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強盗との対決

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俺達はギルドを出て、ゴブリン退治を依頼した村に向かっていた。

砂と多少の森しかない殺風景な道を進むと、
途中ゴツゴツした岩があり、そこから人影が飛び出してきた。

「おい、金目の物置いていけ!」

人相の悪い、手に刃物を持った数人の男達が現れた。


「なぁ、ミウの仲間がいるぞ?」

彼等を指差して、ニヤッとミウに微笑みながら言った。


「違いますぅ、あんな人たち知りません。」

ぷくっとフグのように顔を膨らませて、ミウが拗ねる。
強盗と仲間と言われたら、さすがにむっとくるのたろう。俺は構わず、ミウを弄る。

「ごめん、同類だった。」
俺は頭を掻き謝る。

「一言多いですぅ~。謝るだけにして下さい!」

ミウが俺の顔に軽く拳を当てる。

彼女の肌の温もりが拳にも関わらず、癒しを頬に感じさせた。

風が砂の匂いを引き連れ、俺の鼻をくすぐる。
目に入らないよう、細めた。

「何をぶつぶつ言ってる?
置いてかねーなら命はねーぞ?」

風のヒューと吹く風に強盗のドスの効いた声が乗り、威圧感が増していた。

「うるさい人たちですね~そんな元気あるなら働けば良いのに。刑務所って言う場所で働きたいんですかねぇ?」

ミウが辛辣に強盗達を批判する


「あれま? ねぇ! アキラー!
ミウが初めてまともなこと言ったんだけど!」

カノンが口に手をやり目を見開いて言う。


「ぶぅ~、いつもまともなこと言ってますん。カノンの耳は馬ですか?」

馬の耳に念仏ってやつかな? 俺は、カノンに向く。

「褒めてやったのに、恩を仇で返されたんだけど? 」

カノンが俺に愚痴る。
2人とも呑気に強盗がいるのに言い争いをしていた。

「てめーら! こけにしとるんか? 
それとも恐怖で可笑しくなっちまったか?」

強盗の1人が頭に指を指して、揶揄うように言った。
周りの強盗達が笑いあっていた。

「窃盗犯対強盗の戦いが見れるなんて、楽しみだな。」

俺は気楽に呟く。

もちろん窃盗犯っていうのはミウのことだ。

強盗達の無精髭が、彼等の荒っぽさを伝える様だった。

「ふふ、どっちが勝ってもこの世界少し平和になりますね。」

レイナが優しく微笑む。

「こら、さすがに仲間のミウ応援しなさいよ。
まったくどいつもこいつ悪党ね。」
カノンが蔑むように俺を見ながら言った。

陽射しが眩しく照らし、砂の暑さを増す。
強盗より、靴が砂の熱でやられる心配の方が勝っていた。

それは、自分達の強さに自信があるからだった。魔族にも引けを取らない…その自負があるからこそ、気持ちが穏やかなのだ。

ただ、それが油断を真似ていたのも事実であった。

「ミウ!」

強盗が何故か彼女の名前を呼んだ。そちらに向くと、怪しげな玉を手に握りしめていた。

「なに?」

ミウが驚きながら返事をした。  

カノンやレイナもきょとんとしていた。
友達にでもなるつもりか?

いやそうではなかった。

強盗に名前を呼ばれたミウが、変な玉に吸い寄せられて、その中に入られて閉じこめられた。

「ほら、言った側から!」
カノンが俺たちを叱った。

まさか初見殺しにやられるとは!

しかし何故ミウを1番に狙ったのか?

