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第73話
「なにせ神と、その従者だもの」
しおりを挟むーこれは人形屋で起きた店主の過去のお話に遡る。
店主が一人で店で暇を持て余してたときだ。
突然ガチャと誰かが店内に入ってくる。
カトレア「ここが人形屋ってところかしら??」
「あ・・・い、いらっしゃいませ。き、客だなんて、珍しい、ですね」
その店内にカトレアとキキョウ、アザレア、ノウゼンカズラ、コチョウがやってきた。
そこで人形屋は驚いた顔でキキョウを見たがカトレアが声をかけたことで引き戻された。
カトレア「表の看板にdoll店と描いてある割に、そんな人形置いてないのね」
「い、いや、じつはこの店、まだ開店して10日経つんです。わたくし、人形を売る職業につきたくて・・・あまり客も来ないので、商売にはなかなかならないのですが、ね・・・」
そこでコチョウ達は店内を見て歩く。
カトレア「まぁそりゃ、目立たないものね。看板も見えにくかったし。でも、わらわは人形に興味があって今日は来たの。貴方、人形屋の職人にならない?」
「職人・・・ですか?」
カトレア「ええ。人形を作るの。わらわ達が人形を提供してあげる。そしたらあなたがその人形を綺麗に着飾る。それで売れれば万々歳よね?」
「は、はぁ。でも・・・人形なんてどこから集めてくるのです・・・?」
カトレア「任せておいて。明日には用意してくるわ」
ラン「カトレア様。地下に通じる扉を見つけたのですが」
ラン達は店の中を見て歩き、そして奥の方からランが顔を出す。
カトレア「地下?」
「ただの物置、ですよ」
そしてカトレア達もカーテンがされている奥の部屋へと向かう。
職人が鍵を使って地下の扉を開ける。
カトレア「すごい深いわね。ほこりくさいし。ここって貴方の家なのかしら?」
「い、家でもあり、店にしようかと思って・・・で、その地下は今は特に何も、使う予定もなく何も置いてありません・・・」
カトレア「・・・ふーん、そう。いいんじゃないかしら。地下があるのは」
「え・・・?」
カトレア「もっと儲かりたいのなら、これぐらいはできないとダメよね。そうね、明日の朝、また来るわ。人形を持ってね?」
カトレア達が出て行こうとするのを店主は呼び止める。
「あ・・・あの!貴方達は・・・」
カトレア「わらわはカトレア。あなたの商売を手伝ってあげる」
「な、なぜ、そこまで・・・」
カトレア「理由なんてないわ。強いて言うなら、神の気まぐれ、かしら?」
そう笑って、店を出ていく。
か、神・・・?カトレア、さん・・・。
人も今までだって来店したことないのに・・・儲かることなんか・・・できるはず、ない。
一体、なにか考えがあるというのか・・・?
ー次の日の朝。
時刻は7時を回ったところ。職人が棚などを拭いている時だった。
コンコン。外から窓をノックされる。見てみればカトレアが窓の外から手を振っていた。
まだ開店時間ではないので鍵はしまっているので、すぐに扉の鍵を開けると中へと招き入れる。
カトレア「おはよう。人形を持ってきたわ。可愛くて若い子の方がきっと売れがいいと思ってね。」
キキョウが黒い袋を抱えていた。
「?どういうこと、ですか?」
キキョウは床に黒い袋を投げ捨てると、その袋が広がって中が見えるようになる。
店主は中を覗いてみると、
「ひ・・・!!に、人間・・・!?」
思わぬ出来事に店主は腰を抜かす。
カトレア「人間だった、が正解ね。
今はれっきとした人形よ」
カトレアは店主に歩み寄る。
カトレア「人形だから、痛みを感じることもないわ。
この作戦で行けば、絶対儲かると思うの。
貴方はこちらの人形達をバラバラにして新しい手足と体をくっつける。
アンドロイドとしてお喋りしたり、動かすこともできるけどそれには心臓を人形の中に入れなければならない。
喋らない人形より、アンドロイドの方が売れが良いと考えてるけれど、
貴方には少し刺激が強すぎるわよね」
「な、なにを、言って、るんです・・・!?ば、バラバラって・・・」
カトレア「簡単よ。
こちらの人形の首以外はいらないから廃棄するの。
こちらで手足も体も、可愛い衣装も用意済みよ。
大丈夫よ職人さん。
あまり気は乗らないかもしれないけれど心配しないで。
この方法なら客もきっと訪れるし、儲かること間違い無しよ。
最初はわらわ達がみててあげるから、
早速地下で人形作成に取り掛かりましょ?」
「き・・・気は確かか・・・!?
そ、そんなことしたら・・・はん、犯罪・・・!」
カトレア「ばれることはないから。あんしんして?
わらわ達がついていれば大丈夫。
なんて言ったって今やこの世界の民から信頼されてる正義のヒーローだからね?」
「え・・・」
カトレア「あら。知らない?騎士学校の存在を」
「き、騎士・・・そんな騎士学校の人が、こ、こんな一般人に、な・・・なぜ・・・」
カトレア「別に死んではいないわ。
人形化というのは、なんも感じないの。感情も、痛みもない。空っぽの存在。そんな人形を貴方がバラバラにしたとしてもそれは死ではない。人間じゃなく、人形だから」
「そ、そんなことが・・・可能、なのです、か・・・」
カトレア「当然ね。なにせ神と、その従者だもの」
そう言って笑うカトレアに、
店主は冷や汗をだらだらと流していた...。
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