手向け花を捧ぐーREー

井上凪沙

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第60話

「閉店、してますよ・・・?」

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ラン達は別件任務に向かう為、目的地まではバスに乗り継いで向かう。
リチアはローブを着てフードを深く被ってバスの座席に座っていればため息を一つ漏らす。
席が空いているにも関わらずラン達はリチアの側に立って黙って、何秒か起きにため息を吐くリチアにラン達はお互いに顔を見合わせていた。



目的の地に着てバスから降りしばらくは歩いて向かうことに。ずっとリチアの表情は暗く、ラン達から距離を置いて歩いているリチアは何度目かのため息を吐く。


それにいい加減うんざりしたノウゼンカズラがランに言った。


ノウゼンカズラ「・・・おいラン。あのガキどうにかしろ」

そう言われ、ランはリチアを振り返る。
リチアは顔を俯かせたまま、4人の歩くペースについて来れてない状態だった。

ラン「・・・学校から出てきてからのリチアさんあんな調子ですね」

ノウゼンカズラ「なんだってカトレア様はあんなガキを・・・。バスより飛んできた方が早かったんじゃねーか。あのガキの歩くペースに合わせてられっかよ」

ラン「リチアさんは空が苦手なようなので」

ノウゼンカズラ「やっぱ足手まといじゃねーか」



ランは歩くペースを落としてリチアの横へ並ぶ。

リチア「・・・」

ラン「リチアさん」

ランの呼びかけに肩をはねらせるリチア。

リチア「あ・・・・先輩・・・ごめんなさい・・・私なんかが先輩たちの任務に着いていくことになってしまって・・・邪魔でしかないです、よね・・・」

ラン「カトレア様がリチアさんも同行させるように仰ったのです。それを邪魔だなんて思いませんよ。
・・・先ほどからため息ばかりですが、なにかあったのですか?」

リチア「い、いえ・・・ごめんなさい。任務中に考え事は、よくない・・ですよね」

ラン「無理はよくないですよ。なにかあれば遠慮せず言ってくださいね」

リチア「・・・はい」





キキョウ「着いたぞ」


着いた場所はどうやらD'orr店のようだった。
人形屋への階段を上がっていき中を覗いてみるも明かりなどは点いていないようで、扉のところにはclosedー閉店
という看板がかけられていた。


リチア「閉店、してますよ・・・?」

ラン「いえ。ここが今回の任務先のようなので」

キキョウがその店のインターホンを鳴らすとビーッていう音が店の中に響く。
すると、中から人の影らしきものが動くのを見た。
そして鍵を開ける音がして中から人形屋の店主が姿を現した。


「おおお、騎士様。お待ちしておりました。・・・っと。そちらの女の子は・・・?」

キキョウ「騎士学校の生徒だ」

「おお、そうでしたか。 
さぁさぁとりあえず、ひとまず中へ」


そして中へと通される。




わぁ・・・人形が、たくさん・・・
って、あれ?このお人形・・・

リチアは人形を手に取る。


ラン達は奥の方へと移動する中、リチアは人形をまじまじ見つめる。

「可愛い人形だろう??」

リチア「ひゃ!?」

いきなり背後に立ち声をかけられたことにより驚いて店主に振り返れば思ったより顔が近くて後ろへと一歩下がるも、後ろは人形の棚があって棚に背をぶつける。


リチア「えと、は、はい、そうですね。ただこのお人形・・・カトレア様から貰ったお人形にそっくりで・・・」

「そりゃそうさ。カトレア様はここで買っていってくださったのだからね」

リチア「そう、なんですか・・・」
か、顔が近い・・・!


「キミもなかなか可愛い顔してますな。お肌もすべすべだし、まるで人形みたいだ」

店主はそう言って、リチアの頬に手を触れる。
それに対してリチアはどうしたらいいかと困っていればランからの助け舟が出た。


ラン「職人様。任務の詳細などを教えて貰えますか。でないと帰りますよ」
ランは扇子を手にしつつ、奥の部屋から顔を出して店主に向けて言えば店主はリチアから離れてラン達が向かったカーテンの奥の部屋へと姿を消した。


リチアはホッと胸を撫で下ろすと、ランはリチアに
「リチアさんは少しこちらで待っていてください」と言えばそれに返事を返してその辺の人形を見て回ることにした。









奥の部屋に移動した店主、ラン、ノウゼンカズラ、アザレア。







「まぁ、その任務の内容なんだが・・・君たちに私の護衛をしてもらいたいんだ。最近、誰かの視線を感じてまともに外を出歩くことすら怖くてな・・・今日人形を注文してくれた人に届けなくちゃならない日なのだ。歩いて20分くらいのとこのマンションなんだが、その間私の護衛を頼めんかね」

キキョウ「断るつもりであればこうしてわざわざここに足を運ばない。承知した」

「おお!助かる!報酬も出すぞ!」

ラン「リチアさんはどうしますか?」

キキョウ「護衛は我々だけで充分だろう。ここで待たせておけ」

ノウゼンカズラ「連れてきた意味はなんだったんだよ」

ラン「なにか訳でもあるのではないでしょうか?リチアさんはカトレア様とお話しがしたいとおっしゃっていたので」

ノウゼンカズラ「訳、ねぇ・・・」


「ささっ!そろそろ届けに行かなくちゃならない時間だ!騎士様参りましょうか」




奥の部屋から戻って来るとリチアは一番高い棚にある人形を取ろうと手を伸ばしていた。
だけどなかなか届かないリチアの代わりにランが取ってくれる。


ラン「これですか?」

リチア「せ、先輩!ありがとうございます!カトレア様から頂いたお人形さんもそうですが、ここのお人形さん達も皆目が綺麗なんですね!どうやって作ってるんだろう・・・」

「気になるかい?だけどこれは企業秘密なんだよ」

リチアはさっきのこともあってから、近づいて来る店主を見た途端サッとランの背中へ隠れた。


ラン「・・・職人様。そろそろ出発しないと遅れますよ」

「おおお!そうでしたな!すみません!」


リチア「?どこか行くんですか?」

ラン「はい。すぐ戻りますのでリチアさんはこちらで大人しく待てますね?」

リチア「あ、はい・・・」




ランはリチアの頭にポンと手を乗せる。
そして騎士4人と店主は店を出て行った。

Dorr店から出てきた騎士達と店主を陰に潜んで見ていたフードを被った女性。


あれは、人形職人さんと・・・
あのスーツ姿のあの人たちは誰かしら・・・?
どこか見たことあるようでないような・・・。




職人さんに電話をかけても繋がらなかったから、来てみたものの・・・どこへ向かったのかしら。




職人たちが遠ざかっていく背中をただ見送り、人形屋に近づけば明かりがついていたから窓越しから顔を覗かせた女性。

「!」

その中には人形を眺めているリチアの姿。



あの子・・・確か・・・。






女の口角が上がったことは誰も知らない。


















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