手向け花を捧ぐーREー

井上凪沙

文字の大きさ
上 下
90 / 102
第90話

「今ここで灰にしてやる・・・!!」

しおりを挟む
あの人から、私は会社を辞めもう二度とジングと顔を合わせることがないまま
時だけが過ぎて行った。



何年か経って・・・私はジングに借りていたズボンを返すのを忘れていたから、返しにいったんだ。


ジングにはもう時すでにその時には子供ができていた。それが、シンア・・・キミのことなのだとすぐに分かった。






キキョウ「!」


「君のお母さんから聞いていたからね、名前を」


















見た目で言えばまだ5.6歳くらいのシンアだった。


「シンアー?」
玄関の扉を開けて庭で遊んでるシンアを呼びかける妻。

「これからお婆ちゃんが遊びに来るらしいからリビングにあるオモチャをお部屋に持っていって片付けておいてくれる??」

シンア「お婆ちゃん?」

「よくシンアが小さい時に遊びに来ていたお婆ちゃんよ。顔は覚えてるかな?」

シンア「うん、覚えてる。優しい人だった!いつ来る?」

「もうすぐ来ると思うわ」

シンア「わかったよ、片付けてくる!」

シンアは駆け足で家の中に入っていく。すると、奥の部屋からジングが出てきて盛大なあくびをする。

「あ、おーヒスイーおはようー」

「おはようじゃないでしょう?ほんと寝坊助なんですから。これからお婆ちゃん来るのですから早く着替えていらっしゃいよ」

「えーおはようのキスちょうだいよ?」

「まったくもう・・・」
そういってキスを落としてやる妻。玄関の扉は開けられていたため外から丸見えで、私にはすべて見えていた。



「で、お婆ちゃんいつ来るって?」

「さっき電話があったの。遊びに来ていいかって。だからそろそろ来る頃なんじゃないですか?」

「じゃ来るまで一緒に寝ようぜ」

「もう、馬鹿なこと言わないの」

そんな会話を繰り広げながら、玄関の扉は静かに閉じられた。

「・・・」

私はそれに怒りを覚え、ある行動に移ったんだ。













ーーー






「君のお母さんは本当に素敵な人だ。見ただけで分かる。別嬪さんで・・・だから、憎かった。ジングが・・・君のお父さんが。
あんな素敵な女性とお付き合いしていることが・・・・・・だから・・・・すべて、壊れてしまえばいいって思って、私は・・・」

キキョウ「・・・!」

キキョウは家が全焼した記憶を思い出した。










シンアが2階の部屋にオモチャを持ち運んだ時、なにやら家の焦げ臭さを感じた。


シンアが部屋を出ると、1階が火事になっていたのだ。


シンア「・・・っ」


お、かあ、さん・・・?おとうさん・・・?














キキョウは頭を抑える。

キキョウ「・・・まさか・・・お前、が・・・?」

「あぁ・・・いや清々したよ!!ジングを殺してやれてさ!
君の妻も、私を拒まずに受け入れさえすればジングと共に命まで落とさずにすんだものを・・・」

キキョウ「!!」

キキョウは自分の家の前に、二人の墓が建ったのを思い返す。


キキョウ「・・・・さ・・・・」

「ん?なんか言った?何も聞こえなかったが・・・」


キキョウは剣を取り出し、剣に炎を纏わせた。


「ひぃ・・・っ」

キキョウ「絶対に、生きては返さん・・!!貴様だけは・・・!!・・・今ここで灰にしてやる・・・!!
母と父の苦痛を、味わうがいい!」











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

決して戻らない記憶

菜花
ファンタジー
恋人だった二人が事故によって引き離され、その間に起こった出来事によって片方は愛情が消えうせてしまう。カクヨム様でも公開しています。

処理中です...