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脅威のスキル

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「何でそんなに敵を見つめてるんですか! 全くアキラは、マイペースね。」

レイナが回復しながらため息混じりに言う。

「いや、何するか分からないだろ? 慎重に敵の動きを探ってるんであって、見つめてる訳じゃない。」

俺は強く反論した。


「見よ、私の力を!」 

マジョリードが凄まじいオーラを身体から放出させた。
それにミウや、カノンは固まって身動き出来ないでいる。

「…なんで凄い魔力量だ!」
立ち上がりながら俺は、魔族の力の恐ろしい魔力差を実感しながら、声を上げて言う。

「ンフフフ、そうだろ! もっと褒めろ!褒めろ!」
マジョリードが俺に視線をやり、何度も褒めろと俺に言ってきた。

なんだこいつ! 変なやつだぞ。

「クック、聞きなさい! 私は時間を止められるのです。つまり無敵! どうかしら? 私が凄すぎて、尊敬せざるを得ないだろう? 人間!」

なんだと、時間止めだと? 強すぎるだろ?
どうやって動けるんだやつは?
魔族だから可能なのか。

だから攻撃に気が付かなっかったんだ。でもそれ言っちゃうってバカなんじゃ?

ここは褒めてやれば良いのか?

「確かに、時を止められる力を持ってるなんて、とてつもない強さだ。」

「フフフ、でしょう。貴方は分かっているようね。降伏するなら、貴方だけ殺さないでペットにしてやっても良いわ。」

天にも昇る心地を体現したように恍惚な表情でマジョリードが言った。

「ペット?」

「ええ、そうよ…殺されたくはないでしょう?」

こうなったら、インフィニティブレードでやつを倒すしかない。時間停止に対抗するには。

「でもさっき私の姿を見た人間は、みんな死ぬとか言ってましたぁ!」

ミウがツッコミをして割って入る。


「フフフ、作り話をするとは! 私を見たものは全員死んだと言ったのです!」

「おんなじ意味だと思いますん。」


「殺してはいません…誤解なきよう。」

「あんたさっき屍人形にしてやるって言ったじゃない!」

カノンが杖を突き出して言った。

「フフフ、この案内人、別の者に既にやられていたのです! 私はそれを借りただけ! つまり屍人形にしてやると言うのは、合っています!」

マジョリードが男の亡骸を指して言った。

なんだって! どういうことだ? 俺は説明してくれと、マジョリードに頼んだ。

「身体を借りて自ら率先してきたというわけです。」

別の者? それは冒険者だと言った。その冒険者はどうしたのか尋ねると、マジョリードは、そいつはボスが倒したと言った。

「マジョリード! あんたがゴブリンのボスじゃないのか?」



「私はゴブリンでは無く死霊を使っている。ゴブリンは臭いので、私は嫌いだ…そう別の魔族が使役しているのだ。」

なるほど、なら他にゴブリンを操る奴が裏にいるのか。そいつが村民みんなの仇だな。


「だがそいつの方が偉い訳ではないぞ? 私は魔王と人間のハーフ! つまり魔王の腹心そのものなのだ。」


凄い情報だ。魔王と人間のハーフか。時を止められるのも納得だな。

「へーそんな魔族が、使い魔の様にこき使われてるって訳?」

カノンが挑発する様に言った。

多分俺が推測すると、魔王の娘だからこんなとこに私たちを倒しにくるほど、こき使われてるって変じゃないかって意味だろう。

「なんですって?  使い魔…くー悔しい! 言い返せないのが…そうよ、人間の血を流してるから幹部だけれど、肩身が狭い思いしてるのが現状よ!」

肩を落としてマジョリードが言う。

肩身の狭い思いをしているから、褒めて欲しいんだろう。俺は彼女の複雑な事情を、垣間見た。

「さて、話は終わりよ。残念だけど、その男以外は、私に殺される運命には抗えないのよ。」

眉間に皺を寄せて神妙な表情で彼女が言う。

そうだな…敵同士俺は…しかし、人間の血を引いたやつを殺せるのか? 
やらなければやられるが。そうだ! 

俺はラムサスから奪った玉を思い出し、ポケットに手を入れた。

これを使えば、殺さずに済む…一時凌ぎにしかならないかもしれないが。

だが、名前はマジョリードで合っているのだろうか? 確認しなければならない。

「最後に聞きたいんだが、あなたの名前はマジョリードで合ってるのか? 殺される相手の名前ぐらい聞いとかないとな。」


俺はへりくだって言った。もちろん殺されるつもりはない。

「フフフ、私が強すぎるから諦めたのね。大丈夫貴方はペットにするから殺さない…けどそうね、飼い主の名前ぐらい知らないとよね?」

よく喋る彼女は、嬉しそうに、頷く。

「私の本当の名前はセレーネ、時の魔術師セレーネよ。」

セレーネが本当の名前…聞いて良かった。
だが時の魔術師まで名前に入ってないだろうな? 俺は再度聞くことにした。

「時の魔術師?」

「私の二つ名よ。凄いでしょ? 時の魔術師だなんて、ワンダフル! 拍手しなさいね?」

セレーネが高らかに言うと、レイナが拍手しながら、微笑んでいた。

ノリが良いな彼女は。俺は考えて自分も拍手したら面白いだろうなと同じ様に手を叩いた。

戦闘中とは思えないほど和やかなムードだ。

だかミウとカノンの白けた様な表情が俺たちの拍手を止めた。

カノンは分かるけど、ミウまでそんな目で見るなと俺は伝えた。

「戦闘中に遊んでるの見てアキラはやっぱり、遊び人だと思っただけですぅ。」

なるほど、職業が遊び人の俺の行動に、少し呆れたのかなと、ふと思った。

だけど…遊んでるだけじゃない。見せてやるよ、ミウ、カノン。俺の実力をな! 俺は笑みを浮かべて、玉を取り出した。


「フフ、貴方笑ってるけど実力はさっきので分かったつもりよ。時間止めて攻撃したのに、死ななかった。魔族の頑丈な身体でも破壊できるのに。」

セレーネが言いながら俺を指差した後、腕を下ろして一歩ずつ、俺に近づいて来た。

雑草の音が微かに聞こえた。
ミウが今にもセレーネに飛び掛かろうとしていた。

カノンも警戒しながら、杖をセレーネに向けた。

彼女の魔力の圧が俺を圧迫する。だかその圧は本気を出したカノンと互角だろう。その圧迫感に慣れていた俺は気を取り直し、彼女の名前を叫んだ。

「セレーネ!」

「なに…?」

返事をした彼女の身体が、玉に吸い込まれていった。
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