俺たちの関係を経験から分析していたのだろうか? いや、ミウが確実だからだ。
2回名前を呼んだから狙われたのだろう。

「アキラ! 助けて!」
ミウが玉から俺に助けを求めた。

「聞いた?」

「最初にミウは俺に助けを求めたぞ?」

レイナに自慢するように言う。

「うーん、ちょっと妬けますね。」
彼女が小首を傾げて言う。

「名前を呼んだら、閉じこめられるようね。」
カノンが顎に手をやり、推測する。

「俺の名前もミウが言ったぞ? 結構危なくない?」

唾を呑み俺は、さっきまでの油断が嘘のように緊張感が増し、汗が額から出てきた。

カノンの名前も言った。レイナの名前だけは聞いてないはず。

閉じ込められた、ミウが玉の中を叩きながら、俺に視線を送る。

玉に閉じ込められるのは、1人だけ?
それとも複数? 俺は強盗達の様子を探る。

陽射しが邪魔をしてはっきりは見えなかったが、口元の表情を入念に観察した。

不気味な笑みを浮かべてはいたが、余裕の笑みには見えなかった。

それに…すぐ名前を呼ばない所を見ると、閉じ込められるのは、1人だけと推測した。



「おい、降参しろ! さもなければこの玉、砕け散るぜ?」

強盗が脅しながら、玉を握りしめる。

顔が熱を帯びるのを感じる。彼等への怒りが沸々と湧き上がってくるのを感じる。

出し惜しみしている場合じゃない。

光速遊び! このスキルはその名の通り光速で動ける。
しかし足に負担が掛かるのと、光速で動いている間は、攻撃力が1になるというデメリットもある。

俺はすぐに強盗から玉を剥ぎ取り、スキルを解除し、顔面に拳を放った。

他の強盗が、すぐさまナイフを左脇腹に狙いを定め突き刺す。

それを紙一重で後ろにジャンプして回避。
靴が石に当たり、カチッと音を鳴らした。

更に前にジャンプして顔面にありったけの力で殴る。強盗が遥か後方に吹っ飛んだ。

ミシッと鈍い音がした。あたかもそれは、強盗の痛みを伝えるかのようだった。

さすがに手加減出来ない。そしてその光景を見た他の2人の強盗は、戦意を喪失していた。

腹パンと、顔面を殴り、雌雄を決する。


「おい、玉から彼女を解放しろ! さもなければ、どうなるか分からないぜ?」
俺は凄んで言う。

強盗が血相を変えて怯えた。

「あらあら、強盗に頼むなんて野暮ですよ。私が魔法で解除してあげます。」
レイナが言うと、玉に魔法をかけた。

玉が割れミウが出てきた。服が破れない所を見ると、小さくなった訳ではないんだな。

別の空間に閉じ込められていたのだろうか?
強盗の癖に、勿体ない。この力を有効に使えば、みんなのヒーローにすらなれたろうに。

「アキラ! ありがとぉ!
ミウが俺に颯爽と飛び掛かった。俺はしっかり受け止め、彼女に微笑んだ。

「レイナもありがとう。」

ミウがレイナに向き笑顔でお礼を言う。

「うふふ、どういたまして。」

レイナも微笑み返した。

ちなみにレイナは最初にカノンに助けを求めるらしい。理由は1番頼りになるから。
カノンはレイナに助けを求める。理由は1番マシだから。

「ちなみに同じ状況ならアキラは誰に助けを求めるの?」

カノンが首を傾げて質問する。

「そりゃもちろん強盗! 助けて謝りますー!」

プライドを捨てて、ここは、良心に訴える。
もし聞かない場合遠慮せずに済むからだ。

「本当かしら? 狡い答えね。」

カノンが眉をひそめ、疑い深く俺を見つめる。

「本当ですぅ~ちゃんとした答え言わない狡いですん。」

ミウがプイッとそっぽを向ける。

「ですです、私たちはきちんと答えのにねー。」

レイナが肩をすくめ、目を細める。

ねーと皆が同時に言い、俺のことを非難する。

「分かったよ、本当のことを言う。」

「誰よ? 助けを求めるのは?」

