手向け花を捧ぐーREー

井上凪沙

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第55話

「何回だって家に逃げてきてもいいのよ」

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リチアは制服姿のままバスに乗って自分の家を目指した。

日が暮れるそんな時間帯に家に帰ってくるも、
なかなか入ることができずにいたがせっかくここまで来たのだから入らないわけにもいかなくてリチアは意を決して家の扉を開けた。




ガチャ...




「え。リチア??」

リチア「あ、た、ただいま」

「こんなに早く帰ってくるなんて思わなかったものだからご飯なんも用意してないわよ!?
お父さんは今日飲み会でご飯はいらないそうだし。私はもう食べてしまったし・・・まだ今から待てる?すぐご飯の用意するからね」
そう言ってキッチンへ走ろうとする母に、リチアはその背中に抱きついた。



リチア「ご飯は・・・いらないです。落ち着く、暖かい飲み物が、いいです・・・」

「・・いらない?大丈夫??」

リチア「・・・うん・・・」



お母さんの背・・・あったかい・・・。


リチアは今日の任務でのことを思い出す。自分を守って刺されたランのことであったり、たくさんの人を・・亡くした
り・・・









リチアはリビングでソファーに腰かけ、母はリチアの前のテーブルにホットココアを置くとリチアの隣に腰掛ける。


リチアは机に置かれたコップを持って、ホットココアを一口飲んでいたら、チャロもリチアが帰ってきて嬉しいのか、リチアの膝の上にやって来る。
リチアはそんなチャロを撫であげれば喉を鳴らしていた。

チャロ「にゃー」

リチアはコップをテーブルに置いてチャロを見る。

リチア「・・・あの時、貴方だけでも無事で、ほんとに良かった」



私がまだ小学生の頃、
バスに轢かれそうになっていたチャロをなんとか助けることはできたけどその後は私が轢かれ、そこで本来なら私の命は終わってるはず、だったんだけど・・・。


チャロはリチアの膝の上で丸くなり、それをただ見つめて撫でていれば母が口を開く。


「それで、突然今日帰ってくるなんて・・・任務でなんかあった??」

リチア「え」

「さっき、ニュースで流れてたわ。凱旋門近くで女の子が無差別に人を殺してそこで何人もの命が失われたって」

リチア「・・・」

「騎士団も出動したんでしょ?」

リチア「・・・はい」

リチアはチャロを撫でる手がかすかに震え、その手をとって優しく包み込んでくれる母。


「そう・・・。でも、リチアが帰ってきて嬉しかったよ。明日学校に戻るんでしょう??」

リチア「っはい・・・」

リチアは母に抱きつく。


リチア「お母様・・・私、頑張りますから・・・なにがあっても・・・。
辛くても、逃げない、から。・・・逃げるのは・・今日限りにします・・・・」

「リチア・・・」

リチア「今日の任務・・・もう、いろいろ、あって・・・辛いこと・・・忘れたくて・・・胸も、痛くて・・・」


リチアは今日の任務で子供を亡くした母が睨んでる顔が頭の中に鮮明にこびりついて、なかなか消えてくれなかった。


リチア「それで・・・家に帰ってきちゃったんですが、お母様の顔見て、安心しました・・・」

「何回だって家に逃げてきてもいいのよ。
辛いこと、悲しいことあったら、家に来たら思いきりさらけ出して、我慢しないで泣いたっていいんだから」



母のその言葉に、リチアは今実まで我慢していた涙が一気に溢れてきて、母の胸で思い切り泣いた。

母はただ黙ってそんなリチアを抱きしめ、チャロもリチアのことを心配そうに見上げていた。














リチアは部屋のベッドにて眠ると、母は1人リビングにて棚に置かれたオモチャを手に取る。
それはコチョウが母にそっくりだと言って買ってきたものだそうで。
そのオモチャを見る母。







そっか・・・リチアは騎士学校でちゃんと頑張ってるんだ。





・・・・・コチョウ・・・・。






母はコチョウがくれたオモチャを胸に抱きしめた・・・。









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