インフィニティ•ゼノ•リバース

タカユキ

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最低クラスの異世界大冒険開幕

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俺たちは突然女神様に拉致され、クラスごと異世界に飛ばされた。  

拉致される前はそう、コメディテレビを観ていたんだ。


「俺は肩をぶつけられて
こら! と怒ったんだ。」

「そしたら、すみませんと謝られたんだ。でも良く考えると、俺はぶつかったのその人じゃなくて、券売機だったんだ。」

笑いが起こった。そして次のネタに行った。

「ある人がメガネをなくしたらしい。」

「お前! その目の上につけてるのはなんだ!」そう彼は言った。

「これはメガネじゃない、サングラスだ!」

「違う!それじゃない! まだつけてる!」

「ああ、これだ! このメガネ探してたんだ!」

「メガネとサングラス2つも付けてるやつ初めてみたぞ!」

「ああ! 俺もそんなやつ初めて知ったよ。」



そしてここに連れてこられた! 


ネットやってたらエロ漫画に飛ばされてイラッときたから、今度はテレビでコメディ見てたら、異世界に飛ばされるのかよ。


だが、女神様の圧倒的な美しさの前に全てが霞んだ。あれほどの戸惑いが一瞬でどうでも良くなってしまった。

女神様の透き通る白い肌は日光を浴びていないことを示していた。

彼女の銀髪は大理石のように輝き、その繊細な指は折れそうなほど細かった。

彼女の指に結婚指輪らしい物がついていて、俺は思わず舌打ちをした。


この異次元空間の周り一面が青みがかって歪んでいる。
クラスメイトの怒号が飛び交った。




元の世界に返してください!

その声に俺はどうでもいい感情が薄くなっていくのを感じた。
 
「魔王を倒す為に貴方達をお呼びしました。」
女神様が言った。

その説明に目を輝かせて興奮するクラスメイト。
「魔王? お前が魔王だろ? 俺たちを拉致しやがった癖に!」
女神様に罵声を浴びせるクラスメイトがいた。

待てよ? 何故このクラスなんだ?
さては、トラックから轢かれそうになった人を救った奴がいるのか?

いや、このクラスに限ってそんなことする奴はいない。写真撮って野次馬しそうだし。

「あなた方は人間レベル最低のクラス、ゆえに選ばれました。」

なんだと! 喧騒が止まない。

「本来ならあなた方クラス生徒全員事故で死ぬことが決まってました。しかし、それでは可哀想と思い、私が魔王討伐というチャンスをあなた方に差し上げました。」

なるほど、この女神様に命をいただいた訳だ。

まぁ、ジタバタしても仕方ない。
異世界を楽しもう。
女神様とお話しして、不老の紋章とスキルを授けて貰った。その代わり魔王を討伐せよとのご命令が下された。

女神様の大きな青く光るサファイアをも霞むほどの瞳が、俺は特別扱いだと告げていた。 

不老の紋章は他に、異世界の言語が分かるほど有能なものだと説明された。

女神様が一通りクラスメイト達と話し終えると、最後に注意喚起をされた。

「クラスメイトのうち3名は殺人犯です。全員平等に能力を与えますが、彼らには注意して下さい。」
女神様が頭を深々と下げた。そして手をかかげ異世界に俺たちを飛ばした。


不老にもなったし、異世界で犯罪犯してもいつか出られるってやつもいるかもしれない。

…俺は殺すなよ? 頼むぞ?  
周りを見渡し、俺は鳥肌が立つのを感じた。


そして俺はクラスの男子は省いて女子とパーティを組んだ。

当たり前のことだ。男子と組んで面白い訳がない。

それに俺は、男子にやられる可能性も考慮した。女子なら返り討ちに出来る可能性は高いし。

他の男子も女子とリラックスして冒険を楽しみたい、そんな考えだったようだ。

それでもやはり男子だけのパーティもあった。
俺はこれにどうこう思わない。
男子だけなら女子の取り合いなんてことにはならないからだ。

俺は早速女子達を誘おうとした。
だが、その前に職業スキル見ておこう。

なんだこれは? 職業は見なかったことにするか…いや出遅れだ。

そこには伝説の遊び人と記されてあった。

まぁ、伝説のナンパ師じゃなくて良かったと思うべきか?

