紬ちゃんの青春日記

タカユキ

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コイントスの選択

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「それでさー。」
私は友達2人とラウンド遊びに行こうとしていた。

「つむたん、うんうん。それで?」
頷きながら、美月紗理奈ちゃんが私をあだ名で呼ぶ。

「ねー、紬~電柱に隠れてついて来る子がいるんだけど、アレもしかして、紬の彼女?」

中村仁美ちゃんが、私の耳近くで囁いて言う。

「誰が彼女やねん! 私女子ですけど? 泉ちゃん、アレでバレてないと思ってるんかな?」

電柱で私達を凝視している。
声を掛けて誘ってくれるかもと考えたか? 
それともやきもちから、見張っているのだろうか?

はぁ~まったく、しょうがない、誘ってやるか。ついて来られるよりマシか。

「出た! つむたんのクソデカため息!」
紗理奈ちゃんが指を指して笑った。

商店街が至る所にある通り道で、車はあまり入って来ない。

シャッターが所々のお店で閉まっているのを見ると、寂しく感じる。

「ため息も出るよ~。私狙われてるからね。」

肩を落として私は言う。

「モテモテだね、つむたん、私も大好き。」

紗理奈ちゃんが抱きついて来た。見ないけど、泉ちゃんの顔が怒りの表情になってると予想出来る。

「へいへい、女子にばっかりモテますよ、ええ。」

私は、こうして女子と遊んでいる今を嘆いた。

「モテないよりマシでしょ? 私両方にモテないよ? 紬の事、本当羨ましくないけど。」

おい! 羨ましいんじゃないのかい!

「変わってくれって言おうとしたのに、仁美に先手取られた。」

「私こう見えても知恵者なんで! それに私、推しがいるから、モテなくて良いの。」

「電柱に隠れてる子も誘って良い?」


「泉ちゃん、尾行してるの気がついてるから。」

「あわわ、バレてましたか。」

「ふぅ、あんたも一緒に遊ぶ? ラウンドで遊ぶんだけど。」

「紬ちゃん、ありがとう…遊ぶぅ。」

笑って私は頷いた。その直後、紗理奈ちゃんが私にくっついて来た。

泉ちゃんの表情から笑顔が消えて、母親が怒った様な表情になった。

「離れて。」

その言葉は、氷の様に冷たかった。
怖っ…紗理奈ちゃん逃げて。私は心で叫んだ。

「あっかんべー。」

紗理奈ちゃんが、泉ちゃんに言う。
ちょっ…紗理奈ちゃん挑発しちゃ駄目ー。

「…離れなさいよ、離れろ。」

泉ちゃんの命令口調に私は恐怖で身体が小刻みに震えた。紗理奈ちゃんは、ムスッとしていて、まったく堪えてない。

私は知恵者に助けを求めて、仁美ちゃんに目配せした。
そっと頷く彼女。


「まぁまぁ2人とも、落ち着いて。2人で一緒にくっつけば良くない?」

仁美ちゃんが2人を宥めた。
…知恵者役に立たん~それじゃ私がヤバいんですけど!

「いやさすがに、2人はキツいて。」

2人の子供をあやすなんて無理です。
何か他の策ないのかな。

「…じゃあ、コイントスで、当てた方が紬とくっつける権利獲得とか?」

なるほど、器用な仁美ちゃんなら、コイントス上手く出来るから、良い案かも。

「コイントスで、先に言う方決めるの、どうするの?」
紗理奈ちゃんが手を挙げて、問題提起した。

「それは…ジャンケンかな?」

腕を組んで神妙な面持ちで、仁美が言う。

「ならジャンケンで勝った方がくっつけるで良いじゃん。」

紗理奈ちゃんが当たり前の事を、仁美ちゃんに伝えた。

「なるほど! 賢い!」

知恵者自称してる人が、賢いって感心すな!

「いいよ、私後で。紬ちゃんとは、赤い糸で結ばれてるもん。勝つもん。」

気のせい。泉ちゃん
「えっ? 良いの? 紗理奈感が鋭いよ。」

「良いですよ。それで負けたら、今日はくっつかない方が、良い日だって諦めます。」 

泉ちゃん意外に潔かった。そして暗かったのが、真剣な表情に変わった。

「赤い糸って…この子紬にさりげなく告ってるぜ。」
仁美ちゃんが驚いた表情で言う。

「ふん、それなら私は、つむたんと絆の鎖で繋がってるもん!」

紗理奈ちゃん! 変な対抗心燃やさないで~。


仁美ちゃんがカバンから、豪華そうなコインを出した。
コインの表と裏を説明して、親指に乗せた。

「では、行きます。表か裏か。」

キィんと音が鳴り、コインが宙に舞う。コインが落下して、仁美ちゃんの手の甲に乗って…その上から手で隠した。
一瞬の早技。これは見えない。

「さぁさぁ! 紗理奈ちゃん、表か裏どっちを選択する?」

仁美ちゃんがテンション高めに声を張った。

「ふむふむ、私は…表を選択するよ。」

紗理奈ちゃんが自信ありそうな素振りで言う。

それを受けて、仁美ちゃんが手の甲から手を離した。
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