15 / 37
ミウの策略
しおりを挟む「どうしたのよ、うるさいわね?」
強張った表情でカノンが言った。
「いや、こいつがさー悪戯しやがってよ。見ろよこれ。」
「あら? あらあらあら、ベットが~よほどお楽しみでしたのね?」
口に手を当ててレイナが目を細めて、笑みを浮かべた。
俺はそれを聞いて、一瞬固まった。確かに状況的にそう考えるのは…自然だけれど、俺は何もしてない。
「違うー!」
必死に喉から大声を出して否定する。
「うわっ不潔、こいつらやった?」
両手を挙げならが、カノンが頬を赤らめた。
両手を額に当てて、泣きそうになる。
しかし、俺はふと気がついた。
「ちょっと待ってくれよ、ドア鍵かかってなかった?」
そう言えばミウどうやって入ったんだ?
俺は鍵を掛けて、開けた覚えがない。
いつの間にか部屋に入ってたんだ。眠気でそれに気が付かないとは。
「かかってないわよ?」
ミウが閉めなかったんだ。つまり2人が来るのも…予想してた。
嵌められたんだ!
こいつこれも計算のうちか、なんて狡猾な悪戯だ!
「やりましたよ? 何がとは言わないですけど。」
ミウが目を手で隠して恥ずかしそうにクネクネ動く。
実際ミウがドアを叩いたこともない…俺が部屋に招き入れた覚えもないんだ。
って事はミウが盗賊スキルで部屋に勝手に入ったってことになる。とんでも奴だった!
「やってねーよ!」
苛立ちを募らせて言った。芝居してんじゃないよ、まったく!
「本当?」
カノンがミウに言ったが、俺を訝しんで視線を俺から外さなかった。
「やりました! い、た、ず、ら!」
「そっちかい!」
俺は吹き出して、ミウを睨む。
まったく、なんで俺がビビらないといけない訳よ?
「どったの、ダーリン? 責任取らなきゃ駄目だよぉ~。」
ミウが上目遣いで凝視して背中をさする。
「やっぱりぃ! あんた達、不純!」
カノンが俺とミウを交互に指で指して、大きく口を開いた。
「ちがーうぅ!」
首をふるふると横に振って、俺は天に仰いだ。
おい、本当に誤解されるから辞めろ。
「どー言う誤解かなぁ? アキラお•し•え•て?」
おーい! 泣くぞ俺?
俺が居た堪れない気持ちになり、カノンに視線を向けると、何かに気が付いた様に、頷いた。
「あーミウに揶揄われてるのね!」
カノンが鋭く言い、俺は頷く。
「駄目ですよ、ミウ。いくら手を出さない情け無い男の子でも、揶揄っては駄目。」
レイナが正しいけど、微妙に間違ってることを口にした。
「ちょっと待って、その気が有ればミウから襲いそうじゃない? だからアキラは手を出さなかったのよ!」
「なるほど受け身という訳ですか。」
レイナが手を合わせて音を鳴らした。
「2人して何言ってんだよ。手を出すとか出さないとか。
付き合ってもいないんだぞ?