スキルは、なるほど。しばらく考え、この組み合わせで、女子を呼び込めると確信した。

その時、クラスメイト達の声が聞こえてきた。

「なぁ、俺たち男子だけでパーティ組もうぜ。
女子なんかいらねーだろ?」

「バカ言うな女子がいなきゃつまらんだろ、むさ苦しいわ。」

「でも、女子がいたら緊張して疲れないか?」

「考えが足りねーよ。その疲れを癒してくれるんだよ女子がよ。」

その通り、俺は最後の男子の言葉に頷きながら、勧誘されないようその場を急いで去った。

やはり最低レベルのクラスなだけあって、狼狽してたり、怯える人がいない。
みんな肝が据わってやがる。
恐ろしいな~。


そして俺は上手く女子2名を誘うことに成功した。ほぼスキルのお陰だが。

そして最後の女子1名を探していた。なんで男子誘わないの? と聞かれて、不老の紋章があるから男子は危険な行為をする可能性が高い。

女子の方が安全と合理的に説明し、納得させた。

最後の1名は省かれていた。こんな可愛い子が残っていたとは、勿体無い。
余り物には福があるという諺を胸に勧誘した。

しかし、この余り物は腐っていたのだ。




月日が経ち、今は借家に泊まっている。
男女別々の宿屋は、2倍料金掛かるので借家にしたのだ。


ドンドンとドアをノックする音が聞こえた。
俺がドアを開けると血相を変えた女子が立っていた。息を切らして、汗をかいていた。

「あいつがまた借金したのよ!」
この子は魔法使いのカノンだ。とても賢くて、毒舌な女の子。このパーティでは1番しっかりしているかもしれない。

漆黒の長い髪は、誰もが振り向くほど綺麗であった。
燃えるような赤い瞳が、その髪とよく似合っている。彼女が真剣な表情をするたびに俺は魅入られる。

「マジかよ。」
両手を上げて俺は目を見開いた。
パーティを組んだ女の子の1人に、ギャンブル好きな子がいるんだ。

鴨が葱を背負ってくるって言葉がある。
彼女は、まさに葱ではなく、悪夢を背負ってくるのだ。

「聞いて! しかも、私たちの武器防具全部質に入れたのよ!」
怒りを込めながらカノンが説明する。

「最悪じゃねーか! カノンどうする?」
俺は頭を抱えて地面に転げ回った。

「何やってんの? 死ぬの?」
彼女の声が聞こえ、上目遣いで彼女を見ると軽蔑の眼差しを向けていた。

「いや、転げ回ったら女神様でも出てくるかと。」
困った時は女神様に救いを求めるのだ。 
もちろん来る保証はない!

「バカが2人に増えたわね! 厄介過ぎる。」
手のひらを顔に伏してカノンがため息を吐き、片方の手で誰かを呼んだ。

「レイナはどう思う?」
この子はレイナス、愛称でレイナと呼んでいる。

本名をあまり使わないのは、ナスを連想させるからだとか。

確かにレイナのが可愛いらしい響きだ。

そしてプリーストで、楽観的性格と思う。
カノンとは対象的な青い瞳だ。
その青さは晴天の空でさえ降伏するだろう。

髪の色は神々しく眩い金髪だ。これを金髪碧眼と言うらしいが、まさしく彼女のための言葉だと思う。
彼女が微笑むたびに、その美しさに心が奪われてしまう。

「踏み倒しましょう!」
元気よく返答した。

「武器防具はどーすんのよ?」
口を尖らせ、カノンが聞いた。

「簡単です。借金して質から買って夜逃げすればOK!」
なんて名案! それは素晴らしい!
俺は勝ちを確信したかのように微笑んだ。

「素晴らしいわね!」
カノンも同じ意見だったか?
しかし、呆れるトーンであったのが気掛かりだ。

「でしょ?」
レイナが胸を張って威張るように言った。


「バカが3人に増えたことがよ! 犯罪者になって指名手配されるじゃない! まったくアホどもめぇ。」
カノンが首を振って否定した。
眉間に皺を寄せ、ダルマの様に顔を赤くして頬を膨らませていた。