「もちろん、女神様だ!」

俺は胸を叩いて言った。

「宗教家だったの? そんなもん、助けるどころか試練しかくれないわよ。」

カノンが女神様をそんなもの扱いした。

「女神様好きなんですか! 素敵な人だと思いますけど、自分で魔王倒さない卑怯者ですよ?」

ミウも女神様を卑怯呼ばわりした。

「そうね、利用されてる気がするわ。」
 
レイナが、女神様を人を操る黒幕扱いをした。


「おお、女神様フルボッコじゃないか!
そりゃ一理あるけどさ、一応女神様姿確認したし、不老にして貰えたし、特別な力もくれたじゃないか。」
  
「目に見えない神様とは違うし、魔王を倒さないのは自分がやられたらお終いだからだよ。」
 
俺は女神様を必死に擁護した。


「目に見えた以外はそこらの神様と変わらないわよ。勝手に呼び出しんだから特別な力くれるの当然じゃない。違う?」

カノンが冷静に状況を分析して、俺に説いた。

「いえ、違くないです。」
俺は小さくなり、言い返す気力をなくした。


「あと思ったんだけど、女神様ってミウにそっくりじゃなかった? 髪と目の色が違うだけで、悪戯っ子の様に何か企んでそうな所とかね。」

カノンが見た目に言及して言う。
言われてみればそっくりだ。遠い親戚か? 

俺は頷きミウを見つめる。


「あは、えーとですねぇアキラが信じるなら私も信じますぅ。多分宗教ってそんなもんだと思うんですん。」
ミウが助けるように真理をついた。

「そうですねー。けど、私は宗教にハマって大変な人たち知ってるので、宗教大嫌いです。」
レイナがぷいとそっぽを向く。​​​​​​​​​​​​​

過去に彼女に何かあったのだろうか?
俺は時が来たら、レイナに聞いてみようと思った。


「俺いつの間にか宗教家にされてるけど、俺は女神様個人を崇拝してるだけだぞ?」


「でも考えてみたら、宗教って神様を信じているのか、組織の一員として信じてるのか分からんな。」

「まー難しいことは分からんので、どうでも良いか。はっはっは!」

俺は心で笑いながらこの話を飛ばした。

ん? そういえばこの強盗の顔…見に覚えがある。
陽射しで気がつかなかったけど、良く見ればギルドに指名手配されてる紙に掲載された、顔にそっくり。

いや、同じだ! なんて運が良いんだ。

俺はみんなに賞金が手に入ると事情を説明した。

これで質に入った装備を取り返せる。

カノンに強盗達を魔法で浮かばせて、一旦ギルドに戻ることにした。

「すみません、助けて…下さい。」

玉を使った強盗が、見逃してくれと土下座して謝る。

「今更何言ってるんだよ?」

俺は呆れながら強盗に言った。

「お願いします、どうか…なんてな!」

強盗が切羽詰まった表情から一転して、不気味な笑みを浮かべた。

「バカめ! 玉はまだあるんだ!」

懐から玉を4個だし、地面に転がせた。

「アキラ! ミウ! カノン! レイナ!」

強盗が俺たちの名前を叫んだ!

しまったぁ! 俺たちは玉に吸い込まれていく。嘘だろ?

こんなやつに全滅させられるなんて。


「くっそ、やられた!」

玉の中から俺は悔しくて玉の地面を叩いた。
風が砂を運ぶのが見えた。虚しく音も聞こえた。

「はっはっはっ! 間抜けどもぉ! 俺の勝ちだぁ! 」

「俺のスキル玉に封じ込めはなぁ、無敵なんだ!
どんな遠くに居ようが、名前さえ叫べば立ち所に吸い込まれる。」

「相手の戦闘力も関係ねー! つまり、最強の力なんだ!」

名前を呼ぶだけで閉じ込められるのは予想外だ。普通返事しなきゃ平気だろ…こいつに踏み潰されたら死ぬのか?

「さぁて、誰を先に殺すかな?」
盗賊の嫌味な声が聞こえた。
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