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第71話
「か、彼氏・・・?」
しおりを挟むリチアは一人寮の外に出て、マシュリ像を見上げる。
マシュリ様・・・。
ケイリィ「あっ、居た!リチア!」
リチア「!ケイ・・・」
ケイリィ「すこし、付き合ってほしいんだけどさ。とりあえず教室においてあるローブとってきて今から出かけようよ」
リチア「?」
そして二人はローブを着こなしてこの騎士学校を出る。
それから今はバスに揺られている二人。
リチア「あの・・・ケイ、どちらに?」
ケイリィ「まぁ、それは着いてからのお楽しみ」
ケイリィ達はバスを乗り継ぎし、目的の場所へと辿り着いたのが丁度12時を回った頃だった。
着れてこられた場所は一面の広い海だった。
ご家族だったり、人もたくさん居た。
リチア「・・・海・・・」
ケイリィ「リチアお腹すいたでしょ?そこの屋台で買ってくるからちょっと待っててよ」
リチア「あ、ちょ、ケイ・・・」
ケイリィは走っていってしまう。
また、私・・・ケイを傷付けるんじゃないかって・・・少し、怖い・・・だから、ケイはあまり、私の側に居ない方がいいのに・・・どうして・・・。
ケイだって、きっと怖かったはず・・・
それなのに・・・なんで・・・?
「お嬢ちゃん。今一人?」
話しかけてきたのは男2人と女1人組だった。
リチア「え」
「お兄さんたちと遊ばない?」
リチア「え。いえ、あの、私は・・・」
「一緒にビーチバレーしようよ!人数足りなくて困ってたんだー」
リチア「いえ、私はっ」
「決まりね!じゃあ早速向こう行ってしようぜ!」
リチアの腕を引っ張ろうとする。
は、話し聞いてくれません・・・!?何なんですかこの方達・・・!?
ケイリィ「リチア!?」
リチア「けっ、ケイ~~っ」
ケイリィ「あの、その子俺の連れなんです」
「ちぇ、なんだ、彼氏付きかよ」
「邪魔しちゃったわね。ごめんねー」
そう言って立ち去る人達。
「「か、彼氏・・・?」」
ケイリィとリチアは顔を見合わせるとお互いに顔を赤らめて顔を逸らす。
ケイリィ「や、焼きそば買ってきたんだ。一緒に食べよ?」
リチア「・・・はい」
そして2人はパラソルの下の空いているベンチに腰掛けて先にリチアの方が口を開いた。
リチア「・・・ケイ」
ケイリィ「うん?」
リチア「・・・お兄様、見つけました」
ケイリィ「お兄様って・・・ずっと行方不明だったんじゃ・・・」
リチア「ずっと近くにいたんです。それを教えてくれた、カトレア様に感謝しなくちゃ」
ケイリィ「でも、リチア物心ついた時にはもう居なかったんでしょ?顔とか声とか・・・分かるの?」
リチア「ラン先輩のことですよ?」
ケイリィ「へぇー、ラン先輩が・・・。
え!?」
リチア「私が気付けるはずもありませんでした。容姿も、写真に写ってる兄とは別人で・・・でもラン先輩が言ってたんです。私のこと、たった1人の妹だからって・・・」
ケイリィ「そう、だったんだ・・・」
それからしばしの沈黙が続き、
ケイリィ「リチア・・・あの、さ・・・」
リチア「ケイ。今日は海に連れてきてくれてありがとうございました」
ケイリィ「え・・・?あー。いや・・・」
リチア「でも、どうして急に海なんですか?」
ケイリィ「え。・・・はあ、リチアはやっぱり覚えてないか」
リチア「??」
ケイリィ「小学生の時、広い海を見てみたいって言ってたじゃん」
そう言ってリチアに小指を差し出す。
リチア「あ・・・」
リチアはそれを見て思い出す。
リチアとケイリィがまだ幼い頃、
家の前にて流れている川を眺めながらリチアはいつか広い海に行きたいなーと呟いたのを隣にいたケイリィが聞いていた。
それならと大きくなったら行ってみようよとケイリィが言う。
そして小指と小指を絡ませて約束をした。
そんな記憶を思い出したリチアは、差し出された小指を自分の小指と絡ませる。
2人は声を合わせて、「約束」と言って笑い合っていた。
ちゃんと笑えているリチアを見て、ケイリィは内心安心した...。
それからは焼きそばを食べて、海を思う存分堪能すると騎士学校へ帰ることにしたのだった。
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