俺はクスッと変な顔だと思い、笑いを我慢して、ぶぐぅーと小さな音が口から出ていた。

「じゃあカノンは、何か良い考えがあるのかよ?」
声を震わせて彼女の意見を聞いた。
はぁ~キッツ。俺まで別の理由でダルマさんになるところだ。


「ふん、馬鹿三人衆でバイトするのよ、もちろん私も手伝う。全員で協力しましょう。」

その方法は一見すると正攻法に見える。
だが、かなりのストレスを生み俺を病気に追い込む恐れがある。

そしたら本末転倒、金を稼ぐつもりが返って金が減ることになりかねない。

「もっと良い方法あるぞ、俺たちが魔王になるんだ! この国を支配すれば借金返す必要ない。
俺は街中に響き渡る声で言った。

「…つまり働きたくない?」
思案するようにカノンがやはり蔑む視線を送ってくる。


「そう! 異世界に来てまで働くなんて、豪語道断。」
俺は大きく頷き、そして欠伸をした。

肩を回して、仕事してないのに疲れを感じていた。これもう働いたら終わりだね。

ふぅ、肩を震わせて人に叱られるシーンを想像して、嫌だと首を横に振る。

「なら、借金作った張本人に全ておっかぶせましょう。」
レイナが冷静に正論を述べた。

「そうね、それが良いわ。」
カノンがそれに同意した。

だが、それは彼女に対して冷酷ではないか?
間違いは誰にでもある。


「いや、さすがに仲間を見捨てるわけにはいかないよ。」
俺は頭を掻いて、小声で否定した。
パーティの1人を失うのは嫌だった。

「ほんとアキラさんの甘さには呆れますね。」
ニヤッとレイナが言う。
それは、決して嫌悪の笑みではなかった。
むしろ暖かみのある微笑みであった。

「じゃあアキラとあいつでなんとかして、私たちは旅を進めましょう。」
カノンが俺たちを見捨てる素振りを見せた。

ふっ、そんな気ない癖に~本音は一緒にいたいのが見え見え。
1番甘いのは、俺じゃなくてカノンだろうなと、考えに当たった。

「お金なしですけど? 全部取られてます。」
レイナが財布を取り出して、空っぽで有ると分かりやすく教えてくれた。


「ぎゃああー! 財布の金盗まれたぁぁー! 餓死するうぅぅ~。」
俺はその場に泣き崩れた。
 
「ぷくー! あわわ。」
俺は呆れ声を通り越して、絶望に身を委ね変な奇声を自ら発した。

「うるさい!」
カノンが俺を一喝する。

「あいつにリアクションが薄いって言われてこうなってしまったんだー!」


「であいつはどこにいるの?」
俺をスルーしてカノンがレイナに聞いた。

「ここにいますぅ!」
カノンのスカートの中から指が出てきた。
そしてひょっこりと舌を出して、微笑むミウが出て来た。

その仕草に一瞬どきりとさせられた。それほどに愛らしい美少女だった。

琥珀色の瞳がまるで宇宙のように神秘的だった。
そして自然の森をイメージさせる緑色の髪。
誘拐させられないか心配になるほど可憐だ。
もちろん、普通にしていたらの話。





俺は彼女達との会話を思い出していた。

「まったく言い訳星人なんだから。」
カノンがミウに呆れながら叱っていた。

「フフフ、正体がお花畑星人にバレてしまいましたか。」
ミウが不敵な笑みを浮かべ、彼女に乗っかるように言った。

「誰がお花畑星人よ!」
机を叩いて、カノンが声を荒げた。
 
「先に言い訳星人って侮辱したのはカレンの方ですよね?」
ミウが指を指して、続けて言う。
「侮辱して良いのは、怒らない覚悟のある者だけです。」
胸に手を当てて、知った風に言い放つ。


