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タカユキ

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ゴブリン退治

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「ではゴブリン退治に行ってきます。」

俺は村長に挨拶を交わした。服は帰ってきてから返して貰いたいと伝えた。

「その前に少しお話がしとうござます。」
眉間に皺を寄せて、村長が厳しい表情で言う。

「話し?」

俺は陽射しで暑さを感じながら、彼の目を見つめた。咳払いをして、呼吸を整えた。

「ええ、私たちが受けたゴブリンの被害の惨状を伝えたい。もしゴブリン退治が成功すれば、報酬は弾みます。」

子供達の笑い声が聞こえた。しかし、それとは裏腹にゴブリンの被害の痕跡がそこにはあった。

家々が所々に血痕や、でこぼこした痕がこそにはあった。
 
それを見て俺は、何か胸に込み上げるものを感じた。

「被害の惨状ですか…分かりました、その話詳しく聞かせて下さい。」

「ありがとうございます…私たちの村はそれは賑わっていました…ですが、ゴブリンが付近の洞窟に住み始め、村の娘達が攫われそれを防ごうとした村の男達が…惨たらしく…亡くなりました。」

彼の瞳が寂しく光を放ち遠くを見つめる。

「大変な目に遭われたんですね。」

俺は労わるように言った。

「ええ、中には結婚を控えていた者もおりました。それは幸せそうにしておりました。その笑顔が今でもくっきりと目の前に…うぅ…すみません…涙が止まらない。」

村長の涙に、俺は目頭が熱くなるのを感じた。

「いえ…俺も…涙が溢れて来ます。」



「私の息子も…妻と子供を残して…名誉の死を遂げました。どうか! お願いします…無茶はして欲しくはありませんが、何卒ゴブリンを倒してくだされ。」

村長が頭を下げて言う。


他の仲間には聞かせられないな…こんな話は…みんなの表情が曇るだろう。

「分かりました! 必ず俺たちが、村の皆さんの仇を討ちます!」

俺は村長に約束した。


彼も歴戦の魔道士だと言う。しかし今は衰え、軽い呪文しか使えないので、あなたに託すしかないと…悲しみを宿した瞳に俺は任せてくださいと、返した。

村長が案内人を紹介した。この村で1番の戦士で何度も案内を頼んでいると伝えられた。

しかし、誰1人帰って来なかったそうだ。

俺は念の為に、入れ違いにゴブリンが襲って来たらどうするのかと聞いた。

そんな強い人がいなくなったら、大変だ。

村長はそうなれば、脱出口から村民を脱出させられると言った。

俺は安心して、彼に道案内を頼んだ。

村の人から案内された。
洞窟が奴らの住処になってると伝えられた。
彼は怯えた様子で洞窟を指し示す。

あとは俺たちでやるんで、危険なので帰って大丈夫と伝えた。  

ありがとうございますと、お礼を言われた。

何か手をモゾモゾしてる仕草が、気持ち悪い人だと思ってしまった。

何かを企んでる、そんな気配すら感じる。
ゴマスリでもしようというのかな。

しかし、目の奥に不気味な光るものを感じる。
まさか、彼女達の誰かがタイプなんじゃないだろうな?

俺たちがゴブリンにやられるだろうと、見下しているのかもしれないな。

…さて、気合を入れて突き進むと中は、案の定真っ暗だ。
松明ぐらい持って来れば良かったな。

何も見えないって程ではないが、これでは突き進めないので、カノンに火の魔法で少し明るくしてくれるよう頼んだ。

彼女が火を灯すと洞窟がほんのり明るくなった。

進んでいくと早速ゴブリンが複数現れた。

ゴブリンの身のこなしは見事だ。ウサギのようにピョンピョン飛び跳ねる。

俺はすぐさま短剣を引き抜き、鞘を持つ手を握りしめた。


ゴブリンの深淵を覗き見ながら、活路を見出し、ナイフの擦り切れた布が風で揺れる。


大自然が作り出した鍾乳洞から、水滴が落ちた瞬間、俺は剣を振りかざしゴブリンを斬った。

まずは一体討伐完了。

「きゃっ! ゴブリンに変なところ触られました。」
ミウが軽い悲鳴をあげた。

「なにぃ! ゴブリンめ、羨ま死刑罪だ。」

「もう私がやりました、裁判にかけるまでもなく。」

「そうか」
俺は胸を撫で下ろした。

「うわ、俺も触られた! 俺のGカップの胸を触ってきたぞ!」

「そんな報告いらん! なによGって、Aでしょーがあんたの。」
カノンがムスッとして言った。

「ごつい胸って意味だぜ!」

「知らん! ゴブリンこの変態倒して!」

おい、カノン! 敵応援すんなって言った側から応援してるじゃないか!

「あら、ゴブリンより厄介な味方がいるようですね。」
クスッとアイリが喜んで言った。

油断を狙ってゴブリン3体が同時に俺を攻撃してきた。

それを左に飛んで避け、ゴブリン3体が同じ列に並んだ瞬間を狙い、首を刎ねた。

「お見事。」
レイナが拍手して褒めた。

そして俺たちは更に洞窟奥に進んだ。

すると明かりが灯っていた。
見るとランプが設置してあったからだ。

ゴブリンのボスでもいるのか?
そう思いながら進むと、巨大なゴブリンが姿を現した。

また殺されにバカが来たか。
人語を喋るゴブリンか、そんなのがいるなんてな。
俺は驚きを隠せなかった。

「どうかな? あんたすぐにやられると思うけど?」
俺は挑発した。

「くくく、見ろ!」
ゴブリンのボスが、指し示すところに女性とゴブリンがいた。

女性にナイフを突き立ていた。 
人質か、だが俺たちには上手い作戦とは言えないぜ?

光速遊びで人質を助けて、ミウのステルスでゴブリンを倒すか。


何をニヤッとしてやがる?

さぁ、分かったら武器を捨てろ!
ボスゴブリンが命令する。

「人質なんて放っておこう。全滅しちゃうからさ。」
ミウが冷たく言い放った。
ボスゴブリンがそれを聞いて顔面蒼白になった。

「待て待て、早まるな。流石に人質は助けよう。」
俺はミウを止めた。

「何か手はあるの? 人質即死じゃなきゃ、レイナに回復してもらえばいいよ。賭けに出よう。」
ミウが小声で俺に囁く。

「ある! 水鉄砲を貸してくれ。」
俺は背後にミウをやり水鉄砲をもらい、ズボンの後ろに掛けてシャツで隠した。

「おい、俺は手を出さない。ボコボコにして良いから、人質には手を出すな!」
両手を挙げて、ボスゴブリンに近ずく。

「ふん、見上げた根性だ。何を企んでる?」
訝しげにボスゴブリンが顎に手をやる。
 
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