を叩く。


祭りが始まった。蝋燭の灯る火が、風になびいて小さく動く。その横には、貢物の様に大きな恐竜程の大きな頭蓋骨が飾られていた。

その頭蓋骨の中にはベロはもちろんなく、代わりに皿が敷かれていて、その中には綺麗なコインが散りばめられていた。

この頭蓋骨は昔村の英雄が、熾烈な戦いで倒した魔物だと言う言い伝えがある様だ。

ど~んと太鼓の鳴る音が聞こえて、そちらに振り向くと、着飾った衣装を見に纏った人々が軽やかに踊りを披露していた。

どうやらこの踊り、ただの踊りではなく大変興味深い意味があるそうだ。

その村の英雄を讃える踊りなのだそうだが、その踊りを踊っていた女性に一目惚れし、彼女を守る為に魔物と戦ったそうだ。

そして…その踊りを披露した村はその年とても豊作で、悪いことが起きなかったそうだ。

魔除けみたいなものだな…踊り子の赤いベールが妖艶な雰囲気を醸していた。


ふぅ、腹が空いたな…そう思っていると、カノンがご飯の用意が出来たと声を上げた。

ちょうど良いタイミング。チーズの匂いが風に運ばれて来た。

そちらに行くと子供達の騒ぐ声が聞こえた…騒音ではなく、むしろ場を和ませる平和の雄叫びに聞こえた。

異世界の経験からだろうか? 子供達が静寂だと、何か不安を感じるのだ。

そして、火のバチバチとする音と、煙の匂いと混ざった肉の匂いがしてきた。

俺みんなと食事を満喫した。

すると何やら異臭を感じた。

この匂いどこかで嗅いだ気がする。

服を摘み、自分の匂いでないことを確認した。

俺は匂いのする方に向かった。

「なんだ…ありゃ?」

入り口で見張りをしていた村人が意味深な言葉を発し、続けて言った。

「ゴブリンだ! 数は…おいおい、嘘だろ? 1千匹は…どんどん増えていってる。1万…いや、10万匹以上いるぞ。」

俺はそれを聞いてその場に立ちすくした。
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