俺たちは。」
それに…まだみんなには伝えてないが、そう言った感情は、不老の紋章を得てからなくなっていったんだ。
その通りですぅ。2人とも、変態ですぅ。
「あはは、ミウそれは言い過ぎ。」
俺はミウをポンと叩き礼を言った。
「ちょっと待ってよ、元はあんたのせいじゃない! なんで1人だけ善人ぶってるのよ?」
カノンが眉間に皺寄せて非難する。
「知らないです、私が襲うとか完全にやばい発言ですぅ。
反省しなさいですぅ!」
「はぁ~まったく、そんなに言い訳ばっかり言うと、友達無くすわよ?」
始まった…2人の口喧嘩が。俺は呆れつつ、成り行きを見守った。
「孤独が悪いみたいに言いますね。
それ違うと思うのです。友達がいない人が落ちこぼれかと言われれば違います。」
「真の友達は、自分が困ってる時に手を差し伸べてくれる人です。
そんな友達は、言い訳程度でいなくなりません。」
ミウが手を掲げて、声を高くして言う。
カノンが何も言えないでいた。
言い訳ではなく、人生観や友情観を表してるって見方も出来るからこれには彼女も沈黙してしまうだろうな。
そこにレイナが反論した。
「違うのよ、カノンが言いたいのは言い訳ばかりすることで友達が嫌な思いするから、減らしなさいってこと。」
「私はミウの言い訳とか、哲学的な物言い好きだから、変わらないでほしいんだけどね。」
レイナがウインクして、微笑む。
レイナの指摘はかなり的を得てる。
しかも言い方が優しいから、ミウもこれには反論しずらいだろうと俺は考えた。
「うん、レイナ~しゅきぃー。」
ミウがレイナに抱きついて言った。
実際ミウが自己中と言い訳、悪戯辞めて真人間になったとしたら、かなりみんなから人気者になるだろう。
ただ、それで良い人だけじゃなくて、悪い人も友達になり、利用されて結局傷つく羽目になりそう。
俺もミウには変わらないで欲しいと伝えた。
「ふふ、アキラはどれだけ私のこと好きなんだか、分かりましたぁ。これからも悪戯しまぁす。」
勘弁してくれー。俺は心で呟いた。
「ありがとう、レイナが代わりに言ってくれてスッキリしたわ。ミウのせいでお腹空いたからアキラ、デートしましょう。」
俺の手を掴み、ゴブリン退治の前に食事に行こうと誘われた。
「ベーだ!」
ミウに向けてカノンが舌を出して言った。
「やりますねぇ!」
ミウがカノンを褒める。
女子達今日、積極的過ぎない?
ミウは分かる。泥棒したこと許したし、強盗に捕まってこの前、助けたしな。
カノンに好かれる様なことしたかな?
きっとミウにあれだ、対抗心燃やしたんだな。
だしにされたかな?
「そうだ、ミウ宿屋のシーツ乾かしとけよ。
水に濡らして迷惑かけたんだからな。」
俺はベッドを指差して叱る。
「ふふ、ご心配なく~さすがにそこは弁えてます。私のスキルで具現化させた物被せて濡らしたので、それ退ければ良いだけです。
「へーちょっとは成長したか。」
「ほら、アキラ行くよ~。」
カノンに急かされた。
「はい、はい。」
「返事は一回で良いの! 子供なんだから!」
うへぇ、カノンに叱られてしまった。
俺はカノンと昼飯を済ました後、ゴブリン退治に行く前に村長に挨拶しに向かった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
防御に全振りの異世界ゲーム
arice
ファンタジー
突如として降り注いだ隕石により、主人公、涼宮 凛の日常は非日常へと変わった。
妹・沙羅と逃げようとするが頭上から隕石が降り注ぐ、死を覚悟した凛だったが衝撃が襲って来ないことに疑問を感じ周りを見渡すと時間が止まっていた。
不思議そうにしている凛の前に天使・サリエルが舞い降り凛に異世界ゲームに参加しないかと言う提案をする。
凛は、妹を救う為この命がけのゲーム異世界ゲームに参戦する事を決意するのだった。
*なんか寂しいので表紙付けときます
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
赤き翼の万能屋―万能少女と出来損ない死霊術師の共同生活―
文海マヤ
ファンタジー
「代わりのない物なんてない。この世は代替品と上位互換に溢れてる」
万能屋。
猫探しから家の掃除や店番、果ては護衛や汚れ仕事まで、あらゆるものの代わりとなることを生業とするもの。
そして、その中でも最強と名高い一人――万能屋【赤翼】リタ・ランプシェード。
生家を焼かれた死霊術師、ジェイ・スペクターは、そんな彼女の下を訪ね、こう依頼する。
「今月いっぱい――陸の月が終わるまででいいんだ。僕のことを、守ってはくれないだろうか」
そうして始まる、二人の奇妙な共同生活。
出来損ないの死霊術師と最強の万能屋が繰り広げる、本格ファンタジー。
なろうに先行投稿中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる