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ミウ?対アルバート

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「何をしたの? この中は何よ? 魔法が全く使えないわ!」


戸惑いながらセレーネが手を動かして、魔法が使えないことを確認していた。

レイナが驚嘆の声を上げて俺を賞賛した。

「素敵! アキラあっという間に魔族倒しちゃった。手際の良さが見事ね。」

「当然よ。頼りになる男だもの。」
カノンが目を瞑りながら頷いた。

俺は照れて苦笑いをした。

「その玉貸してください! 握り潰しますぅ~。」


ミウが近寄って来て玉を奪い取ろうとした。

「それは可哀想だろ?」
俺はミウから玉を隠す様に手を上に上げながら拒否した。


「駄目ですぅ~! それは舐めプですん。時を止める魔族なんてすぐに倒さないと、危険ですぅ~!」

ミウが俺を説得する様に言った。その説明に俺は頷き、確かにその通りだと言った。


「ひぃ~! 嫌~! 殺さないでぇ。アキラ様お願いします。命だけは!」

セレーネが命乞いを始めた。

「駄目ですん。私たちを殺そうとした癖に、自分は殺されてくないなんて、我儘娘にも程がありますん。ここで死ぬのですぅ~!」


「くっ…確かに私は魔王軍最強の存在よ! だから殺すって言うのは分かるわ…良いわ、殺しなさいよ!」

「敵もそう言ってますぅ! けど、舐めプマンのアキラには殺せないですん。私が玉を握りつぶしますぅ~貸してください。」

ミウが見透かす様に俺に言った。
なんだよ、舐めプマンって。変なあだ名ばかりつけやがって。

「そうね、癪だけど…ここはミウの言う通りにすべきね。その玉を24時間見張るなんて不可能…魔族に奪われたら、復讐されるわ。ここはミウにやってもらいましょう。」

仲間の為にらしくないことを言ったからだろう。カノンが辛そうな表情をしていた。

俺は玉を抱え込んで、ミウに向かって言う。

「駄目だ、無抵抗な敵を殺すのは正義に反する。大体俺の力で封じ込めたんだぞ? ここは俺が生殺与奪の権利を持ってるはずだろ?」

「さすがアキラ! 頼もしい。私たちのリーダー。アキラが殺したくないって言うなら従いましょう。」

「むしろ味方にしちゃうんじゃない? このプレイボーイめ! このこの!」

レイナが微笑んで、肘で俺を小突いた。

俺は頬を赤らめて、自分の髪を触った。

ミウとカノンを見る。
カノンは納得した様にそうね好きにしなさい、と言った。

ミウは腕を組み唸っていた。

「そう言う事だ、良かったな。」

俺はセレーネに話を振った。

「フフ、なるほどね。つまり私をペットにするつもりだったのね。構わないわ、そっちのプレイも嫌いじゃない。」


彼女は楽天家なのか、それとも変人なのだろうか。なぜその思考になると玉を睨んで、すぐにクスッと笑みが溢れた。

まったく、殺されたかもしれないのに…呆れてしまうよ。

俺は彼女の複雑な感情に戸惑いつつ言った。

「でも、貴方は、私を守ったわ。心を許した訳じゃないけど、死ぬかと思ってそれが助かったら、一応そう考えるじゃない。」

彼女の感謝の言葉を聞きつつ、ある不安が胸に込み上げてくる。

…食事はどうするんだ? 玉の中に閉じ込めたままだと、餓死するよな?

まぁ、色々玉に入るかどうか、確認してみればいいか。


「さて、ゴブリンも退治した事だし、報告しに村に戻りましょう。」

レイナが俺の肩に触れて言った。俺は頷き、セレーネに暗くなるけど、玉をポケットに入れると伝えた。

「そうね、みんなお疲れ様!」

カノンが微笑んで言った。俺はそれに応えようとしたが、背後から聞き覚えのある声がした。

「そうはいかないな。何故なら君たちが帰るのは村じゃなくて、土の中だ。」

俺は向き直ると、その声の主人はゴブリンのボスだった。白目になりながら焦げた身体で言う。

しかし驚くことに、そのゴブリンの身体から、人間が飛び出して来た。

いや、恐らく魔族だろう。見た目は俺たちと変わらない男だ。

セレーネといい、こいつといい魔族は体を借りるのが好きなのか?

「ふっ、情けないなぁ。魔王様の娘の癖に…所詮人間の血が流れてるだけあって、役立たずだったか。」

吐き捨てるように魔族の男は言った。

俺は軽蔑して言う。
「へっ、味方を罵る最低なやつだ。」


「ふん、無能な奴は味方じゃないんでね。さて…自己紹介を始めよう。これから殺される相手の名前を知らないのは、酷だろう?」

「俺は魔王様が配下、アルバート! 君たちの命をいただく!」

「戦う前に聞きたい。ゴブリンを使って村の人達を殺したのはあんたか?」


「ふふ、どうだろうね? 少なくとも俺は村に個人的な恨みがあるんだよ。だから、ここにいるんだけどね。」

アルバートって奴は、恨みがあって村の人達を苦しめるということで、俺は一体何があったかを聞いた。だが、そんなことは知る必要ない、死ぬからだと言い返してきた。



ミウがアルバートに向かっていった。右ストレートを繰り出し、それを軽くいなす様に、奴が右手で払った。

ミウのアッパーをかわして、左ストレートをアルバートが繰り出す。

それをミウがカウンターで右拳をアルバートの顎に直撃させた。奴がよろけて、地面に手をつく。


ミウの方が優勢だ。

アルバートが微かに笑った。
「軽いよ、そんなの俺には消しゴムを投げつけられた程度の痛みでしかない。」

消しゴム? この異世界、既に消しゴムも存在していたのか。いや、今はそれどころじゃないな。


「じゃあもっと殴られて下さい。100発喰らっても平気ですよね?」

ミウがいつもの屁理屈を捏ねた。

「ふん、笑わせるな。そんな持て成しをしてやるほど、俺は甘くないんでね。」


「そーですか! じゃあ私手加減辞めますぅ~。」

ミウが手を挙げて言うと、疾風の如く目にも止まらぬ速さで、アルバートをタコ殴りした。

彼女の目には闘志が宿り、表情は無表情だった。

手加減? こいつ…俺に舐めプ云々言ってた癖に、自分も舐めプしてるんじゃないか。

俺はミウに怒りを覚えた。

「かっは! ぺっ! ぐぬっ速さだけだ! 俺はこの程度ではやられないぜ。」

血を吐きながら、アルバートが言う。だがそれを無視するかの様に、ミウが連打を繰り出す。

完全に一方的になった。

弱いですぅ~。

「なんだと…ふざけるなよ、お前!」

「女子にお前呼びは、失礼ですん。」

「俺が魔族だと言うことを忘れるなよ? 今俺のスキルの力を見せてやる!」

「気をつけろよ、ミウ。」
といっても後ろには俺やカノン、レイナが控えてる。

もしやられそうになれば手助けするぞ。

カノンは目をつぶって、力を溜めている。

レイナは真剣に2人を見つめていた。

  
「はぁー!」
アルバートが地面に手をつき、土を凍らせていき、そしてミウの足も凍らせていった。
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