「こいつ、言い訳だけじゃなくて、開き直り星人じゃない!」
俺も開き直ってると思い、カノンに相槌を打つ。

「やれやれ、二つ名がついてしまいました。言い訳星人と開き直り星人。星人なのでしないといけないから、これからは許されるんですね。」

揚げ足取り名人と、俺はミウに心で名付けてあげた。
声に出して言うと、彼女達の争いに巻き込まれそうだったからだ。

「許す訳ないでしょ、むしろするなって言ってんの。」
カノンが眉間に皺を寄せ、歯軋りした。

「何故ですか!
つまり侮辱され損じゃないですか、そんなのありですか?」
ミウがおとぼけ顔で、口を尖らせ言う。

「こいつ~もうキレた! 許さん。」
カノンがミウの胸ぐらを掴んだ。
すかさず俺は割って入った。

「落ち着けって、そもそも言い争いの原因はなんだよ?」
火種を取り除いて、仲良くさせようと考えた。

「こいつが私が買って楽しみにしてた、期間限定のプリンを食べたのよ! 」
カノンが目で悔しさを訴えながら、ミウを指す。

「…くだらん、かいさーん!」
俺は呆れ果てて、勝手にやってくれと立ち去ろうとしが、カノンに呼び止められた。

「なにがくだらないのよ? 1時間並んで買ったのよ? いい、私がどれだけ悔しい思いしたか、語るからそこに座りなさい!」
床を指して、先生のように俺を叱る。

「えっ…ちょっと待って? 矛先俺に向いてない?
くだらないよね? えっ?」
俺は混乱したままカレンに1時間説教された。

何故俺が怒られにゃならんのだ!
だが、俺はカノンの怒りは理解できなかったが、やるべきことは分かった。

「カノン分かった! プリン俺が買ってきてやる。」
手を叩いて言った。
面倒くさいが、そうも言ってられない。

「いいわよ、そう言う意味で言ったんじゃないの。」
買って来てと言われてないのは分かっていた。話を聞いて欲しくて言ったのだろう。


「違うよ、カノンが喜ぶ顔が見たいから買ってくるんだ。」
買って来る理由をはっきりと彼女に示した。

「アキラ…うん、お願いします。」
頭を下げて彼女が、にっこりと微笑む。

俺はプリンを2時間かけて買った。

そしてカノンにプレゼントした。
彼女が両手で持って満足そうにお礼を言った。

「あれ? 私の分は?」
近くにいたミウが当然のように聞いてきて、俺は爆笑した。

ほらよ、俺はミウの図々しさを読んでいたのだ。レイナの分も買って来て、3人の好感度を得たのだ。

「アキラ、さすが~合格ですぅ。これは、アキラが食べて下さい。気持ちだけ貰っておきますん。」
少し押し問答したが、ミウは受け取らなかった。

「なんで受け取らないんだよ?」と俺が聞くと、ミウは微笑んで答えた。
「アキラが私のことを考えてくれただけで十分ですぅ。そういう気持ちが嬉しいの。」

不思議な子だなと考えた。

レイナに渡しアキラありがとう、気が利くねとお礼の言葉をいただいた。

こうして俺は、彼女達と仲良く? なれたのだった。

スカートから出てこれたのは、ミウのステルスのスキル能力だ。ちなみに職は盗賊。

彼女はこのパーティで最強で最強のアホな存在。

気配を完全に消せるなんて、俺もそのスキル欲しいぐらいだ。

「変なところから出ないで! どうすんのよー借金!」
泣き声にも近いトーンでカノンがミウに問いただした。

「大丈夫ですぅ! 私成人じゃないんでギャンブルの借金踏み倒せますぅー!」
ミウが親指を立てて、一周した。
何故周った?
俺は不可解な彼女の行動に呆然とした。

深く考える必要ないな。俺はそう結論づけた。

「なぁんだ、そうか! 安心したらお腹空いてきたよ。」
腹をさすって言った。

「フフフ、心配して損したわね!」
レイナが手を出した。
俺とハイタッチして、満足げな笑みを浮かべた。

「いええーぃ! やったぜぃ!」
俺は軽やかにステップした。

「ちょっと待ってよ、武器防具は? 質に入ったままよ?」
カノンが鋭く言う。


そうだった、ステルスで俺たちの武器防具盗みやがったんだ!
さすがに仲間から盗みを働いたことに対しては、何か言ってやらないと気が済まなかった。


「諦めましょう! 武器防具たちに哀悼の意を込めて!」
目を瞑りミウが十字をきる。


「ふざけんな! ギャンブルなんて、ステルスあるんだからそれ使えば勝てたろーが!」
俺は怒りで顔を赤らめて言った。


「つまんないじゃですかぁ! 100%勝てるギャンブルに何の意味があるっていうですかぁ?」

俺はミウのアホさに呆れて、女神に祈りを捧げた。

ああ、女神よこのアホを救いたまえ~。
みんなの熱い視線を感じ、その視線を向けるとミウと目が合った。


「仕方ないですね、アキラにギャンブルについて長くなりますけど講義してあげます。」

ミウが腰に手をやり、人差し指を振りながら言う。

「まずギャンブルは負けるのが1番人を興奮させてくれるんです。」

「ああ、どうしよう? 私こんな不幸どうしてこんな目にって思うのがこれまた最高です。」

「だって勝ち続けて死にたいって思う人いないですよね? 負けると死にたいと思う。」

「実際ギャンブルに負けたことなんて、借りた所がまともなら命の心配ないにも関わずです。」

おかしい理論だぞ? 命の心配なくてもみんなから責められたら死にたくならん? 

あーそうか、こいつメンタルお化けだったか!


「ナポレオンだって勝てる戦いだけすれば良かったんです。でも絶望の美酒を飲みたいから、勝つか分からない戦いをしたんです!」

ナポレオン? 勝つか分からないじゃなくて、勝てるって驕っただけじゃね?

部下がイエスマンしかいなかっただげじゃありません?
と俺は内心ミウ理論に疑いを持った。

実際、ミウがナポレオンを直接知っているわけじゃないし、何故途中でいつかは負ける戦争を辞めなかったかは本人しか知り得ない。


「つまり、ギャンブルは敗北こそが真の幸福足り得るんです!」
ミウが誇らしげに語った。

「言い訳なげーわ!」
いつツッコミ入れようか俺は呆然としていた。

「お~い、誰かこいつを刑務所にぶち込んでくれないか?」

野良でいちゃダメ、この子は魔王より凶悪過ぎる。

「なんでですか! 人がせっかく教えてあげてるのにぃ~。」
顔を膨らませて俺を睨む。その瞳には不満の色が濃く映っていた。

俺はナポレオンの件を反論した。

「それは違います。驕ったからと言って、勝てる確率を出せないほど、ナポレオンはおバカじゃありません!」

理論武装強よっ。 
彼女が臍を曲げて俺に当たるので、俺は話をすり替えて反論した。

「俺たちに迷惑かけてるんだぞ? ギャンブルってのはだな、周りを不幸にするんだ。」
何故教わることがないか、説明した。
これ以上ない分かりやすい言葉で。

「ミウのこと全然分かってくれない。」

でたー感情論!
とは言え、ここで冷たくしたら女子に羽生られる。
優しくするべし‥だな。

「ごめん、辛い事あったんだな。何があったか、良かったら教えてくれないか?」
咳払いをし、ミウに再び視線を合わす。

「そうだ…ね。アキラちょっと重い話になるんだけど、聞いてくれる?」

「言い訳かもしれない。でも、私の事もっと知って欲しい。」

分かったと俺は頷き、ミウの言葉をそっと待った。


「うん、私パパとママに殴られてて、居場所がどこにもなくて…ずっと本読んでて、ファンタジーの世界に憧れてて。」
俯き加減に彼女が話した。

「うん、それで?」
俺は話を促した。
他の2人もミウを見据えていた。

「この世界に飛ばされて、パーティに誘われてやっと居場所を見つけて嬉しかった。」
声を震わせてミウが胸に手をやる。

「そうか、大変だったんだな。」
腕を組み頬を掻いて俺は頷く。

「それでつい、みんなに甘えてギャンブルにのめり込んじゃって。」   
これはもうミウのことアホとか言えなくなっちゃったな。

「でも、どうやってお金を借りたんだ? 成人してないのに。」
首を傾げて彼女に聞いた。

「スキルで書類を偽装したんだよぉ。」
自首してくれたまえ。心で俺は呟いた。

「正直に言えました、ヨシヨシ。」
レイナがミウを撫でた。
子猫のように甘える仕草をしていた。

「今日はもう寝て、明日ギルドに行くわよ! お金稼がなきゃ。」
カノンが発破をかけた。
俺は武器防具もないのに無謀と伝えたが、そんな事分かってると袖にされた。

俺たちの実力なら実は簡単に依頼を達成出来るんじゃないか? きっとカノンはそう思ったのだ。
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